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今でもある!? ディーラー営業マンの飛び込み営業はもう古いのか

 近年は、めっきりと見なくなった自動車ディーラー営業マンの飛び込み営業。今から20~30年前は、突然車屋さんがやってきて、「買い替えどうですか」と、自宅の玄関先で営業活動をする姿を見ていたが、最近のディーラー営業マンが飛び込み営業をおこなうことは、ほとんどない。

 地域によっては「御用聞き」をして顧客との関係性を繋いだり、さまざまなスタイルがあるディーラーマンの営業スタイル。なぜここまで自動車営業のスタイルは、大きな変化をしてきたのだろうか。元自動車ディーラー営業マンの筆者が、平成初期から令和までの、自動車営業の変遷を伝えていく。

文/佐々木 亘、写真/AdobeStock(トップ画像=Paylessimages@AdobeStock)

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■契約が取れるまで帰ってくるな! 1990年代の自動車営業スタイル

1990年代の自動車営業は成果至上主義。「努力」ではなく「結果」がすべて。その頃の営業マンはエピソードには事欠かない(sunabesyou@AdobeStock)

 実力主義というか、契約至上主義の営業スタイルだった1990年代の自動車営業。筆者の諸先輩方から出てくる話は、今の営業マンには理解できない、奇想天外なモノばかりだった。

 「契約さえ取れていれば、昼間にパチンコしていても良かった」「朝礼が終わると車に乗せられ住宅街に降ろされる、夕方先輩が迎えに来るまでクルマで、ひたすら飛び込み営業をかけ続ける」「契約書が無ければ営業所には帰れない、深夜まで訪問を続けて、やっと1枚契約書をもらって帰ったこともあった」

 など、今ではパワハラ・モラハラなどで訴えられそうなことが、普通に起こっていた時代である。

 この時代の営業は、足と手数で勝負。飛び込み営業の腕が、自らの評価と給与を支えていたのだ。

■2000年頃からの大変革! 販売店全体で顧客満足度を上げろ!

2000年頃からディーラーの営業スタイルが見直され、チームプレーが重視されると共に、契約数や売り上げにくわえて顧客満足度を上げることが求められるようになった(Andrii Yalanskyi@AdobeStock)

 残業の長時間化や、休日出勤などが常態化し、自動車営業の労働環境がグレーからブラックに移り変わろうとした頃、全国各地の販社へ、労基署が監査に入った。ブラック企業という言葉が生まれた2000年頃の話である。

 この頃から、ディーラーの営業スタイルが見直された。営業マンの個人プレーではなく、お店ごとのチームプレーで、チーム全体の評価をしていくという方法に変わったのだ。さらに、評価には販売台数やサービス売り上げはもちろんだが、店舗管理顧客の満足度(いわゆるCS)を高めることが求められるようにもなった。

 自動車の保有台数も頭打ち感が出てきて、各社で既存の顧客を囲い込む動きが増え始めた時期でもある。顧客の満足度を高めるために、営業マン任せではなく、お店としての「おもてなし」を広げていく販社が増え始めた。同時に飛び込み営業や、営業マンの外訪件数は、徐々に減っていくようになる。

■ショールームでの営業が当たり前! 来店させて満足させる? 今のクルマ販売の姿

今は営業マンの主戦場はショールーム。新規のお客様を待ち、既存客には電話やメールで来店を促すこともできる。コロナ後は特に顧客と外で接触する機会は減っている(Studio Romantic@AdobeStock)

 今や、自動車営業マンは、ショールームで契約を取るのが当たり前だ。顧客の家や会社へ行かないと契約がもらえないという、外訪ありきの営業マンは必要とされない時代である。一部では、法人営業に特化した部署を作り、そこだけは外訪活動を認めているということもあるが、これは特例的な営業スタイルだ。

 飛び込み営業に関しては、現在ほとんど行われていないだろう。営業マンの基本は、ショールームでお客様を待っていることであり、既存客へ電話やメールでアプローチしながら、「来店」を促すことに尽きる。

 さらに昨今は新型コロナの影響で、顧客と外で接触する機会が大幅に制限された。コロナ前は、車両点検時の納車引取程度は許されていたが、現在ではこうした外訪活動も禁止とする店が多い。

 こうした動きは、大都市圏ほど顕著になり、政令指定都市のディーラーでは、営業マンが外訪営業をする姿をほとんど見なくなっている。それ以外の地域では、昔の名残がある場所も見るが、基本は顧客来店型が現在のスタンダードだ。

■ショールーム来店型の何が良い? これからの営業スタイルとは

来店してもらえば、見積もり作成や査定、そして試乗などが自由にできる。上司への相談やエンジニアの意見をきくこともすぐにできるのでお互いにとって効率的に事が進む(ocean_nikonos@AdobeStock)

 営業の効率という面では、ショールーム来店型に勝るものはない。

 来店してもらえば、見積もり作成や査定、そして試乗などが自由にできる。上司への相談もすぐに出来るし、エンジニアの意見が必要な時にも、その場で解決ができるだろう。営業活動の制約がなくなるため、「売り」の動きが効率的に行える。

 また、営業マンがお店に常駐していることで、購入相談以外の顧客にも、売りの活動が出来るのだ。点検で待つ30分から1時間の間に、興味のあるクルマに乗ってもらったり、査定をして乗り換えの時期を提案したりする。

 顧客も店舗に行けば営業マンと会えるし、試乗のお誘いなどは、担当営業に気にかけてもらえている感じがして、悪い気はしない。営業マンだけでなく、店舗スタッフ全員で顧客の名前を覚えて接遇することで、顧客満足度も飛躍的に高まる。

 限られた接触機会で何をするのかが、現代の営業では重要になっている。点検や商談のアポイントを取り、自らの城でどのようにもてなすのかを、綿密に計画するのだ。

 今後、オンライン商談などが導入されていき、顧客との直接の接触機会がさらに減ることが予想される。ディーラーは、ショールームでの「濃い時間」を過ごせるよう、さらなる営業スタイルの工夫をしていく必要があるだろう。

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