ディーゼルを搭載したプレミアムSUV対決: X3はQ5とステルヴィオに勝てるか? 4気筒ディーゼルエンジンを搭載したアッパーミッドレンジのSUVの三つ巴の戦い: 改良型BMW X3がアルファ ステルヴィオ、アウディQ5と比較テストで競い合う。
長距離を走ることが多く、なおかつ高い位置に座りたい人には、やはりディーゼルのSUVは欠かせない。「アルファロメオ ステルヴィオ」と「アウディQ5」という旧知の2台と、最近改良された「BMW X3」とをディーゼルモデルで比較してみた。航続距離の点でも、高トルクでありながら基本的に常識的なディーゼルエンジンには敵わない。例えば、BMWは無給油で970kmの走行が可能で、これはディーゼルエンジンのエステートカーにしかできないことだ。
X3フェイスリフトでリアビューを一新
フレッシュアップされた「BMW X3 xDrive20d」は、前回見たときよりもずっと新鮮だった。ブラケット型のライトを備えたフェイスリフト後のリアエンドは大きく変わっているだけでなく、48ボルトのスタータージェネレーターによるマイルドハイブリッド(フェイスリフト前のモデルでは変更の少し前に導入)により、より経済的であることも約束されている。
さらに、フルLEDヘッドライト(マトリクスLEDは有料)による光量の向上、高速ナビゲーション、スポーツシート、3ゾーンクライメートなどの標準装備に加え、ウィンドウリフト、クライメート、ドライブモードのコマンドも聞き取れるようになったものの、ややわかりにくくなったボイスコントロールも搭載されている。
車両データ&価格:
モデル | アルファロメオ ステルヴィオ2.2ディーゼルQ4 | アウディQ5 40 TDIクワトロ |
BMW X3 xDrive20d |
エンジン | 4気筒ターボディーゼル、フロント縦置き | 4気筒ターボディーゼル、フロント縦置き | 4気筒ターボディーゼル+Eモーター、フロント縦置き |
排気量 | 2,143cc | 1,968cc | 1,995cc |
最高出力 | 154PS@3500rpm | 150PS@3800rpm | 148PS@4000rpm |
最大トルク | 470Nm@1750rpm | 400Nm@1750rpm | 400Nm@1750rpm |
最高速度 | 215km/h | 222km/h | |
駆動方式 | 全輪駆動、8速AT | 全輪駆動、7速デュアルクラッチ | 全輪駆動、8速AT |
全長/全幅/全高 | 4687/1903/2163mm |
4682/1893/1662mm
|
4708/1891/1676mm |
ホイールベース | 2818mm | 2819mm | 2864mm |
平均燃費 | 15.1km/ℓ | 15.1km/ℓ | 15.8km/ℓ |
CO2排出量 | 172g/km | 174g/km | 167g/km |
トランク容量 | 525~1600リットル | 520~1520リットル | 550~1600リットル |
ベース価格 | 58,500ユーロ(約807万円) | 51,750ユーロ(約714万円) | 54,000ユーロ(約745万円) |
テスト車価格 | 62,500ユーロ(約862万円) |
61,205 ユーロ(約844万円) |
61,220ユーロ(約844万円) |
BMWも大幅な価格アップを正当化できるのか、気になるところだ。何しろ、「xDrive20d」のエントリーグレードの価格を4,700ユーロ(約63万円)もアップさせたのだから、並大抵のことではない。しかし、「X3」のスポーツシートに座り、12.3インチの大画面を見ると(もちろん別料金: パッケージで1,600ユーロ=約22万円)、特にどのテスト候補も6万ユーロ(約800万円)を下回らないので、まずこの追加料金に納得がいくだろう。当初はアルファのインフォテインメントに何度も迷い、タッチ操作に頼るアウディのシステムには運転中に気を取られたことに比べれば、BMWの操作性は模範的だと思う。
X3では、コントロールの選択肢も豊富
「X3」は、5つ以上の方法で操作することができる。回転プッシュボタン、タッチパッド、音声コントロール、タッチスクリーン、ジェスチャーコントロール。どんなドライバーでも、自分好みのものが見つかるはずだ。音声操作を試してみよう。「ハロー、BMW、NDRインフォを再生して!」、システムはこのコマンドを理解し、ほぼ間違いなく、放送局リストのすぐ隣にある「NDRブルー」を再生した。滑り込みセーフである。そして、エアコンシステムのコマンドも確実に認識した。
性能&テクニカルデータ:
モデル | アルファロメオ ステルヴィオ2.2ディーゼルQ4 | アウディQ5 40 TDIクワトロ |
BMW X3 xDrive20d |
0-50km/h加速 | 2.3秒 | 2.6秒 | 2.4秒 |
0-100km/h加速 | 7.5秒 | 8.0秒 | 7.7秒 |
0-130km/h加速 | 12.9秒 | 14.5秒 | 13.5秒 |
0-160km/h加速 | 20.8秒 | 24.4秒 | 23.3秒 |
60-100km/h加速 | 4.4秒 | 4.6秒 | 4.5秒 |
80-120km/h加速 | 5.7秒 | 6.3秒 | 6.2秒 |
乾燥重量 | 1842kg | 1893kg | 1915kg |
重量配分(前:後) | 51:49% | 55:45% | 49:51% |
100km/h時からの制動距離 | 34.7メートル | 33.6メートル | 34.3メートル |
BMWは競合車よりも大きく、重く感じられる。走ってみると、ステアリングが見直されたことがよくわかる。センター付近の旧セットアップのやや慌ただしくスポーティすぎる感じから、よりバランスのとれたスムーズなフィーリングに改良されている。その結果、BMWブランドの決まり文句から想像されるよりも、リラックスしたドライビングエクスペリエンスを実現することができた。
よりスポーティに、サスペンションのトラベルを長くしながらも、張りのあるベースノートを実現したのが、サスペンションだ。BMWの場合、競合車とは異なり、旋回時にフロントが3~4cmほど浮く。ややリアに偏った重量配分とグリップ力のあるミックスタイヤの効果らしい。これは実質的には本当の安全上の欠点とは言い難いのだが、ここではあえて言及しておいたほうがいいだろう。
快適性でQ5に勝るものはない
サスペンションとステアリングの章では、ややトップヘビーであるにもかかわらず、アウディがライバルたちよりも光っている。競合他車は、これほど正確にステアリングの動きに追従し、石畳から不快な甌穴まで、これほどまでに快適性を排除するものはない。とはいえ、BMWと同じようにパイロン横丁をスイスイと通り抜けることができる。
アウディのステアリングは、他の2台のモデルよりもデカップリングで間接的な感じがするが、気持ちよくリニアに反応する。しかし、残念ながら、トランスミッションはシャシーの機敏さにまったく追いついていない。デュアルクラッチが悪い仕事をするわけではないが、アルファやBMWのZF製8速オートマチックは別格だ。BMWのトランスミッション制御は、アルファよりも調和がとれているように思う。
トリオの中で最もダイナミックな存在であるアルファ
アルファは、このトリオの中では当然ながら個性派である。ステランティスのスポーツブランドは、今でも所有者の誇りを喚起する力を失ってはいない。エンジンカバーだけのデザインと、ブランドロゴを浮き彫りにしたヘッドレストのレザー、ベリッシモ!だ。「ステルヴィオ」の場合、その個性的な外観は、懸念されるほど欠点がない。全体として、「ステルヴィオ」はきちんと仕上げられているようで、前席のレザーシートは少し短いが、サポート力はあるようだ。テストの詳細は、以下、フォトギャラリーとともにどうぞ。
3台のディーゼルSUVをテスト
結論:
リニューアルの成功: リフレッシュされた「BMW X3」は、品質感、ハンドリング、走り、快適性でポイントを獲得しており、基本価格は大幅に上昇したものの、その価値は十分にあると言えるだろう。3台のディーゼルモデルの良さ: この重厚なSUVのそれぞれの燃費は、リッターあたり15~16km前後で、窮屈にならず、ストレスなく運転できる優秀さだ。
【ABJのコメント】
3台の中型SUVの比較テスト、今回の勝者は「BMW X3」であった。今回はディーゼルエンジンであることと、あえてスポーティな路線を狙ったであろう「アルファロメオ ステルヴィオ」と、ややスポーティよりの内容を持つ「Q5」との比較であったが、おそらく総合的なバランスとエンジンの良さ、そしてトランスミッションの優秀さで「X3」が優位に立ったということである。
「アルファロメオ ステルヴィオ」が最下位なのは一番スポーティなのにどうして?とは思うが、各部分の完成度とナビをはじめとするデジタルデバイスの旧さが減点対象になったと考えられる。
「アウディQ5」は僅差で「X3」に負けてしまっているが、これは価格と総合的な完成度の部分とが、「X3」よりも劣るということなのだろう。たしかに「Q5」は乗ってみるとクアトロシステムの精度感などは特筆すべきものがあるものの、オプション費用などを考えるとかなり高価である。そして整備費用などの面でも、アウディは意外と高価についてしまうことが多い。そんなことを総合的に評価しての結果なのではないだろうか。(KO)
Text: Rolf Klein and Mirko Menke
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de