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 本年、令和4年(2022年)の5月15日は、第二次世界大戦後アメリカによる統治下にあった沖縄が、本土に復帰して50年の節目の年である。本土復帰は昭和47年(1972年)のことであった

 東京、沖縄にそれぞれ式典会場が設けられ、沖縄の会場には岸田総理が出席したが、沖縄県内各地を視察した総理大臣の車列は沖縄県警ならではの、独特の運用を行っていた。今回はその詳細に迫ろう。

文・写真/有村拓真

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白バイを多用する警備スタイルが沖縄県警流だ!!

 総理大臣や天皇陛下など要人が車列を組んで移動する際、御料車や専用車の前後には警護車や警衛車と呼ばれる、SP(警察官)や側衛員らが乗車する覆面パトカーが周囲をガードしながら走行する。この際、白バイが車列に編成されるのは、基本的に天皇陛下などの一部のご皇族方の車列に限られる。

 また、総理大臣の車列にも白バイが編成されることはあるが、これは自国でのサミット開催など、一部の公式行事での運用に限られており、普段の都内移動や地方訪問時も白バイは基本的に付かない。

 しかし今回紹介する沖縄県警が警護を担当する総理大臣車列では、警護任務で10台以上の白バイが編成されており、他県とは一線を画す形態となっているのが興味深かった。

車列通過直前を走行する白バイ。不測の時代に備え、あちこちに目を配る。梅雨真っただ中の沖縄、当日は雨天だったが白バイが稼働した

 沖縄では総理が車列を組んで移動する際、ルート上の信号のある交差点には警察官を配置して信号操作を行い、円滑に目的地までノンストップで走行させている。そうなると安全に走行できるかと思いきや、別の問題が出てくる。信号機のない横断歩道や路地、駐車場などから出てくる歩行者や車などに気を配らないといけないのだ。

 車列が走行する20分ほど前から、警戒のために白バイが何台もルートを通過するが、白バイ独自の機動性を発揮して各所に目を配りながら走行。飛び出しの危険がありそうな場所では白バイが一般車に停車をお願いし、さらに後続の白バイに引き継いで円滑に総理車列を通過させていた。

車列を先導する白バイ。駐車場から出てきそうな一般車に対し、白バイが停車を促し、後方の警護車にバトンタッチしていた

 5月の沖縄は梅雨の真っ只中であり、他県なら降雨量によっては白バイの使用を控えてパトカーを使用することもあるが、天候も関係なく白バイの機動力を発揮していた。

白バイを多用するのはアメリカ統治時代の名残といわれる!?

 このように白バイを多用して要人の車列を円滑に走行させるのは、アメリカや諸外国などでは一般的に用いられている手法である。筆者が以前に取材したアメリカ大統領のニューヨーク訪問時では、20台以上の白バイが車列の直前を走行し、ルート上に支障がないか最終チェックを行いながら走行、歩行者など見物人が多い交差点では、他の警察官と一緒に道路上へ出ることのないように誘導を行うなどしていた。

以前ニューヨークでアメリカ大統領通過直前に撮影した白バイ軍団。日本以上に多数の白バイが警戒にあたっていたのが印象的だった

 特に沖縄は、アメリカ統治下でサンフランシスコ講和条約が発効した1952年に琉球政府が発足。それに伴い警察組織が新たに設置され、琉球警察が発足した。アメリカ軍などの払い下げのアメ車をパトカーとして使用しており、それと同時に白バイも多く活躍していたという。

 警察官としての技術取得は当時のアメリカ軍の憲兵隊(MP)などから技術習得したが、交通ルールも『ナナサンマル』(1978年7月30日をもって、それまでの右側通行を一晩にして左側通行に変えた一大事業)を代表するように、自動車の右側通行など、当時は本土と違うことも数多く存在した。現在でも要人が沖縄を訪問した際に白バイを多用するのはそのような当時の名残が現在でも生き残っているのかもしれない。

警護車から身を乗り出し、飛び出してくる車両などを制止! 体を張った警護活動は迫力満点!!

 要人が車列を組んで移動する際、走行中は不審車両や不審者の突入などを常に想定しているため、車列は要人の車両を護りながら陣形を変えて走行する。

 その中でも、なんといっても警護員が警護車から身を乗り出して他の車両などに対して規制を行う姿は迫力満点である。身を乗り出して警護するその手法は警視庁をはじめ、どの都道府県警察でも行っているが、特に沖縄県警はその度合いが多く、マイクを片手に一般車両や歩行者に丁寧な広報を行いながら、全方位を警戒しながら走行していた。

総理車列の先導を行う210系クラウン警護車。丁寧なマイク広報を行い規制の協力を呼び掛けていた。後方に見える、グリル部にブルーのランプが光る車両が「警護対象車」、すなわち総理大臣専用車だ

 大雨が降る中であっても、びしょ濡れになりながら任務を遂行している警護員らは、文字通り身を挺して警護活動にまい進していたのである。

 SPなど警護員が乗車する覆面パトカーは『警護車』と呼ばれており、警護任務中はシートベルトの着用が法律で除外規定されている。警護任務によっては白黒パトカーや機動隊の車両など乗車することもあるが、これらも同様の措置が取られている。シートベルト着用除外規定が設けられているのは、出発地点や目的地到着の際に要人が乗降車する際、警護員が素早く対応し周囲の安全確保を行うためであるが、一方で走行中も場合によっては飛び出して暴漢を押え込むなども想定しているのだ。

車列最後尾にはV36スカイライン警護車が。2007年秋から全国に導入が始まり、全国的には体液が進むが、沖縄ではまだまだ現役である。車列最後尾に位置し、規制解除と協力の謝意をアナウンスしながら通過していた

 警護車についてだが、要人が乗車する車両と車格を合わせることや、警護を行う観点から大排気量の高級車が選定され、全国には200系や210系クラウン、フーガ、レクサスLS460や600hなどが活躍している。また、SUV系も存在しており、スズキのエスクードやランドクルーザーも活躍している。車種によっては防弾架装されたものも存在するため、緊急時はそちらに要人を乗り換えさせて速やかにその場を離脱することも想定している。

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