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実際に乗ってわかった! 2021年度日本で一番売れたN-BOXが「マジで売れるこれだけの理由」

 ホンダの『N-BOX』は、2021年度(2021年4月~2022年3月)の新車販売台数が191,534台となり、登録車を含む新車販売台数が第1位となった。軽四輪車に限れば2015年から2021年の7年連続で新車販売台数1位を獲得している。また2021年5月末には累積販売台数が200万台突破と、不動の人気を誇る。

 しかし、N-BOXはなぜここまで販売台数を伸ばし、長期間人気を保てるのであろうか?

 特段価格が安いわけではないし、スタイルはシンプル、悪く言えば平凡、飽きがこないといえばまあプラス評価になる。では中身がそんなにいいのだろうか?

 そこで、数多くのクルマの試乗で評論してきた国沢光宏氏が、N-BOXに長期間乗ってみて、いろいろ「ヤバイ」理由を紹介する。

文/国沢光宏、写真/ホンダ

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■N-BOX1台あればすべて事足りてしまう!?

ホンダN-BOXは2021年度(2021年4月~2022年3月)の新車販売台数において1位を獲得した。軽四輪車に至っては2015年から7年連続で1位を獲得している

 N-BOXは軽自動車のベンチマークだと考えている。モデルチェンジしたり、マイナーチェンジを行ったりするごとにジックリ&長い距離を乗ってます。そしていつも「コレはヤバいヤツだ!」と思う。

 実際、このクルマ1台あればすべて満足できてしまう。直近のマイナーチェンジでアダプティブクルーズが停止まで制御してくれるようになり一段と充実した。改めてN-BOXを紹介したい。

 私だけかもしれないが、クルマ好きにとって一番の「恐怖」はクルマに興味を失ってしまうことだと考えている。クルマという素晴らしい趣味をなくせば、もはや世の中に楽しみなどありません(大ゲサ?)。

 クルマ趣味の王道といえば「ハンドル握ってない時でもアタマの中にあるクルマ」だと思う。休日が楽しみなクルマでもいいし、常に修理を考えているようなクルマでもいい。はたまた「買い物に行くんだけど、歩こうか、クルマで行こうか」と迷うような取り回しの悪いクルマなんかも面白いと思う。

■狭い日本に軽自動車はストレスフリー

 そういった「クルマ好きのスケール」でN-BOXを見ると、すべての点で「あかんな~」。あまりによくできているのだった。

 まず、取り回し性が徹底的にいい。どんなトコロに乗って行っても駐車時にストレスなし。小回り効いて、外寸ちっちゃいですから。

 全幅1900mmのボルボXC60だと駐車場所を決めるのに「ここでいいのか?」と考える。N-BOXだと1台分のスペース空いていれば、どこでも駐められるのだった。前後の余地が少ない縦列駐車のパーキングスペースだって気にならない。

 練馬区(特に西武新宿線)にありがちな狭い駅前までの送迎も平気。もっと言えば、クルマの中で待っていたって周囲に迷惑かけないです。

■同じ軽自動車でもひと味違うN-BOX

 ここまで読んで「軽自動車ならみんな同じでしょ!」と思うだろう。確かにボディサイズや取り回しは変わらない。けれどN-BOX以外の軽自動車って、なんか質感が落ちる傾向。「満足できない」と言い換えてもよかろう。

 タントやスペーシアに乗ると、「軽自動車ですね」になり、「これでいいや」とは思えないです。こう書くと「あんたは軽自動車をナメているのか?」と思うかもしれない。

 そら違います。むしろ軽自動車は好きだ。軽自動車歴を書くと、ビートにカプチーノ、ネスタSC、サンバーSC。そして現在もサンバーとスバル360を持っている。次に狙っているのはハイゼットデッキバンといった具合。これらのクルマは軽自動車としての魅力を持っているけれど、1台でやろうと思わない。セカンドカーとして考える。趣味のクルマ+軽自動車ということ。

■軽でありながら白ナンバーの乗用車と同等のクオリティと安全性

 N-BOXの場合、「これ1台でいいや」と思えるクルマの質感を持っているのだった。エンジンや足回り、インテリアの質感などすべてのクォリティが白ナンバーの乗用車と変わらない。なぜか? 

 ホンダ自身、軽自動車だからという理由で基準を変えていないからである。例えば安全性。今までの流れを見るとホンダ以外は「軽自動車だからコストと重量とバランスを取る」という選択をしてます(※註:公的な安全性を試験するJNCAPの歴代データを見れば明確にわかります)

 軽自動車は白ナンバーの登録車より使われる場所が狭く、平均速度だって低い。統計を見ていると「軽自動車だから事故死者が多い」みたいなデータなし。総合的に評価したら、軽自動車についていえば、安全性は衝突基準をクリアすればコストや軽さを優先するという考え方は正しいのかもしれないが、私は100%納得できない。ホンダも同じように考えているらしく、「命の大切さは同じです」。

■昨年末の一部改良でACCに渋滞追従機能搭載

2021年12月の一部改良でオートブレーキホールド付き電子制御パーキングブレーキを全車に標準装備した。これに合わせ、N-BOXのホンダセンシングのACCには渋滞追従機能が追加された

 設計時点で軽自動車と登録車の基準を分けるという考え方をしていない。こういったクルマ作りがすべての点に出てくるんだと思う。N-BOXのハンドルを握っていると軽自動車に乗っていることを忘れ、小さい普通のクルマに乗っている感覚。だからN-BOXに乗ってると「これ1台でいいかな」となり、クルマ好き的にマズいということになる乗り心地だって白ナンバーと変わらず。

 ただ、今までN-BOXは電動パーキングブレーキを採用していなかった。N-WGNやN-ONEが先行して採用していたのに、コストの関係なのかワイヤー式のパーキングブレーキだったまま。従ってアダプティブクルーズコントロールは車速30km/hくらいになると勝手にリセットされるという、ひと世代前のクルマと同じで使い勝手が悪かった。この一点でN-BOXを薦められず。

 で、今回の改良でやっと電動パーキングになり、アダプティブクルコンで停止まで制御してくれるように進化。高速道路の渋滞で使ってみたら、やっぱり「コレがなくちゃ!」。今やN-BOXの弱点はなくなった。400kmくらい試乗してみたが、恐ろしいことに「これ1台でいいかな?」。

■こんなにバランスのいいクルマってほかにありますか?

 そもそも考えてみて欲しい。乗り心地はいい、狭い日本の道路や駐車場でストレス感じないほど取り回しいい。

 燃費はまったく気にしないで乗って15km/L以上走る。流れのいい道なら20km/L近いほど。高速道路の100km/L巡航は、横風に敏感なのを除けば快適。大人4人が余裕で乗れ、大きな荷物だって運べちゃう。

 文字どおりN-BOXがあれば、ほかにクルマ不要。それでいて200万円で買えて、5~7年乗った後のリセールバリューは驚くほど高い。こんなバランスのいいクルマってほかにありません!

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