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納期は短い!! でもエンジンは平気!? 試乗車落ち中古車の実際

 ディーラーの試乗車や社用車は、一定期間使用されると、中古車として販売される。一般的な中古車よりも走行距離が短い個体が多く、上級グレードで装備が充実しているのが特徴だ。

 ただし、いざ購入するとなると「試乗中に急加速や急減速をしている」といった使用状況に関する不安や、「いろいろな人が乗っているから、機械的なトラブルが早く起きやすいのではないか」という試乗車特有の懸念材料も見えてくるだろう。

 新車の納期が長くなり、中古車に対するニーズが高まる昨今、試乗車落ちの中古車を購入検討する機会も増えている。そこで、本稿では試乗車購入時に注意するべきポイントや、積極的に選ぶべきユーザー像など、試乗車落ち中古車のアレコレを考えていく。

文/佐々木 亘、写真/AdobeStock(トップ写真=tong2530@AdobeStock)

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■試乗車落ち中古車は本当にお得な選択なのか

目玉商品扱いになっていることが多い試乗車落ち中古車。新車の納期が軒並み長くなっている今、短い納期の試乗車落ち中古車は魅力だ(Seventyfour@AdobeStock)

 新車ディーラーに併設されている中古車展示場を見ていると、時々出会うのが試乗車落ち中古車だ。プライスカードなどに試乗車であったことが明記され、目玉商品として扱われている。

 中古車展示場に移動せず、試乗車の使用と販売を同時並行して行っているケースも多い。ショールームの商談テーブルや壁面に、販売できる試乗車を一覧にして掲示しているお店も、よく見かけるものだ。

 では、試乗車落ちの中古車は、価格の面でお得なのだろうか。

 新規登録からおよそ半年が経過すると、売りに出されることが多くなる試乗車。購入に際して必要な諸経費は、新車よりも試乗車落ち中古車の方が、自動車重量税の分だけ少なくなる。

 追加で必要となるのは、保証継承費用だ。そしてクルマを手放す際には複数オーナー車となるため、下取り査定が5~10万円ほど落ちるだろう。車検残が新車と比べると少ないため、保有期間内の車検費用もかさむ。

 走行距離や状態にもよるが、装着オプション込みの新車価格より、50万円以上安くないと、お買い得なクルマとは言えなくなってくる。それでも、新車の納期が半年から1年というのが当たり前になっている現状では、約1か月弱で手元に届く試乗車落ち中古車が、魅力的に映るのではないだろうか。

■トラブルは多い? 少ない? 試乗車落ち中古車の納車後レポート

ブレーキパッドやタイヤの摩耗は必ず確認。ほかに内外装や前後シートなども調べたい。あらかじめチェック項目を用意しておくのもいいだろう(takasu@AdobeStock)

 様々なオーナーに試乗されたクルマは、目立ったトラブルが発生することは多いのか、考えていこう。

 現在、世界の名だたる自動車メーカーで製造されるクルマたちは、数千キロ程度を手荒く運転されたところで、致命的なダメージを受けることは、ほとんどないだろう。

 試乗車はディーラーで管理されている車両だから、定期点検も欠かさず行い、そのタイミングも適正だ。エンジンやミッション、サスペンション等については、長期的に考えても「試乗車だから」というトラブルの心配はいらない。

 営業マン時代、試乗車の販売も数多く行ってきた筆者の感覚では、試乗車落ちのクルマを販売した後のトラブルとして多いのが「ブレーキ(パッド)」と「タイヤ」関係だ。

 急加速や急減速、そしてステアリングの据え切りが多く行われている可能性がある試乗車では、ブレーキパッドの減り(ローターの摩耗)と、タイヤ溝の減りが早い。

 試乗車として使われていたのが長期間になれば、タイヤの偏摩耗などが起こりやすくなるので、購入時には入念に確認したいところ。直近の点検記録簿でブレーキパッドの厚さやタイヤの残り溝を確認し、さらに目視で消耗品の状態はおさえておきたい。

 また、販社内の中古車センターを通さず、店舗独自で商品化することが多いのが試乗車だ。商品チェック(検品)が十分でない可能性は大いにある。

 基本は現状渡し(必要な整備はするが)となる試乗車落ち中古車では、トラブルを避けるためにも、購入前の消耗品チェックと、内外装(特にシート)の状態チェックは必須だろう。

■ちっちゃいことは気にするな! 試乗車落ちで得するのはこんな人

購入前のチェックは大切だが、試乗車落ちとはいえ中古は中古。あまり細かいことを気にせず乗れる人のほうが向いている(rh2010@AdobeStock)

 割高なものも多く、状態チェックも十分ではない可能性がある試乗車落ちの中古車。筆者も一度購入したことがあるが、納車後から発生したダッシュボード奥からの異音に、半年ほど悩まされた。

 個体の当たりはずれがあるのは、新車も同様だが、特に試乗車落ち中古車の場合は、細かなことを気にしないという、ある種の大らかさが必要となるだろう。

 例えば、営業車として乗り倒すとか、運転に自信がないから新車よりも気が楽とか、試乗車独特の弱点を気にしない人には向いている選択肢だと思う。

 逆に、「新車のちょっと古いやつ」程度に期待してしまうと、その期待には応えられないことの方が多いだろう。元試乗車とはいえ、中古車であることに変わりはない。

 良い状態のクルマ(高年式で走行距離の短い状態)を購入できる試乗車落ちの中古車だが、新車の代替品になるという考え方はしないほうが良いと思う。あくまでも、中古車の中では状態のいい部類に入るということだ。

 それでも、しばらくの間、手元に来ない新車よりも、即納の試乗車に大きな魅力を感じる時代となった。向き不向きはあるが、今ならば「買い」のクルマの一つとして、おすすめしたい。

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