三井化学は上海化学工業園区(SCIP)で、中国石化(SINOPEC)との合弁2社を通じ、樹脂原料フェノールやオレフィン系共重合ゴムの工場を運営。都市封鎖下、感染防止のため従業員が工場敷地内に泊まり込み、外部と接触を避けながら生産活動を続けている。しかし厳格な移動規制などで、封鎖開始から3週間以上が経過する現在も人員交代できず、メール取材に応じたグループ中国統括会社・三井化学(中国)管理の樫森雅史董事長兼総経理は「社員の疲労が限界に近い」と危機感をあらわにする。
■交代ままならず
現地では、上海中石化三井化工(SSMC)がフェノール(アセトン併産)からポリカーボネート原料ビスフェノールAを一貫生産し、上海中石化三井弾性体(SSME)が自動車部品などに使うエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴムの生産を手がける。いずれも稼働率を若干調整しつつ、安定稼働を続けている。
両社では3月末の都市封鎖開始以降、一部関係会社の社員も含めて工場に泊まり込むクローズドループ勤務が続く。「泊まり込み社員の帰宅めどが立たず、疲弊感が限界に達しつつある」(樫森董事長)ため、早急な交代のための支援を政府機関に要請中だ。
原料調達に関しては、コンビナート内でパイプライン供給を受ける部分に影響はないものの「コンビナート外から、また輸入調達する原料を使う場合、通関業務の遅延や陸路輸送の規制などの影響を受けている」。
合弁相手の中国石化からは通行証の発行申請や原料調達、販売先ルートの確保などで柔軟な協力を得る一方、当局の物流面の支援は現状、通行証の発行以外はとくにないという。
上海近隣の省・都市では感染拡大を懸念した地元政府が移動規制や検査を強化するケースも少なくない。国内の製品需給も「物流制限や顧客企業の生産調整の影響で、需要が一定量減少している」。
■物流混乱に拍車
現地ではトラック手配も極めて難しい状況。「運転手へのPCR検査などが強化され、対応可能な運送会社、物流会社が減っている」ためだ。製品により状況は異なるものの、輸送に当たっては通行証をその都度申請する必要があり、供給先の地域が敷く規制もあって調整に時間を要しているという。
樫森董事長は「物流と生産を支える関係要員の移動・交代だけでも回復させるべき。政策意図を超えた地方政府の過剰対応も見られ、混乱に拍車がかかっている」とし、「政府の指示がより明確化されることを望む」と訴える。
上海市当局によると、今週に入り市内の新規感染者数は減少傾向にある。市が16日、製造業の生産継続・再開条件として発表した防疫指針には、クローズドループ勤務計画を立案し、市と工場が立地する地区から認証を得ることなどが挙げられている。
SSMCとSSMEの三井化学現法2社は、早い段階から感染防止対策の実行計画を作成、稼働を継続してきたが、統括会社の樫森董事長は「新たな防疫指針に従い、計画の一部を改定する予定。現時点(先週半ば)でSCIPから提出要請はないが、いずれ認証を取得する必要があると考える」とする。
長期間にわたる封鎖は、在宅勤務を強いられる社員の業務効率低下、外貨建てを中心とする支払い業務の停滞など、経営の幅広い面に影響を及ぼしているという。
感染者減少を受け、規制が緩和される居住区もあるが、生産現場は綱渡りの状況が続く。感染抑制と安全生産の継続に、均衡の取れた規制運用が望まれる。(中村幸岳)
新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)
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