大手旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)の株価が21日、2366円(前日比146円高)の年初来高値をつけた。同社は13日、5月1日出発分から、ハワイツアーを約2年ぶりに再開することを発表している。この日の同社株の値動きは、ハワイツアーや国内旅行を含めたゴールデンウィークでの旅行需要の高まりに、マーケットの期待が強まった結果と見られる。
軒並み株価値上がりの旅行会社
株価が値上がりしたのは、エイチ・アイ・エスだけではない。近鉄グループの旅行会社KNT-CTホールディングス、航空券の予約・販売サイト「skyticket(スカイチケット)」を運営するアドベンチャー、総合旅行代理店の旅工房といった企業が前日比4~6%ほど値上がりしている。
大手旅行会社JTBの最新の「旅行動向見通し」によると、今年のゴールデンウィークの国内旅行者数は1,600万人で、前年比168.4%という結果だった。平均費用は前年比6.8%増の3万4500円、総額で5520億円と推計している。すべての地域で、域内旅行の割合は減り、遠方への旅行が増えているという。また、利用交通機関は自家用車・レンタカーが減少し、新幹線と飛行機が増加。同行者は家族中心から、友人・知人に変化しているという。
旅行会社社員「GWは大盛況」
旅行需要の急速な回復は、現場レベルでも確実に感じられていることのようだ。「ゴールデンウィーク(GW)は大盛況です」と語るのは、東京都内の中堅旅行代理店に勤務する30代女性だ。
「今年に入ってから予約は順調で、特に、ゴールデンウィークは大盛況です。オミクロン株の流行で、一時はどうなるかと冷や冷やしましたが、感染者が増えるたびに予約取り消しが増えるという以前の状況とは明らかに違いますね。新型コロナの感染者自体は大して減っていないようですが、予約の取り消しはほとんど見られません。」
ボーナスはこの2年間まともに出ていないのだというが、今年の夏は期待できるかもしれないと声を弾ませる。
「新型コロナのせいで給料も減りましたし、ボーナスもカットされました。辞めてしまう同僚も多く、私もいつ辞めようかと思っていましたが、これでやっと一息つけそうですね。今年の夏は、何回かぶりにきちんとしたボーナスが出るかもしれません」
かつての日常を取り戻せるか
雇用調整助成金など、政府の新型コロナウイルス関連の支援策によって、2021年の倒産件数はバブル期を下回る水準だった。その一方で、旅行会社の倒産件数は7年ぶりに30件を超すなど、旅行業界は新型コロナウイルスの影響を最も受けた業界の一つだ。
JTBが2021年と2022年の消費者動向を調査したところ、「旅行支出を増やしたい」という人は増加し、「旅行支出を減らしたい」は減少傾向にある。コロナ禍前からの構造不況の中、原油高や物価高に見舞われているにも関わらず、旅行需要は高まっているのだ。
すっかり普段の生活を取り戻したように見える欧米と比べると、日本はまだまだかつての生活を取り戻せていない。旅行需要の高まりは、日本でもようやく、かつての日常を取り戻す動きが出てきたということの証左なのだろうか。