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 ダイムラートラックは商用車の開発では世界をリードするグループで、2018年発表のメルセデス・ベンツ「アクトロス」新型車は、世界初のSAEレベル2自動運転機能を搭載する量産型大型トラックとなった。

 ダイムラーは3年前に米国のテクノロジー企業、トルク・ロボティクスを買収し、SAEレベル4の完全自動運転に向けた開発と実験を続けているが、この度、トルクとダイムラー、そして物流企業などからなる「自動運転アドバイザリー協議会」の設立が発表された。

 実際の物流現場に即した自動運転技術の開発に加えて、実験範囲を高速道路の外にまで拡大した。貨物輸送のファースト/ラスト・マイルのみを人間が担い、それ以外を自動運転が担うというシナリオを想定する。

 ダイムラートラックは「事故のないドライビング」というビジョンの実現に向けて、レベル4自動運転トラックを10年以内に商用化することを目指している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Daimler Truck & Torc Robotics


自動運転トラックを10年以内に商用化へ

 ダイムラーAG(旧ダイムラーグループ)は、2021年に乗用車のメルセデス・ベンツ・グループと、商用車のダイムラー・トラックに分離したが、依然として商用車では世界をリードするグループだ。

 その子会社である北米のダイムラー・トラックス・ノース・アメリカ(DTNA)は米国のテクノロジー企業、トルク・ロボティクス(Torc Robotics)を傘下に持ち、冗長安全性を備えた自動運転トラックを開発している。

 大手トラックメーカーの中では、SAEレベル4(L4)の「特定条件下での完全自動運転」=無人運転トラックにもっとも近いメーカーといえる。自動運転システムを開発するトルク社とのパートナーシップのもと、北米大陸では公道を使った試験を日々(安全に)行なっている。

 解発の次のステップとして、トルクは北米の大手物流企業と提携し、実際の物流現場で自動運転トラックを活用しようと考えている。

 この目的のために「トルク自動運転アドバイザリー協議会」(TAAC / Torc Autonomous Advisory Council)が設立された。協議会にはDTNAの他に、物流、リース(トラックレンタル)、3PLプロバイダーなど、トラック運送に関連する有名企業が名を連ねる。

無人運転トラックを10年以内に商用化! ダイムラーが自動運転技術の開発を加速
フレイトライナー「カスケイディア」をベースにトルクが開発する自動運転トラックとTAACのロゴ

 貨物ネットワークを統合し、高速道路での自動運転を超えた挑戦を行なう際に、メンバー企業はトルクに戦略的な提言を行なう。自動運転は、顧客企業との「共創」を通じてビジネスモデルを共に作って行くという、新たなステージに入る。

 ダイムラートラックとトルクは、そうした自動運転トラックを実現し、10年以内に商用化することができると固く信じている。

L4=無人運転の長距離トラック

 ダイムラートラックがトルクの大部分の株式を取得したのは3年前だ。当時は「アイデア」に過ぎなかった自動運転トラックが、今では現実のものとなりつつある。

 典型的な運転シナリオ、例えば車線変更や複雑な合流などに関しては集中的に試験を行ない、トルクの自動運転ソフトウェアが高速道路で安全に車両をナビゲートできることを証明した。

 最近では範囲を拡大し、L4自動運転トラックをより困難なシナリオに適合させようとしている。最新のLiDARとレーダー、及びカメラを使って一般道での高度な制御が可能になり、高速道路と接続するランプや信号機のある交差点も走行することができるようになった。

 こうした能力は、ハブ(拠点)間輸送を想定した実践的な配備では不可欠だ。この場合、人間のドライバーが最初の「ファーストマイル」の貨物輸送を担い、(米国内の)主な道路沿いにある物流拠点まで荷物を運ぶ。

 その先はトレーラとL4自動運転トラックを連結し、途中で高速道路を利用しつつ拠点から拠点までを移動する。自動運転トラックが目的の物流拠点に着いたら、配達先までの「ラストマイル」輸送は再び人間のドライバーに委ねられる。

 米国の高速道路網は長大で比較的空いており、貨物輸送の需要が多く、大規模な物流企業があり、規制当局も協力的なことなどから、新技術を導入するには米国はうってつけの実験場となっている。

 自動運転技術の強化について、ダイムラートラック会長のマーティン・ダウム氏は次のように話している。

 「私たちは自動運転トラックにコミットしています。なぜならそれは、すべての人に利益をもたらすからです。システムは疲れることがなく、集中力が切れることもないので、安全性が向上します。

 トラックがより多く走ることで物流のパフォーマンスも大幅に向上します。これにより、(アメリカや日本など先進国で共通の課題となっている)増大する貨物量と深刻化するトラックドライバーの人手不足という社会問題の解決にもつながるでしょう。

 また、ダイムラートラックにとってはサービスの売り上げを伸ばし、マーケットで成長する機会をもたらします。あらゆる理由から私たちはレベル4自動運転のトラックを開発します」。

 いっぽう、トルクの創業者でCEOのマイケル・フレミング氏のコメントは次の通りだ。

 「自動運転ソリューションを商用化するというトルクの経験と、ダイムラートラックの運送業界における顧客との強固な関係により、長距離トラック用のレベル4自動運転技術開発チームはエネルギーに満ち溢れています。

 運送業界のパートナーとの協業を通じて、コンセプトや組織を共同で設計することに加えて、クラス8自動運転トラック、物流拠点間での自動運行、フリートのオペレーションやメンテナンスサービスに関する研究開発など、多くの機会が生まれています」

自動運転に向けてフレイトライナー「カスケイディア」を開発

 この数年間、DTNAのエンジニアは、商用車の自動運転において何よりも重要な「安全性」に関するシステムを備えた、最初のスケーラブルな自動運転トラックプラットフォームを開発してきた。

 DTNAに属し長距離輸送用トラックで北米最大手のトラックメーカー・フレイトライナーは、最先端のクラス8(大型)フラッグシップトラックであるカスケイディアで、自動運転への準備と、実際の配備に向けた冗長安全性を用意している。

 このトラックはダイムラートラックの妥協を許さない安全基準をクリアするために、ステアリングやブレーキなどの重要システムを2セット備える。車両はシステムの健全性を常にモニターし、割り込み操作やエラーが起きた際は、新開発の冗長化システムが安全にトラックをコントロールする。

 レベル4自動運転の準備が完了したフレイトライナー・カスケイディアは、自動運転ソフトウェアとハードウェア、コンピューティングを統合するのに理想的なトラックだ。自社のシステムだけでなく、あらゆる自動運転ソリューションにとって強固な基盤となる。

 システムの冗長化により安全性はさらに強化される。自動運転技術は、ダイムラートラックがビジョンに掲げる「事故のないドライビング」に向けた大きな一歩となりそうだ。

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