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 2022年5月13日に、レクサスのコンパクトSUV「UX」が改良を受けた。トヨタの公式サイト、「トヨタグローバルニュース」では「新型UXを世界初公開」と銘打っている。

 事実上のマイナーチェンジになると思うが、それでも「新型」と大きく発表する理由はどこにあるのだろうか。今夏に発売される新型UXの進化のポイントと、昨年登場し大人気となっている兄貴分「NX」との違いについて、考えていこう。

文/佐々木 亘
写真/トヨタ/レクサス ※画像はプロトタイプのものとなります

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■ハッキリとした役割分担

2022年5月13日、レクサスはコンパクトSUV「UX」を世界初公開した
マイナーチェンジにも関わらず今回のUXを「新型」と謳ったレクサス。その理由を探っていく

 2018年に、レクサスSUVの最小サイズとして登場したUX。2022年3月末時点で、80以上の国と地域へデリバリーされ、累計24万台を販売している。

 チーフエンジニアに加古 慈氏を起用し、欧州目線、そして女性目線が行き届いているのが特徴だ。

 近年発表されてきた、IS、NX、LX、そしてRZを見ていると、レクサスのクルマ作りが大きく変わってきたことがよくわかる。

 国内開業当初は「レクサス」というブランドを普及させるため、それぞれの車種の役割が幅広く設定されていたように筆者は感じていた。

 しかし、直近3年間で登場してきたモデルは、明確な「狙い」があり、それぞれの車種に対する想定ユーザー層もしっかりと絞り込まれている。この流れを生み出したのは、UXの存在だと思うのだ。

 UXは、比較的コンパクトなボディサイズで、ユーザーコンセプトがハッキリしていた。

 だからこそ、小柄な女性でもしっかりと四方を見渡しやすいドライビングポジションを作り、インパネのボタン配置や大きさにこだわっている。

 また、アウタードアハンドル内側の掘りを深くし、ドアハンドルを握った際に爪がボディに当たるのを避けるといった、細部へのこだわりも強く感じるモデルへと仕上がった。

 新型UXでは、こうしたポイントをどう生かしながら、進化を遂げていったのか、確認していきたい。

■装備の進化は最先端モデルを感じられるものに

フロントマスクには大きな変更点なし。ヘッドランプユニットの内側がブラックになり、バンパーサイドのデザインが変更された

 まずはエクステリアデザインだが、新型になってフェイスリフトが施されたものの、目立った箇所の変更はないように見える。

 主な変更点は、ヘッドランプユニットの内側がブラックになったところと、バンパーのサイドデザインが多少変更された程度だろう。

 対して内面の進化は非常に大きい。

外見とは打って変わって内面の進化は多い。NXから採用されているタッチ式12.3インチのタッチディスプレイをUXでも採用
現行型ではアームレストについたリモートタッチを採用していたが、タッチディスプレイになったことで直感的な操作が可能となった

 インテリアでは、NXから採用されているタッチパネル式の12.3インチ(8.0インチ)のタッチディスプレイを採用する。

 現行型ではアームレストにリモートタッチを採用していたが、タッチディスプレイになったことで、より直感的にマルチメディアシステムを操作することができる。

 レクサスセーフティシステム+では、レーントレーシングアシストの制御範囲を拡大。車線認識にAI技術を活用し、支援範囲を拡大するとともに、スムーズで途切れにくい操舵支援を実現した。

 また、レーダークルーズコントロールには、カーブの大きさに合わせてあらかじめ減速する、カーブ速度抑制機能を追加している。

 先進装備の面では、デジタルキーの採用が大きい。ドアのロック・アンロックからエンジン始動までをスマートフォンで行える。

 ただし、NXやノア&ヴォクシーに採用されている機能では、要改善と言いたくなるポイントも目立った。レクサスのおもてなしを、さらに大きく感じられる機能に仕上がっているのか、注目したい。

スマートフォンで鍵の開錠やエンジン始動もできる「デジタルキー」を採用。NXやノア&ヴォクシーでイマイチだったポイントがどれだけ改善されているか注目だ

■追求された走りの深化

走りの質を向上させるためサイドドアとバックドア周辺の開口部にスポット溶接を20か所追加

 走りの面に関しては、「Always On」の思想の元、年次改良で地道な質の向上を行ってきたわけだが、今回の変更は年次改良を大きく超えたインパクトのあるものになった。

 サイドドア、バックドア周辺の開口部ではスポット溶接を20か所追加。電動パワステとダンパーは再チューニングを施している。テスト走行の舞台は、下山テクニカルセンターだ。

 F SPORTではステアリングギアにブレースを追加し、標準モデルよりもさらに操舵応答性を高めた。

 パフォーマンスダンパーやAVSもリセッティングしているというから、今回の改良に対する気合の入り方が尋常ではないことが分かるだろう。

パフォーマンスダンパーやAVSもリセッティング。今回のマイナーチェンジに対する気合の入り方は尋常ではない

 レクサスのこだわりである静粛性は、より高みへと到達している。18インチのランフラットタイヤが新開発され、HEVで気になるロードノイズをさらに低減させたようだ。

 レクサスは、各車の改良について、モデルサイクルなどにはとらわれず、適宜必要な時に、必要な部分を改良・変更していくスタイルをとるようだ。

 UXは、既に登場から3年半が経過し、フルモデルチェンジが行われてもいい時分でもあるが、フルモデルチェンジ・マイナーチェンジ・一部改良といった概念にとらわれず、Always Onで進化していくのが、レクサスの考え方である。

 適時の改良により、特別仕様車やUX300eを登場させてきたUXだが、今回あえて「新型」と銘打ったのは、その本気度合いを知ってもらいたいという表れか。

 デザインもプラットフォームも大変革しないため、見た目は一部改良に近いが、クルマの内容は十分すぎるほどアップデートされ、磨き上げられた。

 レクサス流の新しいモデルチェンジのカタチがUXにより示されたのだろう。進化と深化の度合いは、現車でもしっかりと確認して行きたい。

 今回発表されたのはガソリンエンジンのUX200と、HEVのUX250hに対する情報だけだ。UXシリーズには、BEVのUX300eが残っているが、こちらは別途、改良が発表されるだろう。

 ただ、レクサスのモデル一覧では、UXとUX300eは別モデルとして切り離されている。改善される方向性は同じだと思うが、ガソリンエンジン搭載車とBEVでは、走りや音に対する改良のアプローチが変わってくるはずだ。

 UX300eの改良については、今後の発表を長い目で待つべきだと思う。

■NXとの棲み分けはより明確になった

UXの兄貴分となるNX。しかしサイズ感など、特に都市部での使用を考えるならUXの方が優位に立っているポイントもいくつか挙げられる
UXには100%電気自動車「UX300e」の選択肢もある。先日発表されたBEV専用車の「RZ」は1000万近いと噂されているが、UX300eなら580万円から手に入る。写真は2020年10月に発売されたUX300e。レクサス初のEV市販モデルでもある

 兄貴分のNXとは、ボディサイズや価格で大きな差をつけており、基本的には格下として扱われる立場のUXだが、NXに対して優位に立っているポイントもいくつかある。

 例えば、全幅を1840mm、全高を1540mmに抑えていることで、機械式駐車場へスムーズな入庫が可能だ。

 特に都市部で都市型SUVを保有したいというユーザー層にとって、UXのサイズ感は手を伸ばしやすいだろう。

 NXは、現行モデルになってかなり大きくなりすぎた感じもある。

 パワートレインにはPHEVを採用するNXだが、UXには早くからBEVが備えられていた。先ごろ、BEV専用車の「RZ」が登場したが、BEVに注目が集まる今だからこそ、UX300eの存在を見直していきたいところだ。

 UXなら「version C」で580万円、上級グレードの「version L」でも635万円でBEVに乗れる。1000万円近いと噂されるRZよりも、BEVの実質的な選択肢となるのは、UX300eではないだろうか。

 大きな変化やゆとりを感じながら、プラグインハイブリッドの利便性をとるならNXになるし、地道な改良と堅実性、そして手が届くBEVと考えるとUXがピッタリだ。

 UXがキープモデルで改良されたことにより、NXとの違いはより明確になった。小さい・安いからダメではなく、小さくて安いことがUXの利点であろう。

 このポイントを「有利」と捉えられればUXを選択し、「不利」と感じるならNXを選べば、自ずと満足度は高まるはずだ。

 昨今、新たな仕掛けを連発するレクサス。UXに対するチャレンジは、どのような結果を生むのだろうか。今夏の登場を楽しみに待ちたい。

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