ガソリン価格が高騰している。
2月28日時点(本稿執筆時点)での店頭小売価格(本文中の図1)は172.8円/L。170円超えは13年ぶりのこと。
5月19日時点では、全国平均は5週連続で値下がりしているものの、長崎県では、1リットルあたり181.7円(!)を記録し2週連続で全国一の高値となるなど、その余波はまだまだ続いていると言っていい。
ガソリン価格がなぜ高騰しているのか? 原油とは何かをあらためておさらいすることで探ってみたい。
※本稿は2022年3月のものです
文/ベストカー編集部、写真/AdobeStock(メイン写真=Purplexsu@AdobeStock)
初出/ベストカー2022年4月10日号
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■日本の原油の現状
原油とは、油田から採掘されたままの石油を指す。
原油は蒸留塔でガソリンや軽油、ナフサ(プラスチックなど各種化学製品の原料)など各種石油製品へと蒸留される。
日本は原油の輸入比率が99.7%と、そのほとんどを輸入に頼っている。
輸入先は、サウジアラビアが約40%、続いてアラブ首長国連邦が約32%、クウェート約9%と続き、輸入の9割を中東に依存している(図2)。話題のロシアからの輸入量は比較的少ない。
続いて、日本の一次エネルギーの構成から、原油への依存度を探る。
一次エネルギーとは、電力などの各種二次エネルギーに変換される前のエネルギーのこと。原油は38%と最も高く、続いて石炭、天然ガスと続く(図3)。
この原油の使用用途の内訳だが、熱源(家庭やビルの暖房、コンロ、火力発電等)利用が約4割、動力源(自動車やトラック、船舶、飛行機など)利用が約4割、原料その他(プラスチックや化学繊維、洗剤等)利用が約2割だ。
知れば知るほど原油がない生活など考えられない。日本だけでなく、世界中が原油なしでは成り立たないのが現代社会だ。
次の章では、世界の原油とエネルギー事情について見ていこう。
■世界の原油とエネルギー事情
だいぶお固い内容になっているが、読者の皆さんはついてきているだろうか。編集担当は若干不安です。
さて、現代は原油べったり依存しまくり社会。
そんな原油が採れる国はさぞかし儲かってるんでしょうねということで、世界の原油産出国トップ10(図4)を見ていこう。
1位は並みいる中東諸国を押しのけてアメリカだ。シェアは18.6%。シェールオイルの生産が軌道に乗り産出量を伸ばした。2位にサウジアラビア、3位にロシア、4位にカナダと続く。原油=中東のイメージが大きいだけに意外な結果だ。
原油=中東のイメージが強いのは、中東は原油の輸出余力が大きいことが理由だ。原油の輸出額(図5)も見ていこう。
中東諸国ではサウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラク、カザフスタン、クウェートの5カ国がランクイン。
ただ、アメリカやカナダを見てもわかるとおり、中東(というかOPEC)のシェアは低下してきている。なので、近年の原油の生産調整はOPEC以外の国も加えたOPECプラスで決められている。
最後に、主要国の一次エネルギー構成を見ていこう(図6)。
ブラジルやカナダの水力比率、フランスの原子力比率の高さが目に付くが、どこの国も火力(石油、天然ガス、石炭)への依存度が高いのは共通している。
■日本の発電事情・原油の依存度は?
原油高は電気代に直結するのか?
結論から言うと、直結はしない。下のとおり石油(原油)の占める割合は約7%と低い(図7)。
しかし、原油価格と天然ガス(LNG)の価格は似た動きをするので、原油価格が上がると天然ガス価格も上がる。
日本の発電の約4割を占める天然ガス価格が上がると、発電コストの上昇につながり、電気代が上がるのだ。
■原油価格はこれからどうなる?
最後に現在高騰している原油価格やガソリン価格が今後どうなるのかについて解説する。燃料油脂新聞の記者にも電話インタビューを行った。
●コロナ禍での原油価格の推移をおさらい
新型コロナウイルスの影響で原油需要が大幅に減少し、原油価格が急落した。このためOPECプラスで会議が行われ、2020年8月から970万バレル/日という空前絶後の規模で協調減産が始まった。
最初のOPECプラスで決まった減産幅が180万バレル/日なのを見ると、その減産幅の大きさがよくわかると思う。
その後減産幅は調整されるも、2021年7月まで、700万バレル/日以上の減産が続いた。
●2021年8月から減産幅の縮小(増産)がはじまる
2021年8月から、1カ月ごとに減産幅の縮小(40万バレル/日)が行われていった。
その結果、2022年2月時点での減産幅は296万バレル/日となった。3月も予定どおり40万バレル/日の減産幅の縮小が行われる。
「ロシアのウクライナ侵攻がなければ、2022年後半は原油の需給が拮抗する年になると言われていました」
と燃料油脂新聞の記者は話してくれた。原油の需給が拮抗する状態だと、原油1バレルの価格は70ドル前後だという。2月末現在の原油価格は1バレル90ドル超なので、20ドル程度下がることになる。
●今後のガソリン価格はどうなる?
「ウクライナ侵攻前段階で、ガソリン価格はまだ若干上がる余地がありました。政府の補助金が上限5円でしたが、発表から3週間で到達し、そこからは販売会社が利益を減らして価格の上昇を抑えている状況です。
地政学リスク、新型コロナウイルス、為替動向などの影響で、今後のガソリン価格の見通しは立たない状況です」
3月3日、原油価格が1バレル116ドル台まで上昇。予断を許さない状況が続く。
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投稿 まだまだ絶賛高値継続中! 生活直撃にも程がある なぜ石油は高騰するのか? そもそも「原油」って何なのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。