かつて「失言王」の異名を取った、アメリカのジョージ・W・ブッシュ元大統領の発言が久しぶりに話題となっている。ロイターが19日報じたところによると、ブッシュ氏は、テキサス州ダラスでの演説でロシアの政治体制を非難し、次のように述べたという。
ロシアではチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の欠如が生じ、1人の男が全く不当で残忍なイラク侵略を開始することになった。
ブッシュ元大統領「歳のせいで間違えた」
ブッシュ氏と言えば、2003年3月に、イラクのフセイン政権打倒を目的に米英主体の有志連合が軍事作戦を行った「イラク戦争」を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。当時のアメリカはイラクが大量破壊兵器を保有していることを戦争の大義としていたが、結局大量破壊兵器は見つからず。戦争終結までに50万人の死者が出たという推計も出ている。
ブッシュ氏が唐突に、イラク戦争への反省の意を示したのかと思いきや、これは単なる言い間違えだったようだ。ロイターによれば、発言の後、「ウクライナのことだ」と言い直し、「歳のせいで間違えた」と聴衆を笑わせたという。もちろん、ブッシュ氏の言う「1人の男」はプーチン大統領で違いないはずだ。
アメリカ大統領の発言と言えば、最近ではトランプ元大統領の差別発言が有名だが、ブッシュ氏も負けていない。ブッシュ氏は今回の発言の誤りを「歳のせい」としていたが、現役時代の発言もインパクトがあるものばかりだ。
妄言録の帯は「世界一危険なバカ♡」
発言内容のあまりのおかしさに日本でも『ブッシュ妄言録』(ぺんぎん書房、フガフガ・ラボ、村井理子)という書籍が2003年に発売されている。本の帯に記載されている文言は、「世界一危険なバカ♡」だ。
久しぶりにブッシュ氏の消息を知れたこの機会に、同書からブッシュ氏の大統領時代の発言をいくつかピックアップしてみたい。
2002年2月18日に東京で行われた当時の小泉純一郎首相との日米首脳会談の席で、ブッシュ氏は「150年をかけて、米国と日本は現代における最も偉大かつ永続的な同盟関係を構築してきました」と発言した。日本に原爆を落とした国はどこだったのか。
2001年11月には、大統領に就任してからの1年を振り返り、ブッシュ氏は「すべてひっくるめて、素晴らしい1年だったよ」と発言した。2001年は、9月11日にいわゆる「同時多発テロ」が起こっており、発言したのが同時多発テロからわずか2カ月ほどしかたっていない時期だ。
ホワイトハウス見学の少年に「白いよ」
イギリスからホワイトハウスに見学に来た少年に、ホワイトハウスはどんなところかを聞かれたブッシュ氏の答えは一言、「白いよ」。
同書は好評を博して、第2弾も発売された。第2弾のタイトルはシンプルに「ブッシュ妄言録2」だが、帯に記載されている文言が振るっている。「ジョージとジョンイル、どっちがバカ?」。
言うまでもなくジョージはブッシュ氏のことで、ジョンイルはもちろん、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)主席(当時、2011年死去)のことだ。この本は、ブッシュ氏の発言の中で、北朝鮮に関するものにクローズアップしたもので、「キム・ジョンイルはピグミーだ!」などの、ブッシュ氏の発言が記載されている。ちなみにピグミーは、成人男子の平均身長が150センチに満たない民族の総称だ。
今考えると、こんな発言をする人が世界最大の経済大国であり、3000発以上の核弾頭を有する軍事大国であるアメリカのトップに8年間も君臨していたのかと戦慄してしまう。ブッシュ氏が今、アメリカ大統領だったら、ウクライナ情勢にどう対応していただろうか。