こんにちは、ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタントの八木陽子です。
3月末に、投資教育の書籍「今から身につける 投資の心得」を出版しました。
金融教育を普及するメンバーたちと一緒に、内容や構成を考えた書籍でしたが、「子供に投資をどう教えるか」ということで、多数の意見が飛び交いました。
“応援したい会社”、2つのポイント
講座で、子供たちには、投資先を考えるときに、「応援したい会社を考えよう」というように伝えています。応援したい会社はどのように見つけられるでしょうか?2つのポイントをお伝えしたいと思います。
1つめは、身の回りのお気に入りの物から探す方法です。お菓子、文房具、スポーツ用品などの会社や、レストラン、遊園地など好きな場所の会社など、何かしら一つは出てくるでしょう。「なぜ好きなのか?それを売っている会社はどんな会社なのか」とリサーチすること。そして、その会社を調べていく過程で、じわじわと、応援したいと思える会社が出てくるでしょう。
2つめとして、ニュースや新聞などで知った会社から選ぶことです。宇宙旅行や再生医療にチャレンジする会社、女性の活躍、環境問題への取り組みなど、社会に役に立つことに挑戦している会社などです。これからの時代の社会貢献とは、本業と区別するのではなく、経営戦略としての視点がなければ、会社の繁栄はないと思っています。そのため、素晴らしいと共感できる事業を行う会社を見つけるべく、アンテナを張っていくことも大切です。
ただ、この「会社を応援する」というフレーズに、賛否両論が起こりました。応援するなら、「寄付」という方法もあります。「寄付」は、見返りを求めない方法で、純粋な応援になるかもしれません。
また実際、投資の世界では、応援なんて生ぬるいものではなく、「いかに儲けるか」で勝負をしている人もいるかもしれません。
“会社を応援” ①寄付と投資はどう違う?
投資は、寄付と違って、自分への見返り、つまり、自分のお金が増えることが目的の一つにはなります。それでも、私は、「お金が増える」ことだけを目的にせず、応援したい会社を選ぶことに意味があると考えています。
もし、投資が単にお金を増やすだけの目的であれば、短期的に利益を追求する投資家が増え、「いかに早く儲けるか」を考えるでしょう。
しかしながら、株式投資というのは、その会社のオーナーになることに似ています。オーナーや社長がもっと早く儲からないのか、もっとコストダウンできないかといった思考に陥ると、社員の給料を下げ過酷な労働環境になったり、社員は下請け会社に安い価格を強要したり、消費者にとっては不利な価格設定になったり…といった負の連鎖が起こる可能性があるのです。
もし成熟した投資家が増えて、長期の視点で成長をとらえることができれば、社長も社員も焦って疲弊する必要はありません。投資によって、長期的なスパンで、世の中に必要な会社や仕事が選抜され、そこで様々な創造的な価値が生み出されると思います。投資とは、個人が利益を得るのみならず、豊かな世の中を作ることを実現化するものだと思っています。
「発行市場」と「流通市場」
そして、もう一つ議論を呼んだのは、「会社を応援する」といっても、実際の資金は、会社にわたるわけではないことについての指摘でした。
ご存知の方も多いと思いますが、株式市場は、「発行市場」と「流通市場」に分かれます。
「発行市場」とは、会社が資金調達をするために新規に発行する株式を、投資家が取得する市場のことです。IPOなどがあたります。直接もしくは証券会社を通して、株式を購入できます。
そして、投資家は、取得した株式を売買することできます。既に発行された株式は、投資家同士の売買で流通するため、その市場を「流通市場」といいます。
つまり、株式を購入するといっても、既に発行された株式の場合、手数料等を除けば、その株式を売った相手に資金がわたるため、残念ながら、実際には、応援したい会社に資金が流入されるわけではありません。
しかし、その「流通市場」でさえ、長期目線の投資家が、その会社のビジネスを支え続けると思います。長期で株式を保有し、会社のビジネスに共感する投資家。仮に、人生の中で、資金が必要になって売買をしたとしても、売った投資家から買った投資家へ、会社を支えるバトンを受け継ぐ。そのような投資家が増えれば、会社の安定・発展につながると思います。
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本来の投資とは、自分の幸せとともに、社会貢献を両立させるための方法だと思っています。
そして、「応援したい会社(仕事)を見つける力」を育てるのが投資教育です。投資を行うことは、人生や仕事の選択肢を増やすことにつながります。大人にとっても、投資であれ就職であれ、会社の選択は難しいはずです。子供たちが、会社を見る眼を少しずつ育むことが、自分の人生の道しるべの一つになり、日本の未来を明るくすることにもつながると考えています。