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ルノー アルカナ(2022): クーペスタイルの新型クロスオーバー、ハイブリッドまたはマイルドハイブリッド、トヨタC-HRやマツダCX-5、シトロエンC4、VW T-Roc SUVなどがライバルとなる。初試乗&レポート!

ルノーとは?

日本の自動車好き、ルノーファンにとってのルノーモデルとはどういうものか。80年代、90年代に青春時代を過ごした旧世代にとっては、それは、ホットハッチの代表格以外の何物でもない。5(サンク)ターボ、ルーテシアRS、メガーヌR.S.といったアイコニックなルノーのホットハッチは、その秀逸なハンドリングとコーナリングの素晴らしさで人々を魅了した。その一方で、ルノーはエレガントでチャーミングなモデルも提供し続けてきた。トゥインゴは初代から現行モデルに至るまでお洒落で可愛い小型車だし、「エキスプレス」や日本で大人気を誇る「カングー」は、ベースこそ商用車でありながら、マルチパーパスヴィークルとしてライフスタイルを豊かにし、多くの人に愛されている。その他、キャプチャーは日本でも人気モデルだ。むろん、多くの人々の憧れのモデル、「A110」を含め、長い間、モータースポーツ生まれのライトウェイトスポーツカーとして敬愛され続けている(ルノー)アルピーヌも忘れてはならないだろう。

そんなルノーから、今回、ルノーモデルラインナップ中最大のモデルとなるクーペスタイルのSUV「アルカナ」が登場した。トヨタやマツダやシトロエンやVWなどのスタイル重視のモデルに直接対抗するモデルだ。その大胆なスタイルの「アルカナ」は、ハイブリッドのみで、フロントドライブのみとなる。ルノー初のクーペSUVで、価格は429万円からとこのセグメントのSUVモデルとしてはリーズナブルで、スタイル、実用性、洗練性を兼ね備えたバリューフォーマネーパッケージと言える。発売開始は5月26日(水)からとなっている。

オプションは?

ルノーのE-TECHハイブリッドシステムは、すでに「ルーテシア」、「キャプチャー」、「メガーヌ」に搭載されており、ルノー(現アルピーヌ)F1チームのエネルギー回収のノウハウが使われている。そのテクノロジーは、電気、ハイブリッド、ガソリンの間をシームレスに移行することを目的としている。

ルノーによれば、E-TECH HYBRIDは、メインモーター(駆動用)と、HSG(ヒボルテージスターター&ジェネレーター)の2基のモーター、そして1.6リッター自然吸気wン人を、モータースポーツの世界で使用されているドッグクラッチを採用した軽量でコンパクトな電子制御ドッグクラッチマルチモードATで繋いだ、ルノーが独自に開発したハイブリッドシステムだとのこと。そして、そのハイブリッドシステムは、ルノーがF1で長年にわたって培ってきたノウハウを活かし、低速域から高速域まで全域にわたり、最も高い効率となるようモーターとエンジンを最適に組み合わせる制御をおこなうことで、ダイレクトかつスムーズなドライブフィールと、低燃費を実現しているという。

バッテリーは後部座席の下に置かれ、フロントの1.6リッターガソリンエンジンに取り付けられた電動モーターを駆動し、マイルドハイブリッドと同様に、スタータージェネレーターで補われるようになっている。両者の合計出力は140馬力、トルクはエンジンが109lbft、電気モーターが最大184lbftを発生させます。そしてEVモードで起動する。

E-TECHの複雑な自動変速システムは、ドライバーの手を煩わせることなく、ただひたすら前輪にパワーを送り込む。

形状が実用性を損なっていないか?

デザインのインスピレーションは非常に影響力があり、ルノーは「アルカナ」で、この外観をより手頃な価格で提供することを目指している。形状は見た目だけではない。ルノーによれば、「アルカナ」は空力的に従来のSUVより約25%効率が良く、経済性と洗練性に貢献しているという。

リアのデザインもスタイリッシュでカッコいい。

スタイル重視のクルマでありながら、ファミリーカーとしての性格も強いため、外見上は内側から感じる以上にクーペ的でなければならないという、トリッキーなバランス感覚を持っている。そして、それはうまく実現されている。ルーフのカーブによって、に後部座席の窓が小さくなっているものの、後部座席が暗く感じられることはない。

ボディの形状から、後席乗員は前席乗員よりも若干幅が広くなっている。後席は3人乗りだが、実用的には4人乗りとして扱い、後席の中央の広くて快適なアームレストを利用した方がいいだろう。後席のレッグルームは十分で、ヘッドルームが問題になるのは身長180センチ以上の人だけだろう。

リアシートは60:40に分割され、フラットに折り畳めるので、トランクサイズはE-TECHハイブリッドで480リットルから1263リットルへと拡大する。

見た目も中身も、コストパフォーマンスの高いパッケージだ。もしあなたがスタイル、実用性、そして便利で快適な機能の数々を優先するのであれば、あなたは正しいモデルを探している。

Apple CarPlayとAndroid Autoの接続は標準だ。全モデルにアクティブエマージェンシーブレーキシステム、交通標識認識、車線逸脱警報、レーンキープアシスト、クルーズコントロールが搭載されている。加えて、照明はオールLED。オプションとして、オープニングサンルーフ、レザーシート、アダプティブクルーズコントロールなどが用意されている。

キャビンの質感は、プレミアムなものを目指している。確かに、ルノーは最近この分野で大きくレベルアップしている。現行の「ルーテシア」や「キャプチャー」などのインテリアは、非常にモダンでスタイリッシュかつ巧妙である。試乗した「アルカナ」はキャビン構造に過激さや革新性はないものの、物理的なスイッチ類は多く、今日のタッチスクリーン主導の考え方に慣れた目には多すぎるかもしれないが、それらは論理的にグループ化されている。

そしてその走りは?

今回、我々は、日本市場に導入される一番スポーティな「RS LINE」に試乗した。走り出してすぐ感じたのは、電気的なアシストはほとんど感じられず、「アルカナ」の運転は、実用上は通常のオートマチックガソリン車のように感じられる。街中の走りはそれなりに洗練されており、ギアボックスもそれなりに動作するが、まともな性能を求めると、トランスミッションが不機嫌になるため、「アルカナ」は、挑戦的でないドライビングのために取っておくのがベストだろう。

「ルーテシア」や「キャプチャー」に見られるように、ルノーの「CMF-B」プラットフォームのバージョンを使用しており、ホイールベースの長大化は、ハンドリングや乗り心地を損なっていない。快適なシートにも助けられ、快くコーナリングし、ほとんどのバンプを控えめながら巧みに吸収する。

ややタイトなチューニングにより、快適性は維持されているが、「アルカナ」はスポーティでもなく、実用的なクルマだといえる。安全性を重視したESPは、早い段階で厳密に作動し、遅れて再び作動するだけだ。しかし、ハッチバックであっても、このようなコンパクトSUVは、どちらかというとゆったりとしたクルージングに向いている。

「アルカナ」用のパワーユニットは滑らかに回転し、最大トルクが早い段階で得られ、力強く加速し、パワーデリバリーも心地よく安定していて、「アルカナ」の走行性能は、かなり納得のいくものとなっている。

1,470kgという軽量ボディと相まって、すべてに軽やかでスムーズで非常に高いレベルのハンドリングと乗り心地を実現していて、まさにルノーモデルの真骨頂と言える。まるで私自身、運転技術が1段階レベルアップしたように感じた。(笑)

アルカナR.S. LINEの性能は申し分のないものであり、運転したときの軽く滑らかなズで正確な動きが印象に残った。

結論:
ルノーは2025年までに14台のE-TECHモデルを投入することを約束しており、そのうち7モデルはフル電動で、「アルカナ」のようなCセグメントには(重複するが)7モデルである。2030年までに欧州で最も環境に優しいブランドになることを目指している。多くの自動車メーカーがそのような野心を表明しているが、ルノーは大ヒットしたゾエによってEVのノウハウをしっかりと身につけているし、「循環経済」、つまりEVバッテリーの再利用やリサイクルの方法を見つけることなど、さまざまなことに真剣に取り組んでいるのである。

そんな「アルカナ」は、どちらかといえばシンプルで、従来的だと思われるかもしれない。しかし、もっとポジティブに捉えれば、実績のあるスタイルを採用し、信頼のおける技術を使った、きちんとしたクルマなのだ。ルノーでは、他にもより高度に電動化された、より先鋭的なクルマが販売されている。しかし、このクルマはスマートで、実用的で、楽しくて、それなりの価値のある新車だと言える。お行儀の良いコンパクトSUVであるが、一部のシンプルなデザインを補うように、説得力のあるエンジンと、もちろん適正な価格を実現している。

テクニカルデータ:

モデル ルノー アルカナR.S. LINE E-TECH HYBRID
パワーユニット: 1597cc
自然吸気直列4気筒DOHC16バルブ、1.2kWhバッテリー+電動モーター
排気量: 1,597cc
最高出力: 94PS@5600rpm+49PS@1677~6000rpm(メインモーター)+20PS@2865~10000rpm(サブモーター)
最大トルク: 148Nm@3600rpm+49PS@1677~6000rpm(メインモーター)+50Nm@200~2865rpm
駆動方式: 前輪駆動、電子制御ドッグクラッチマルチモードAT
乾燥重量: 1,470kg
全長/全幅/全高: 4570/1820/1580mm
価格: 429万円より

【フォトギャラリー】

Text & photo: Auto Bild Japan