東京オリンピックなどの開催を機に、交通マナーの啓蒙や交通違反の取り締まりが強化されたことと、インターネットが普及し、多くの人がニュースで道路でのマナーについて取り上げられた記事に触れ、議論する機会が増えたことで、交通安全への意識は改善傾向と感じられる。
しかし、そういった意識が向上したからこそなのか、よかれと思って行為でちょっと理不尽なのでは!? と思う取り締まりを受けたという事例も読者から寄せられている。
今回は、道路交通法やマナーを遵守する意識はあるものの、気を使ったがあまり取り締まられてしまった……、という声のある信号機のない横断歩道での対応の話から、ほかにもある取り締まりを受けるかもしれない気を付けたい行為について取り上げていきたい。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=xiaosan@AdobeStock)
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■東京オリンピックなどによる対応活発化で変わった歩行者優先という意識
57年ぶりに開催された東京オリンピックを機に、色々と国内のルールやマナーが見直された。国際的な常識とはかい離した日本の実態を改めようという動きだ。
そのうちの1つが横断歩道に関する問題で、そもそも道路交通法第38条第六節の二「横断歩行者等の保護のための通行方法」には、
[1]歩行者等の有無が確認できなければ、横断歩道等の停止位置で止まれるような速度で進行する。
[2]横断しようとしている、あるいは横断中の歩行者等がいるときは必ず一時停止をする。
[3]横断歩道等およびその手前30mは、追い越しや追い抜きは禁止。
と明文化されている。しかし実態としては横断歩道の端に歩行者が立って渡ろうと待っていても、一時停止するクルマは希で、地域によっては9割以上のクルマが止まらない、なんて調査結果も報じられている。
いつのまにか急には止まれないクルマが優先となって、歩行者はクルマが途切れるのをまって渡るのが習慣化していたのが、オリンピックによる海外からの観光客対策によって、横断歩道での歩行者優先を周知させようと、警察はPR活動や取り締まりを活発化させたのだ。
そんな管轄警察署の取り締まりやPR活動から、横断歩道での一時停止は徐々に認知度を高めている。
筆者は以前から歩行者に気付いた時には止まるようにしていたが、後続車(バイクが多い)が追い越して通過することもあったことから逆に危険を感じ、対向車や後続車がいる時には止まるのを躊躇するようになっていたのだ。
けれども、最近は止まるクルマも増えたため、横断歩道の端に歩行者を見つけたら安心して止まることができるようになってきた。
■歩行者から譲られたので先行したら違反になった!
ところが、横断歩道で一時停止するクルマが増えたことで、また別の問題が持ち上がってしまったこともあった。それは歩行者から進路を譲られるケースがあり、それに従ってクルマが先に通過したところ、横断歩行者等妨害等で交通違反として検挙されてしまったというのである。
前述のとおり、横断歩道では歩行者に優先権があり、クルマは一時停止するだけでなく、歩行者が渡るまで待ってから発進することが義務付けられている。
免許を持っているドライバーの中でも、一時停止というのは完全に停止すればいいと思っている人が多いようだが、交差点などで一時停止の表示がある場合、交差する交通の妨げにならないか確認してから交差点内に進入することになっている。
つまり交差点での交通事故や取り締まりで「止まった/止まらない」という議論が起こることがよくあるが、一時停止さえすれば発進してもいい訳ではなく、優先権のあるほうが通過することを妨げてはいけないのだ。
横断歩道での歩行者も同じで、譲られたからといって先に通りすぎてしまうのは違反、ということらしい。しかし道路交通は譲り合いの精神で成り立っていることを考えると、これは何だか理不尽な印象もある。
ネット上では取り締まりに遭ったドライバーの声とともに、さまざまな意見があふれているが、弁護士の中には「歩行者はクルマに進路を譲った時点で、横断歩道を渡る意思を解除していると判断できるのではないか」という意見も見られる。
筆者はこの意見にまったく同感である。譲っている時点で渡ろうという姿勢を保留していると判断できるのではないだろうか。
歩行者のほうにしても、足が不自由なお年寄りの場合、「クルマが行き過ぎてからゆっくり安心して渡りたい」という思いでクルマに進路を譲るケースが多く見られる。
ドライバーにしてみれば「ゆっくりでも先に渡っていいんですよ」と思って渡ってもらおうとアピールしても、なかなか納得してもらえず、譲り合いでどちらも動かない膠着状態になることは珍しくない。
結果的に後続車のことも気遣って歩行者より先に横断歩道を通過したことで、交通違反として検挙されてしまうのは、納得できないと思うドライバーも多いのではないだろうか。
裁判で争えば無罪や処分無効を勝ち取れるかもしれないが、実際の違反点数や反則金の額を考えれば、裁判を起こすのは合理的ではないと判断することになるだろう。つまり泣き寝入りである。
■意外とある? 理不尽な交通違反の取り締まり
こうした理不尽な取り締まりに遭うケースは、ほかにも存在する。
スピード違反の取り締まりといえば、パトカーや白バイによる追尾での取り締まりのほか、ネズミ捕りと呼ばれるレーダーや光電式の速度測定器を使用しての取り締まりなどがあるが、周囲のクルマと同じ速度で走行していた(と本人は思っているだけかもしれないが)のに、しかも制限速度をわずかに超えていただけで取り締まりを受けたとすれば、それは理不尽な仕打ちだと思うことだろう。
筆者の知り合いでもわずか8km/hオーバーで速度違反の取り締まりを受けたドライバーがいる。これはおそらく、その日の取り締まりでハデに飛ばすクルマがなく、成果を無理やり作り上げるために普段なら取り締まりを受けることのないような速度でも、検挙されてしまったのではないだろうか。
厳密に言えば速度違反をしていることは間違いないのだが、道交法の本来の目的である交通の流れを円滑、安全するするものという考えに則れば、少々の速度違反は危険ではなく円滑な交通を実現しているものだけに、釈然としない気持ちも理解できる。
ほかにも、狭い路地のすれ違いで、進入禁止の道路に一時的にクルマを進入させて対向車をやり過ごしたとして、その後で警察官に見られて進入禁止違反として取り締まりを受けることも可能性としては有り得る。
信号待ちなどしている際に緊急自動車が後方からやってきて、対向車線が渋滞している場合などに進路を緊急自動車に譲るため赤信号でも交差点内に進入するようなケースもある。
それ自体は緊急事態としてありえる行動だが、緊急自動車が走り去ったあとで、交差点内(前方が渋滞している場合など)にクルマが停車した状態になっていれば、駐停車違反として検挙される可能性もゼロではない。
また時々報道されるのが、道路標識の設置や警察官の判断が誤ってしまったことで、不当な取り締まりを受けてしまったケース。こういうことがあるということは、誤りが発覚していないケースもおそらく相当するあると思われる。
警察官だって人間なのだから、過ちを犯すこともあるだろうし、勘違いすることだって免れない。自分がそんな目に遭ってしまうことも十分に有り得るのだ。だから道交法を理解して、納得できない取り締まりに遭った時にはその場で反論して、違反切符にサインしないことも自己防衛として大事なことなのである。
ドライバーは運転免許を取得する際、道交法を理解していると判断(=学科試験に合格している)されているのだから、免許更新時や道交法が改正された時などに道交法を覚えているか自己チェックしてみることも必要だ。
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投稿 譲られたけど、通過したらアウト!!? 信号機のない横断歩道などである納得できない取り締まりの恐怖 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。