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相続税に関する注目の裁判の結末はどうなるか--。路線価に基いて財産評価をした結果、実勢価格と大きな乖離がある場合に、国税当局が路線価によらない方法で相続税額を決められるとする規定の是非を問う訴訟で、最高裁(長嶺安政裁判長)の判決がきょう19日、言い渡される。

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相続税申告「0円」が追徴課税3億円に!

路線価に基づいて約3億3,400万円と原告側が申告していた評価額は、国税当局によって行われた不動産鑑定の結果、約12億7,300万円だったと指摘されている。原告側は銀行からの借り入れがあったことで相続税額を「0円」と申告していたが、国税当局は約3億3000万円を追徴課税した。これを不服として原告側は、追徴課税の取り消しを求める訴えを起こした。

2019年8月に行われた一審の東京地裁、2020年6月に行われた二審の東京高裁のいずれも原告側が敗訴している。

今回の訴訟は、国税当局が路線価によらない方法で相続税額を決められるとする規定の是非を問うものだが、国税庁の「財産評価基本通達」には、財産評価の方法が規定されており、路線価での財産評価はもちろん認められている。その一方で同通達には、例外として次のように記載されている。

この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

財産の評価が「著しく不適当」であると国税当局に判断されれば、国税庁長官の指示によって、路線価による財産評価以外の方法で評価することができるのだ。今回の場合も、相続税の申告を受けた税務署が国税庁長官に上申し、上申を受けた国税庁長官は国税局長に対して、評価方法を見直すように指示している。ただ、何をもって「著しく不適当」と判断されるのかは、明らかになっていない。

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路線価による財産評価が認められている理由

そもそもなぜ、実勢価格の80%ほどの路線価による財産評価が認められているのか。路線価ではなく実勢価格で財産評価を行っていれば、今回のようなトラブルは起こっていない。

路線価による財産評価が認められている理由は、土地の価格をある程度、固定化できることにある。相続税の路線価は毎年一回7月1日に国税庁によって発表され、その価格は1年間変動しない。

一方、実際の土地の価格は、売り手と買い手の合意で決定されるものだ。同じ土地であっても、相手が変わると価格が大きく変動する可能性がある。そこで、実勢価格の代わりに路線価による財産評価が認められているわけだ。路線価による財産評価であれば、税務署の職員が土地の実勢価格を調べる手間も省ける。

結果次第では節税対策に影響大

路線価は、実勢価格の80%ほどのため、結果的に節税対策にもなる。そのため、路線価での財産評価は、遺産相続の際に広く用いられてきた手法だ。しかし、今日の最高裁の判決によっては、相続税の対策を抜本的に見直さなければならない人も出てくるだろう。

タワーマンションなどの人気の物件は路線価と実勢価格の乖離が起きやすい。一審・二審の判決通りだとしたら、意図的にそうした物件を相続税対策で購入するなど、行き過ぎた相続税対策を取った場合、国税当局によって摘発されてしまうリスクが高まる可能性もある。

写真:以下略ちゃん/PhotoAC

一審・二審は原告側の敗訴に終わったが、最高裁では今回、口頭弁論が開かれた。民事訴訟法には「上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる」と記載されている。この条文は換言すれば、最高裁で弁論が開かれるということは一審・二審の判断が覆される可能性もあるということだ。

とはいえ、一審・二審の結論自体が覆されることもある一方で、結論は維持しつつも法律的判断を変更するだけということも少なくない。いずれにしても、最高裁の場でどのような判断が下されるか、今後の相続税のあり方を考えるうえで非常に重要な判決となった。