Bugatti Centodieci
3年の開発期間を経ていよいよ生産スタート
2019年夏に発表された、10台限定のブガッティ「チェントディエチ(Centodieci)」がいよいよ完成しようとしている。800万ユーロ(約10億8900万円)という価格ながら、ものの数時間で完売してしまったフレンチスーパースポーツは、3年間にわたり厳しい開発プログラムを重ねてきた。
総距離5万km超の耐久テスト走行や広範なシミュレーション、風洞実験による空力テスト、人工気候室による品質チェックなど、ブガッティエンジニアの厳しい“鍛錬”を経ていよいよ生産に着手するチェントディエチ。販売される10台は、すべてがオーナーの好みを細かく反映させたビスポーク仕様となるようだ。
16週間かけて完成するチェントディエチの内装
今回ブガッティは、モルスハイムで日々行われているチェントディエチの製造工程の一部を公開した。鮮やかなフレンチブルーのボディが印象的な1台には、どこか見覚えのある内装デザインが与えられているのが分かる。そう、ブガッティの伝説的ハイパフォーマンスモデル、EB110 SSだ。幾何学的なキルティング模様は、EB110 SSのインテリアに独特の雰囲気を与えていた。
この内装デザインは、白紙の状態から1年をかけて開発された。アームレストからドアパネル、センタートンネルカバー、スカッフプレート、ルーフライナー、フロアマット、シート地など、この1台のために特別にカスタマイズされたパーツは枚挙に暇が無い。1台の内装が完成するまでに16週間もの時間がかかるというのも納得である。ちなみに、レザーのカットからエンボス加工、組み上げまでを含めると、ヘッドレストひとつに4日以上かかるそうだ。しかも、その後1日かけてシートの状態を細かくチェックするのだという。
2022年中に10台すべてをデリバリー予定
ドアパネルやセンターコンソール、フロアマット、シートの一部に配した細やかなキルティングパターンの製作には、とりわけ精巧な設計と技術が求められた。曲面や凹凸に合わせて微細に調整することで、すべてのパターンが均一に見えるようデザインされている。
チェントディエチの完成第1号車は、あと数週間で顧客の元へと旅立っていく。ブガッティでは、2022年中に10台すべてをデリバリーする予定である。
1991年に生まれた伝説のブガッティ
1963年に一度歴史の幕をおろしたブガッティは、20年超の空白期間を経て、ロマーノ・アルティオーリによって再生された経緯をもつ。1987年、アルティオーリはブガッティの商標権を獲得してブガッティ オートモビル S.p.A.の会長に就任。1990年9月15日にはカンポガッリアーノに革新的かつ先進的なファクトリーをオープンした。
そして1991年9月15日。エットーレ・ブガッティの生誕110周年を記念するその節目に、アルティオーリは最先端のスーパースポーツカー「EB110」をお披露目した。4基のターボチャージャーを備えた3.5リッターV12エンジンを搭載し、4WDシステムと軽量なカーボン製モノコックを携えたクーペは、世間に一大センセーションを巻き起こした。エンジンの最高出力はじつに611psを記録し、最高速度は351km/hに到達。量産スポーツカー最速の称号を獲得した。
EB110にオマージュを捧げる記念碑的モデル
そして、2019年夏。アメリカ・カリフォルニアで開催されたクエイル・モータースポーツ・ギャザリング(Quail Motorsports Gathering)において、ブガッティは創業110周年を記念したスペシャルモデル「チェントディエチ」を公開した。
伝説的な「EB110」にオマージュを捧げる記念碑的モデルとなるチェントディエチは、古典的なフォルムを現代的に再解釈したうえで、先進的なエアロダイナミクスの要件を組み合わせたスタイルを特徴としている。搭載するのは、ブガッティ自慢の1600馬力を発揮する8.0リッターW型16気筒エンジン。300km/h超での走行を目標に掲げるハイパーカーゆえ、厳しい状況下でもバランスの取れたハンドリングを実現するべく、世界各地で広範な走行テストが重ねられてきた。