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文学に甲乙はつけがたいが、日本文学の中であなたにとっての最高峰は―。そう問われたら多くの人は迷うだろう。でも私は躊躇なく即断できる。「佐藤春夫の『田園の憂鬱』だ」と。手元の本は昭和31年3月初版の角川文庫。はるか昔の青春時代、古書店で買った。最終ページの右上に小さく鉛筆で「25」と走…