もっと詳しく

 トラックは幾つもの部品が集まって「トラック」となります。ボディ、シャーシ、エンジン(パワーユニット)、そしてタイヤ……。

 そのタイヤ自身も、幾つもの部材が組み合わさってタイヤとなっており、それぞれの部分に名称があり、役割があります。

 タイヤ各部の名前と役割を知ると、日々のメンテナンスが少し楽しくなるかも? 現役タイヤマン・ハマダユキオさんによるタイヤの解体新書です。

文・写真/ハマダユキオ


トレッド部

 トレッド部はタイヤが路面と接地する部分ですね。トレッド部分の役目としましては摩耗や外傷を防ぎ、駆動力、制動力を効率良く路面に伝え、カーカスと呼ばれるタイヤの構造の骨なような部材の保護をしております。

 トレッド部分は摩耗に強いゴムを使用しており、ある程度厚みのある層になっています。ここには、ご存知の通りタイヤに特有の模様、トレッドパターンが刻まれております。

 トレッドパターンは大まかに4種類あります。「リブ」、「ラグ」、「リブラグ」、「ブロック」の4パターンです。

 リブは一般的には縦溝とも言います。燃費性能に優れ、トラックのフロント軸やバス等に使われる傾向にあります。

 ラグは主に悪路用。業界的に言うなら「ゲタ山」です。一部のダンプ用やフォークリフト等、特殊車両に多く使用されています。

 リブラグはリブとラグの中間的パターンで、ダンプやバスに使用されるケースが多めですね。

 ブロックはトレッド部のひとつひとつの部位(ブロック)が独立した立方体や直方体などの形をしたもので、「ブロックパターン」と総称されます。通常「ミックス」「オールシーズン」といわれるものや、スタッドレスタイヤなどがブロックパターンに分類されます。

サイドウォール部

 タイヤの横部分がサイドウォール部です。タイヤの骨格であるカーカスを保護するほか、縦方向の力に対して屈曲運動をする為、乗り心地にも直結します。

 タイヤに充填する空気圧を高めれば内圧によってタイヤは外側へ広がろうとします。カーカスに掛かるテンションは上がり、乗り心地は堅くなりますが、耐荷重は上がります。反対に内圧が下がれば乗り心地は良くなりますが耐荷重は下がります。

 その「耐荷重」と「乗り心地」の一番良い所が規定空気圧なんですね。

 耐荷重を上げる為に空気圧を上げすぎればタイヤの全ての部材にテンションが掛かり過ぎて、ちょっとした衝撃でもショックによるバーストの危険性が高まります。

 いっぽう内圧が規定空気圧以下に下がれば、いわゆるパンクの原因になるほか、本来空気圧で支える荷重までもタイヤの部材で支える事になり、同じく内部のカーカスの負担は大きくなるため、タイヤ故障の原因になりかねません。

 また内圧が低い場合は必要以上に屈曲運動が起きます(タイヤのたわみが大きくなる)。その為、乗り心地としてはカーブなどで荷重を支える力が弱くなり「腰砕け」感が強くなります。

 規定空気圧では路面へトレッドが最大に押し付けられますが、腰砕けにより力がトレッドからサイドウォールに逃げてしまうと、タイヤが滑る感覚があります。モータースポーツを経験した方は良くわかると思います。内圧が高くても低くても路面への食い付きは低下するのでタイムは縮まらないんですよね。

 もう一点大事な役割としてメーカー名、タイヤの名前、種類、製造年と週、そしてタイヤのサイズ、荷重指数の表記があるのもサイドウォール部です。タイヤの情報が詰まっているので、我々タイヤ屋が様々な作業で支障なくスムーズに対処できるのはサイドウォールのお陰と言っても過言ではございません。

 サイドウォールはタイヤの中では一番良く見られ、洗車時にもキレイにされる部分。ただ面の皮も薄く繊細なため、衝撃や傷に弱くトレッドでは大丈夫なダメージもサイドウォールでは深刻な傷となる場合も少なくないので、過保護な位大事にしてくださいませ。

ショルダー部

 トレッドとサイドウォールの間のタイヤの肩の部分。

 ここも内部構造のカーカスの保護を目的としたものではありますが、特徴的なのは熱の発散を良くする為の設計がされている事です。

 ゴムは熱に弱い素材です。通常の走行でも気温や路面温度が高かったり、トラックにフル積載した場合など、タイヤはかなりの熱を発生、発散しています。タイヤの接地面では転動による屈曲運動、路面との摩擦で受けたエネルギーが熱に変換されるて発熱するんですね。

 タイヤの中でもゴムの層が厚いのはトレッドの内部とショルダー部分です。

 トレッド内部は耐摩耗性は低いものの熱に強いゴムを使用していますが、ショルダー部分は耐摩耗性も必要な為、表面の形で放熱を促す構造になっています。深さはあまり無いもののトレッドパターンのような凸凹で少しでも表面積を増やし熱を逃がす形になっております。

ビード部

 ビード部はタイヤをホイールのリムに嵌合する部分です。

 ビード部の内部にはスチールワイヤーの束が入っており、その周りはビード部分の補強、剛性UPのためのかなり硬いゴムで覆われております。

 チューブの入っていないチューブレスタイヤはこのビード部分がホイールのリム部分と密着する事でエアの漏れを防ぎ内圧を維持しています。

 エア漏れ(パンク)の原因としては、トレッド部分の異物貫通(修理可能な場合)以外では、バルブコアの不良、バルブ本体のシール性の低下、そしてビード部分(リム部分)からの漏れがあげられます。

 ビード部分からのエア漏れはホイールの錆びの発生が主な原因ですが、その他にタイヤ組み付け時のゴミの噛み込みやホイールのリム部分の変形もございます。

 錆びやゴミの噛み込みでしたらホイールとビードの当たる部分の清掃やシール材の塗布で対処はできますが、ホイールのリム部分の変形はなかなかキレイには修正できないのと、やはりそれなりのダメージは受けているので新品ホイールへの交換がお勧めです。

 またビード部分には「リムライン」というリムと全周に渡り平行になってるラインがあります。これはビード部分が正確にリムに嵌合しているかを確認するためのラインです。一般ユーザーさんにはあまり関係無いのですが、自社整備するユーザーさんなどはご参考までに。

 通常、トラック用チューブレスタイヤでは普通にエア充填するだけでほぼホイールのリムにキレイにフィットして、リムラインもホイールと平行になるのですが、錆びの多いホイールやビードクリーム(タイヤ組み付け時に塗布するグリースのようなもの)が少な目だと上がって無い場合がありますので注意が必要です。

 またフォークリフト等特殊車両のチューブタイプは特にリムラインの確認が必要です。

 規定空気圧に達してもリムラインが歪になっており平行でなければ、きっちりタイヤとホイールが嵌合していないので、もう一度バラして多めにビードクリームを塗布するなど、再度確認をお願い致します。

 以上、大まかに見える範囲でのタイヤの各部名称、役割でございました。

投稿 トラックドライバーでも意外と知らない? 整備にも役立つタイヤ各部の役割をプロタイヤマンが解説します自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。