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<p>弱さと向き合い、自己肯定感を育む──韓国音楽業界に知性を宿したラッパー、TABLOにインタビュー。(Toru Mitani)</p><p>弱さと向き合い、自己肯定感を育む──韓国音楽業界に知性を宿したラッパー、TABLOにインタビュー。(Toru Mitani)</p><p>BTSのRM、SUGA、さらにはZICOなど、数多くの韓国アーティストやアイドルに影響をあたえてきたTABLO(タブロ)。彼が辿ってきた“音楽”との道、そして、思い描くこれからの世界とは。</p><p>など、R&B、ヒップホップ界を彩るスターたちもまたカナダ出身であることに気づき、彼らも“悲しみ”と深く対話する詩の世界観を持っている。 「 彼らはトロント出身で、彼らが出てくるまではトロント出身でここまで世界的に有名はアーティストは存在しなかったように思います。トロントって、いつも天気が悪くて鬱っぽい感じなんです。悲しい、って気持ちが似合う街というか。だから、そこで育った彼らも少なからず影響を受けて、内面の悲しみに躊躇なく向き合っている。そのようにも捉えられますね。実際はどうかわかりませんが 」。なんだかそれには納得がいく。彼らが登場する以前は50セントなど、強い男性像がメインだった。「 カニエ・ウェスト が『The College Dropout』(2004)をリリースしましたが、彼のこのアルバムこそ、自らの内面に実直に向き合う内容でした。ドレイクはカニエの今作から影響を受けたと語っています。男性優越的な流れから、今は内省的なものに共感が集まるようになってきましたが、それは時代が求めているものなのかもしれませんね 」。カニエの初期作のように、彼が在籍するユニット、EPIK HIGHの作品もエターナルで温かい何かが流れている。何度聴き直しても、新しい発見があるのだ。まだTABLO未体験の人がいれば、ぜひ、最新作の『Epik High is There 下、Pt.2』をアップルミュージックで検索して欲しい。ジャジーなトラックと素直な言い訳やピュアな思想が、滑らかなフロウと共に紡がれていく。記念すべき10枚目に相応しい集大成だ。 最新作『Epik High is There 下、Pt.2』のアートワーク。 そして、今回の詩集『BLONOTE』。これは、TABLOが自身のラジオ番組「TABLOと夢見るラジオ」で彼が読み上げたメッセージをまとめた一冊だ。「 小さい頃は小説家が夢でした。小学校の高学年の頃はシナリオを書いて、 を撮りたいと夢を見ていました。大学生の頃は映画の助監督をしていました。元々、詩が好きでしたが、世の中においてそこまで大きな力を持っていないことに気づいて。私は、人に共感をしてもらって、“言葉”は初めて価値を生むものだと思っています。ひとりで好きな文章な詩を書いて満足していても、しかたない。文学は人の心を動かすために存在する。そこで、ラップも同じく詩であることに気づき、しかも、自ら読み上げることができる。詩を知らない人にも届けることができると知り、音楽の世界に入りました。こんなに長く続けるとは思ってなかったのですが 」。そう最後に語ってくれたTABLOの言葉を聞き、すべての夢が叶っているように思えた。一瞬、数秒ではあるが小説の中の主人公になれるような錯覚になる。そして、映画のワンシーンを切り取ったかのようなエモーショナルな場面にも身を置くことができる。 一見隙間だらけの、数行のメッセージ。それらを眺めていくと記憶がフラッシュバックしたり、隠していた自分の気持ちが急に表へ飛び出してきたりする。「 」と実直に語るTABLOにしかできない、美しさに満ちたメッセージ集を読まないわけにはいかないだろう。等身大である上での“自己肯定スパイス”としても役立つはずだ。そして今日の僕のお気に入りをひとつ。 「</p>