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中古車の平均取引価格が初の100万円超え!! ウクライナ情勢の影響を受けて高水準が続くのか?

 スカイラインGT-R、AE86トレノ、80スープラ、FD3Sとネオクラシックカーの中古車価格の高騰はいつまで続くのやら……と思っていたら、最近は110系マークIIやアルテッツァそしてBE系レガシィB4まで値上がりしてきた。

 ブームは何れ去るものと静観していたが永遠に値下がりしないような気になってくる。

 そしてついに、中古車市場全体の相場が空前の高値になってきた。これは大手中古車オートオークション会社の統計からだが、中古車の平均落札価格の集計を始めた1999年4月以降で初めて100万円を突破し、100万6000円となった。

 値上がりの原因は諸事情あるが、なぜか軽自動車の相場上昇が目立つ。そこも含めて、今回の値上がりの事情とこれからの中古車相場はどうなっていくのか考察してみる。

文/萩原文博、写真/ホンダ、トヨタ、日産、三菱、スズキ、ダイハツ、AdobeStock(トビラ:xiaosan @AdobeStock)

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■新車の納期遅延とウクライナ情勢の緊迫化が及ぼす影響

 中古車オートオークション大手のUSSによると、2022年2月の中古車の平均落札価格は1年9カ月連続で前年の同じ月を上回り、集計を始めた1999年4月以降100万円を突破し、100万6000円となった。

 この中古車相場の値上がりの原因はコロナウイルス感染症拡大により、不特定多数の人との接触を避けて、クルマで移動する人が増えたこと。そして世界的な半導体不足によって新車の納期が遅延していることが考えられる。

 さらに追い打ちをかけるようにウクライナ情勢が緊迫しており、今後中古車相場がどのような動きになるのか予想してみた。

■オートオークションの需要と供給で中古車市場の価格は決定する

 ご存じのとおり、新車には車両本体価格という定価が存在する。しかし、中古車の場合、同じ車種、年式、走行距離のクルマが存在しても、前オーナーの使い方やメンテナンスの頻度、コンディションが異なるということで、定価は存在しない。

 現在、中古車相場を決めるのはオートオークションと呼ばれる、「セリ」によって標準価格が決まる。こういったシステムによって価格が決まるので、中古車は「人気」という要素が価格に与える影響が非常に大きいのが特徴だ。

オートオークションに参加できるのは基本、中古自動車販売業者で、古物商許可証取得から1年以上経過していることや、常設の展示場・事務所を保有していることなどの入会条件がある(xiaosan@AdobeStock)

 例えば、国産Lサイズミニバンで言えば、圧倒的な人気車はトヨタアルファードだ。新車時価格はほぼ同じ日産エルグランドは人気薄となり、中古車相場は割安となる。これはアルファードを欲しい! という人、すなわち需要に対して市場に流通する中古車の台数である供給量が少ないため、価格が高くなるのだ。

 オートオークションはこの需要と供給のバランスによって価格が顕著に表れる。昨今、中古車のなかでも値上がり幅が大きな日産R34型スカイラインのように、すでに生産終了していると、供給量がグンと増えることはほとんどない。それに対して欲しい! という人はたくさんいるので、新車時価格を超えるプレミアム価格となってしまうのだ。

■新車の納期遅延も中古車相場値上がりの要因

 大手のオートオークションで2022年2月の中古車の平均落札価格が100万6000円となり、なかでも軽自動車の価格が上昇しているということがニュースになった。

 オートオークションに出品したり、競り落としたりしている知り合いの中古車販売スタッフに話を聞くと、全体的に人気車の新車に近いコンディションのクルマや未使用車は新車の納期遅延で納車前に現在所有しているクルマの車検が切れてしまうというユーザーによって取り合いとなってプレミアム価格となっているそうだ。

 つまり、今回の平均落札価格の上昇の要因のひとつは、もともと価格の高い高年式の中古車が大量に市場に出回り、しかも車検を迎えてクルマの買い換えを考えていた多くのユーザーが、新車の納期に耐えられず、未使用車や高年式車に手を出したことで人気が上昇し、落札価格が上昇したと考えるのが妥当だろう。

■なぜか多い軽自動車の新古車が中古車価格を押し上げる

 値上がりが目立つのが軽自動車というのは、登録車に比べて軽自動車のほうが大量に高年式、低走行距離の未使用中古車が多いからだ。

 例えば、軽自動車販売台数ナンバーワンを続けているホンダN-BOX。2017年に登場した現行2代目モデルの中古車は約9300台流通しているが、2021~2022年式、走行距離500km以下という中古車は約2700台流通している。実に現行型N-BOXの中古車の約29%にのぼっているのだ。

日本で一番新車が売れているN-BOX。中古車の平均価格が3カ月前の2021年12月の122万円から現在は131万円へと9万円の値上りを記録。これも新古車増加の影響か?

 同様にN-BOXと同じ軽スーパーハイトワゴンのスズキスペーシアでは、2021~2022年式、走行距離500km以下という中古車は約1720台流通していて、現行型スペーシアの約40%。ダイハツタントでは約1020台流通していて、約34.5%が未使用中古車となっているのだ。

 これだけ見ても、現行型の軽自動車は未使用中古車が多く流通していることがわかる。こうした価格の高いモデルが多く市場に流入すれば価格が上昇するのは当然のことだ。

■ロシアへの中古車の禁輸で取引価格が下がる??

 加えて、この取引価格の上昇はウクライナ情勢の緊張によって、ロシアへの輸出がストップしたために、中古車の取引価格が下がり始めたという記事を目にした。

 このことも、知り合いの中古車販売店スタッフに聞くと、そんな単純なことではないと話す。日本の中古車ビジネスはグローバル化が進んでいて、世界各地へさまざまな中古車が輸出されており、多くの利益を上げている中古車販売店はこの海外輸出に力を入れているという。ちなみに、ロシアはアクアやプリウスといったハイブリッド車やレクサスLXといった高級SUVが非常に人気だという。

 それらの直近3カ月の中古車の平均価格の推移を調べてみると、中古アクアの平均価格は2022年1月の時点で約90万円、現在は約95万円で値上がっている。中古プリウスの平均価格は約130万円から約134万円へと値上がり。そして、レクサスLXは約1010万円から約990万円へと逆に値落ちしている。

 こうして見ると、ロシアで人気の高いモデルはそれほど値落ちに転じているわけではないことがわかる。別の事情通に聞くと、ロシアへ直接輸出することはできなくなるかもしれないが、ドバイなどを経由して輸出されるので、ほとんど影響がないのではないかと話してくれた。

ウクライナの情勢緊張によって国産車だけでなく、輸入車の部品供給が厳しくなるとも言われているので、中古車の落札価格はしばらくの間、高値で安定すると考えたほうがいいだろう。

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