4月22日に、価格等の詳細が発表され、ついにデビューを間近に控えたbZ4X。新時代を切り開くバッテリーEV(BEV)であるが、その販売方法は全数リース(個人販売はKINTO)という異例なものだった。
期待のBEV、bZ4Xは5月12日に発売される。KINTOの仕組みや、販売店へ与える影響を、bZ4Xがデリバリー開始となる今、考えていきたい。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、奥隅圭之
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■KINTOとは一体何なのか
クルマの買い方には、様々な方法がある。現金一括払いやローンを組むという方法は、ユーザー自身がクルマを買い切るものだ。これとは違い、クルマを「借りる」状況に近いのがリース販売である。
借りるという意味では、ほぼ同意のリースとレンタル。レンタカーなど、個人ユーザーになじみがあるのはレンタルだが、リースとレンタルの差は、どこにあるのだろうか。
レンタルは、貸し手が所有する物件の中から、ユーザーが借り受ける行為を指す。例えばレンタカーなどは、レンタカー会社が保有するクルマの中から、希望の条件に合うクルマを貸し出してもらう契約だ。
対してリースは、借り手が希望する物件を、リース会社が購入し、その後ユーザーへ貸し出す。一般的にはレンタルよりも期間が長く、所有権はリース会社にあるものの、買い切りのクルマと同じように登録されるため、ナンバープレートはレンタカー専用の「わ」や「れ」の平仮名にはならない。
KINTOは、このリース契約を軸にし、クルマにかかる諸経費(税金・保険・メンテナンス費用)を、月額の利用料に含めて平準化した、サブスクリプションサービスだ。
bZ4Xでは、未知数の電池性能や下取り価格に対するユーザーリスクを最小限に抑えるため、個人販売はKINTOに限定されることが発表された。初の本格BEV専用車を、一定期間経過後に、BEVを検査や再評価するため、リース契約で車両回収を円滑に進めたいというメーカーの意向も見て取れる。
ユーザーファーストの良い対応にも見えるが、この方式で全国のトヨタ販売店は大きな苦労をすることになると予想できるのだ。
■販売店利益はほとんどない? リース販売の裏側
各ディーラーは、メーカーから車両を購入し、ユーザーへ販売する。メーカーからの仕入れ価格に、販売店マージン(利益)を乗せた金額が、車両本体価格として設定され、1割~2割程度の新車販売利益を得ているのだ。(利益は車種、販売店によって異なる。)
この利益体系が、リース販売では大きく異なってくる。
一般に10%以上あると言われる新車利益だが、リース契約の場合にはディーラーの利益が数%まで下がるのだ。リースはユーザーからの値引き交渉に加えて、リース会社による値引き要請などがあり、ディーラーにとっては、あまりありがたくない販売方法なのである。
■旨みが無く、面倒な管理とメンテを押し付けられた、トヨタディーラーの今後は
今回bZ4Xに適用されるKINTOでは、車両の購入をリース会社(つまりメーカー)が行うため、メーカーからディーラー、ディーラーからユーザーへクルマが受け渡される際の、ディーラーマージンはほとんど無いと考えていい。(同時にユーザーへの値引きという概念もない。)
月額使用料の払込を受けるのもメーカー(KINTO)である。ディーラーの利益は、メンテナンスの際に発生する料金を、リース会社であるKINTOへ請求する程度となるだろう。
bZ4Xの車両本体金額はFWD車で600万円だ。一般的な販売方法であれば、台当たり100万円弱の販売店利益が発生する可能性があった。しかし、KINTO専用販売となることで、ディーラーの利益は、ほぼゼロに等しくなっている。
利益がほぼ無いというだけならいいが、ユーザーとKINTOが契約した後の、車両登録業務・納車・使用中のメンテナンスや管理などは、指定された販売店が全て行う。この点は、現金やローン購入の場合と同じであり、販売店(特に営業マン)への負担は増えるばかりだ。
bZ4Xが売れていき、ユーザーから希望販売店に選ばれれば選ばれるほど、仕事は増えるが利益は上がらないという矛盾を抱える。
メーカーにとっては、クルマが売れて、さらに確実な回収ができるという良いスキームだが、そのしわ寄せが、全て販売店に来ているように思うのは私だけだろうか。
bZ4XのKINTO契約に関しては、ユーザーから指定された販売店に対して「手当て」(販売店マージン)のようなものを支給して欲しい。さもなければ、今の厳しい販売店経営に、KINTOとbZ4Xが追い打ちをかけることにもなりかねない。
KINTOのような買い方の必要性は、今後大きくなっていくはずだ。だからこそ、メーカー・ユーザー・販売店が、それぞれWIN×WINの関係性でいられる仕組みでなければならない。KINTOの表向きではなく、裏側の仕組みづくりを、早急に進めてほしいと切に願う。
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