トラック・バス用タイヤのトラブルはさまざまです。偏摩耗、段減り、ハンドルのブレ、早期摩耗、ひび割れ、バースト、パンク……。特にパンクはドライバーにとっても悩みどころの上位かと思います。
パンクは修理できるかと思いきや、修理不可で新品やスペアとの交換になったということありませんか? パンクは修理できるもの、できないものがあります。その判断基準をプロタイヤマンのハマダユキオ氏に解説してもらいました。
文・写真/ハマダユキオ
※2022年3月発行「フルロード」第44号より
■パンクで修理不可のケースは?
交換したばかりのタイヤでも異物を踏み抜き、風穴が開いた瞬間からパンクは起きてしまいます。早期発見できれば修理の可能性は高くなりますが、それでもNGの場合もございます。それはパンクの場所や穴の状態によるんですね。
パンクで一番多いのはトレッド(地面と接地する部分)で、修理可能の場合が多いです。
いっぽうタイヤの横、サイドウォールはたとえピンホールのような小さな穴でも修理不可です。パンク修理はタイヤの内側から絆創膏のようなパッチを貼るのですが、サイドウォールはタイヤの中でも動きが大きく、繰り返し屈曲されるのでパッチが剥がれてしまうんですね。
ただ、トレッド部分でも角付近はダメなこともあります。これはタイヤサイド部分と同じ理由で、タイヤのたわみによる屈曲運動で貼り付けたパッチが剥がれる可能性が高くなるため。またトレッド面の端は表面(外側)から見ると平面に近いのですが、内面は曲面になっており、貼り付けたパッチが反り返る状態になってしまいます。
また、貫通した穴の大きさと状態も重要です。例えトレッド部分の真ん中であっても、穴の直径が約10mm以上は厳しくなります(修理部材の限界も10mmくらいです)。理由はタイヤ自体の強度が下がるため。
タイヤの内部には筋繊維のようなワイヤーが入っており、これがタイヤを形成しております。大きな異物がタイヤを貫通した場合、その部分のワイヤーは切れています。これが小さい場合は問題はないのですが、異物を取り除いたときに光が差し込むくらい大きな穴ですと、ワイヤーの切れ方も大きく、パッチの補強ではまかないきれなくなります。
トレッド部分の、釘やボルトによる10mm以下のパンクは修復できる可能性が高いですが、踏み抜いた異物が鋭利な物だと穴ではなく切ったような傷となり、修理を施しても充填した内圧や走行による外力で切り傷から裂け傷に発展する可能性が高く危険です。
■低内圧走行によるパンクも修理不可
いっぽう、こちらも「パンク修理不可」ランキングで上位につけているのが、低内圧走行によるタイヤの引きずりです。
タイヤに充填した空気圧で車重を支えているワケですから、空気圧が下がれば当然車重を支えられなくなります。その結果タイヤは車重に潰されます。
タイヤが潰れた状態で走行した場合、最も負担が掛かるのはタイヤのサイド部分です。トラック・バス用タイヤでは、タイヤのサイド部分には「カーカス」というコード状の部材が入っており、ここに負担が掛かってしまいます。
このコードは車重等を支えるというより、大型車用タイヤの高い空気圧に耐えるためのモノですね。単純に空気圧を上げていけば耐荷重も上がりますが、それに耐えられる構造や部材でなくてはなりません。
トラック用タイヤは1000kPaの空気を充填してもバーストすることはありません(もちろんタイヤのコンディションによります。新品、新品同等、傷無し等の場合)。
これはカーカスコードによる高い空気圧に耐えられる強靭な内部構造のおかげです。しかし、低内圧走行によるイレギュラーな入力はコードに過度な疲労を与え、タイヤを自滅へと導いてしまいます。
低内圧で走行することを「引きずり」といい、引きずりによるダメージの痕跡を「引きずり痕」と呼んでいます。
この引きずり痕はタイヤの内面に現れますが、場合によっては外面にも「しわ」として現れます。ヒビとは違い、円周方向にうねった紋様が入ります。
規定圧からエア補充程度の内圧低下ならば引きずり痕が入ることはありませんが、空車にも関わらず、タイヤサイドがたわんで見えるくらいの低内圧で走行した場合、引きずり痕が見られることが多いです。
特に外面にしわが形成されるくらいの外力が掛かっている場合は内部のコードの損傷が大きく、パンク修理不可となるだけでなく、エア充填時にもバーストに至る危険性があります。
空気圧は新品組み付け時から廃棄するまで同じままってことはありません。これは自然漏れというもので、空気がゴムを貫通してしまうため、内圧が下がるのです。
タイヤメンテナンスで重要なのはエア圧の管理とローテーションです。タイヤは定期的にかまってあげないとスネて取り返しのつかない事態になる「かまってちゃん」ということをお忘れなく!
投稿 修理できる・できないの判断基準は!? プロタイヤマンがパンク修理の可否を教えます は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。