ロシアによるウクライナ侵略後、東京・JR恵比寿駅ではロシア語表記の案内板に対して「不快だ」とのクレームが寄せられ、JR東日本は7日から15日まで表示を紙で覆い隠し、「調整中」とした。ツイッターを中心にJRの対応について批判の声があがり、15日に表示は元に戻された。
愛国団体「一水会」はこの件について、「そもそも、在日ウクライナ人だって利用時にはキリル文字を頼りにするはずだ。大東亜戦争期にあっても、海軍兵学校では『敵性言語』である英語教育が存続された。どうも世の中おかしい」とツイート。
利用者の快・不快でロシア語を公共の場から排除することに、どれほどの正当性があるのか。そもそも、在日ウクライナ人だって利用時にはキリル文字を頼りにするはずだ。大東亜戦争期にあっても、海軍兵学校では「敵性言語」である英語教育が存続された。どうも世の中おかしい。https://t.co/0PpkxfgCRk
— 一水会 (@issuikai_jp) April 14, 2022
一水会代表の木村三浩氏に、話を聞いた。木村氏は
ロシアによる行動がウクライナへの侵略であると2カ月近くにわたって報じ続けられており、ウクライナへの同情とロシアという国家への悪感情を抱いてしまうのは、人間の感情として理解はできます。恵比寿駅のロシア語の看板が「不快だ」と訴えた人は、日本にいる自分は何もできないという悶々とした無力感を感じていたのかもしれない。ウクライナのために何かやってやりたいと思ったのかもしれない。
と言い、JRにクレームを入れた人の心情を慮った。しかし、「ロシア=悪」という理解の仕方は問題だと説いた。
その人は戦争をやめろという自分の感情をうまく整理できなかったのではないか。日本にも多くのロシア人が住んでいるし、ロシア料理店もある。プーチン政権に反対しているロシア人もいる。国家の行為と個人は区別しなくてはいけない。熱狂するのではなく、現実の世界は多様であると冷静に理解することが出来れば良いでしょう。色々な情報を相対化することが重要です。
ロシアに関するものを排除したからといって、問題が解決するとは思えない。こんな事例をもあったと言う。
銀座にあるロシア食品専門店「赤の広場」では、看板が壊されてしまった。ところが、その店の経営者はウクライナ人だったんです。
二項対立的な発想を避けることが、単純化せずに物事を捉えるポイントだという。
学校や病院の建物が攻撃されることもありますが、戦時下ではウクライナ側はそうした建物を軍が使い、陣を張ることもあるわけです。そうした多様な背景を知ることで視野が広がり、極論を遠ざけることができる。メディアの責任も大きいと思います。
ロシア語看板の撤去を行う際、JR東日本の担当者たちは、疑問を抱かなかったのだろうか。ロシアによる侵攻は今なお続いているが、冷静に捉えていきたいものである。