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 内燃機関を動力源とするクルマの周辺が何かと騒がしい現在。世界中でカーボンニュートラルに向けて一直線となっているが、今年9月から新たに始まる規制に俄かに注目が集まっている。それがクルマの騒音規制である「フェーズ2」だ。

 GT-RやGRヤリス、GRスープラをはじめ、今年デビューを予定している新型フェアレディZに新型シビックタイプRなどもかかわってくるとか、こないとか。これはクルマ好きとして聞き捨てならない問題。そこで、国沢光宏氏がフェーズ2、そしてその先に控えるフェーズ3について詳しく解説する!!

文/国沢光宏写真/ベストカー編集部、日産、ホンダ、マツダ

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■ガソリン車の絶版が続々と……!?

今年、伝統のFRセダンから新たに生まれ変わるとされるクラウン。現行型15代目モデルをもってしてFRサルーンとしての歴史は幕を降ろすことに

 今年の9月1日から販売継続車にも騒音規制、「フェーズ2」が適用になるため、GT-Rをはじめフーガやクラウンなど多数のモデルで絶版を余儀なくされる。今後も規制の強化により販売できなくなる車種はたくさん出てくることだろう。

 そして、次なる厳しいハードルになるのが騒音規制、「フェーズ3」。欧州で販売される車種については「ユーロ7」という手強い規制も! 以下紹介したい。

 まず、フェーズ3だけれど、最終的な数値は決まっておらず。当然ながら厳しいフェーズ2より一段とシビアな目標レベルになること間違いなく、事実上ガソリン車じゃ無理だと言われている。2024年秋の新型車から発効され、継続販売車も2026年秋に適用される予定。おそらく現在販売されている純ガソリン車はこの時点で絶版を余儀なくされると考えていい。

 理由は簡単。アクセル全開加速時の騒音をチェックするためだ。加速しようとすればパワーが必要。エンジンに大きい負荷をかけたら、燃焼時のエネルギーが大きくなるため騒音レベルだって上がる。ということで現在販売しているGRヤリスやGR86/BRZ、GRスープラ、そして間もなく発売となる新型フェアレディZや新型シビックタイプRも2026年秋をもって終売になると思っていい。

■具体的なフェーズ3の数値については未定も……

現行R35GT-Rの積むVR38DETTエンジン。純エンジン車はユーロ7では2025年には販売禁止となるというのだが……

 なかには「フェーズ3の数値は決まっていない。もっといえば内容の検討も中止しており、施行されない可能性だってあるらしい」みたいなことを言う人もいる。確かにフェーズ3の数値についていえば未発表ながら、こういった規則を作るのは欧州です。我が国は決められたものを守るだけ。そんな欧州を見ると、とっとと純エンジン車に見切りを付けてしまっている。

 その典型がユーロ7だ。ユーロ7も具体的な数値はもちろん、施行時期まで決まっていない。ただ大雑把な内容と2025年という時期は業界で共有されており、必ず施行されると言われている。ユーロ7の内容を見ると、これまた「純エンジン車の禁止」と同意。具体的に書くと、「どんな時でも排気ガスは大気よりクリーンなこと」(二酸化炭素を除く)というもの。

 現在施行されている最も厳しい規制はユーロ6。モード燃費で走っているかぎり、排気ガスは大気レベルとなっている。しかし、モード燃費に含まれないアクセル全開時の加速や、モーターホームなどけん引して登り坂を走る時、極寒時の冷間始動といったエンジンにとって厳しい条件では人体に有害な汚い排気ガスを出してもいい。だからマフラーの内側を触るとベッタリ黒いススが付く。

■純エンジン車を買うのなら猶予はあと4年!?

これから発売される予定の純エンジン車、Z35型新型フェアレディZも早い購入が吉か?

 ユーロ7の内容を見ると全開で走っても有害な排気ガスやススを出してちゃダメ。これを純エンジン車で実現するのは不可能だと言われている。つまり、ほぼ同じ時期に施行される騒音規制と排気ガス規制をクリアしようとした場合、純エンジン車を諦めなければならないワケ。そもそも欧州は二酸化炭素排出規制のため2030年あたりからエンジン搭載車の販売を禁止することを決めている。

 そうなるとユーロ7は関係なし。電気自動車になるとフェーズ3も問題ないため、施行時期や数字の詳細決定に熱心じゃなくなっているのだった。逆に考えたら、ユーロ7もフェーズ3も気軽に施行します。2026年秋には数値をクリアしていない既販車の販売中止は当たり前のように行われると考えてよかろう。純エンジン車を買うのなら、あと4年ということになる。

 一方、純エンジン車は、ガソリンを販売している2049年12月31日まで乗れる。2026年に買って23年間楽しめると言うこと。当然ながら人気出ること間違いなし! 中古車相場だって上がること必至! もし10年くらい所有するつもりでいるなら、GRヤリスや新型フェアレディZに代表される絶版確実の純エンジン車を早い時期に購入しておくことを薦めたい。

■自動車メーカーは諦めてませんよ!!

マツダFRラージ戦略モデル第1弾、CX-60。アクセル全開での走りは国沢氏をしてパワー的には満足できるものだったという

 さて。フェーズ3やユーロ7が施行されたらエンジン搭載車は販売できなくなるかとなれば、そうでもなさそう。正直に書くと私も1カ月前まで「エンジン搭載車を販売できなくなる」と思っていたが、どうやら日本の自動車メーカーは諦めていないようだ。先日、新しいエンジンを搭載するシビックのハイブリッド(e:HEV)が発表された。聞けばユーロ7を視野に入れているそうな。

 はたまたCX-60のPHVとディーゼルのマイルドハイブリッドもユーロ7のクリアを目指しているようだ。そのほか、トヨタはハイブリッドとPHVで、日産もe-POWERの進化バージョンを開発しており、ユーロ7のクリアを目指すという。これらのクルマは全域で有害な排気ガスを出さず、むしろ都市部の大気ならマフラーから出るガスのほうが汚染物質は少なくなる。

 同時にアクセル全開時はモーターパワーで補うから燃焼エネルギーも小さくなり、騒音レベルを引き下げる。フェーズ3の対応が見えてくるということです。CX-60を全開で走らせるとパワー的には満足できるし、スポーティ。シビックのハイブリッドだって元気いい! 新しい世代のパワーユニットを搭載すれば、エンジンで走るスポーツモデルだって作れそうな気がしてきた。

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投稿 今年秋から始まる「フェーズ2」を迎え、今がラストチャンスか!? クルマ好きが内燃機関の現行国産スポーツモデルを今買うべき理由自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。