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平成の遺物? 麻薬的魅力?? クルマ好きが忘れられない「ドッカンターボ」な名車3選

 1979年に登場した日産セドリック/グロリアに初搭載された“ターボエンジン”。過給器のターボチャージャーを装着し、排気ガスを利用してタービンを回すことにより、空気を圧縮して体積あたりの酸素量を増やして、より燃料を燃焼させてエンジン出力を増大させるシステムだ。

 1980年代、つまり昭和のターボエンジンは、パワー向上させるメリットがある反面、一旦エンジン回転数を下げてしまうと、アクセルを踏んでもターボが効果を発揮するまで時間が掛かる「ターボラグ」という現象が発生した。

 この「ターボラグ」が原因で、エンジン回転が再び回り突然パワーが発生することを「ドッカンターボ」と名付けたのだ。このドッカンターボは昭和のクルマだけでなく、平成に入ってからも存在した。

 ここでは、平成に登場したクルマの中からドッカンターボの名車3選をピックアップし、まだ中古車で手に入れられるかどうかも紹介する。

文/萩原文博、写真/日産自動車、三菱自動車工業

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スパルタンな走りが特徴のパルサーGTI-R

平成の遺物? 麻薬的魅力?? クルマ好きが忘れられない「ドッカンターボ」な名車3選
日産パルサーGTI-Rのフロントスタイル

 平成のドッカンターボとして、まずピックアップするのは1990年に登場した日産パルサーGTI-R。パルサーGTI-R は、N14 型パルサーのハイパフォーマンスモデルとして、年産5,000 台以上の量産車で戦われる「グループA」規定での世界ラリー選手権(WRC)への参戦を織り込んで開発されたモデルだ。

 全長3,975mm×全幅1,690mm×全高1,400mmという5ナンバーサイズのボディに最高出力230ps、最大トルク284Nmを発生するSR20DET型2L直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載。エンジン上部に大型インタークーラーを収めて、ボンネットには巨大なフードバルジがハイパフォーマンスモデルの象徴と言える。

 駆動方式はFF(前輪駆動)をベースとした電子制御4WDシステム「アテーサ」を採用。4WDの駆動方式を採用していたものの、コンパクトなボディにハイパワーエンジンを搭載しており、その走りはスパルタンそのものだった。

 1991年からWRCに日産ワークスとして参戦したものの、最高位は翌92 年のスウェディッシュラリーの総合3 位。残念ながら、熟成を待たずにこのシーズンで撤退し、たった2 年の活動に終わった悲劇のマシンと言える。

 現在、パルサーGTI-Rの中古車はわずか1台だけが流通していて、価格応談となっている。かつては手頃な価格で買えるホットハッチだったが、もう手が届かない存在となってしまった。

チューニングすると、ドッカンターボに拍車が掛かるR32型スカイラインGT-R

平成の遺物? 麻薬的魅力?? クルマ好きが忘れられない「ドッカンターボ」な名車3選
R32型スカイラインGT-Rのフロントスタイル

 続いて平成のドッカンターボとして紹介するのは、同じく日産のR32型スカイラインGT-R。1989年8月に16 年ぶりの復活となったスカイラインGT-Rは最高出力280ps、最大トルク353Nmを発生するRB26DETT型2.6L直列6気筒DOHCツインターボエンジンを搭載している。

 駆動方式には、ハイパワーなエンジンを余すことなく使うため、FR ベースながら路面状況に応じた高度な電子制御で前後輪に自在に駆動力を配分する電子制御 トルクスプリット4WD システム「アテーサE-TS」を採用。

 2.6L直列6気筒DOHCツインターボエンジンはノーマルの状態でも、低回転域のパワーが物足りないが、マフラーなどを交換するとさらに、低回転域のパワーがスカスカとなり、相当なドッカンターボなエンジンとなる。

 それでも従来のドッカンターボと違うのは、シャシー性能の高さの賜だ。筆者が所有していたR32スカイラインGT-RはマフラーやCPUそしてクラッチを交換していたが、信号のスタートダッシュではターボが効くまでかなりのタイムラグがあったことを覚えている。

 現在、R32型スカイラインGT-Rの中古車は約61台流通していて、平均価格は約641万円。中古車の価格帯は約465万〜約1,599万円で、高止まりしている。

ランエボも初期モデルはじゃじゃ馬のような扱いにくいクルマだった

平成の遺物? 麻薬的魅力?? クルマ好きが忘れられない「ドッカンターボ」な名車3選
ランサーエボリューションIのフロントスタイル

そして平成のドッカンターボ車として最後に紹介するのは三菱ランサーエボリューション。2016年にエボリューションX(10)の生産が終了し、ランサーエボリューションだが、記念すべき初代ランサーエボリューションは1992年に登場した。

 三菱は当時ギャランVR-4でWRC(世界ラリー選手権)に参戦していたが、苦戦していた。そのギャランVR-4に代わってWRC参戦車として開発されたのがランサーエボリューションだ。

 全長4,310mm×全幅1,695mm×全高1,395mmというコンパクトなボディに、ギャランVR-4からさらにチーニングを施した最高出力250ps、最大トルク31.5kg-mを発生する4G63型2L直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載した。

 軽量化や耐久性の向上を図るとともに、ピストン、コンロッドの軽量化、ピストンリングのフリクションの低減によりレスポンスの向上と高回転までスムーズに回るエンジンへとチューニングされた。

 しかし、実際に乗ってみると最大トルクと発生する3,500回転以下のパワーが足りず、相当なドッカンターボだった。

 このランサーエボリューションIからエンジンやシャシーは進化を遂げて、WRCをはじめとしたラリーシーンで輝かしい成績の残した。また、公道でも同じ2Lターボエンジンを搭載したスバルインプレッサWRXとともに高い走行性能を発揮し、上級車を手玉に取った。

 現在、ランサーエボリューションIの中古車はわずか1台しか流通しておらず、価格帯は約297万円。エボI〜エボIIIまでの第一世代のランサーエボリューションは約7台となり、平均価格は約281万円。価格帯は約179万〜約378万円となっている。

 こういったドッカンターボは扱いにくいのだが、これを乗りこなすことで、ドライバーは自分のスキルが高くなったという感覚を得られたのである。

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