<p>サイバーパンクの古典からディストピア作品まで、この夏に読むべき23のSF小説</p><p>サイバーパンクの古典からディストピア作品まで、読むべき23のSF小説(アーカイブ記事)</p><p>古典から現代、サイバーパンクからスペースオペラ、ディストピアを描いた作品まで──。『WIRED』UK版が薦める選りすぐりのSF小説を紹介しよう。</p><p>(オクティヴィア・E・バトラー著、1979年、邦訳:山口書店) オクティヴィア・E・バトラーの『キンドレッド―きずなの招喚』が出版されたのは40年以上前になるが、わたしたちすべてにとって、いまも役に立つ教えや学びが含まれている。主人公はアフリカ系米国人である作家のディナ。1979年のロサンジェルスから、南北戦争前の南部にタイムスリップしては、自分の先祖であり奴隷を所有する白人の窮地を繰り返し救うことになる。 彼女は現代における自分のアイデンティティを失わないよう努めながら、奴隷制度を生き抜くという恐ろしい現実に立ち向かわなければならない。ふとした弾みで、白人である夫とともにタイムスリップしたことにより、事態はさらに複雑になってしまう。権力、人種、不平等といった大きなテーマを掘り下げていくこの小説で、バトラーが描く現代の世界は容赦ない。1979年の現代と南北戦争前の時代を対比させることにより、複雑で屈辱的な奴隷制度の現実について、別の見方が示される。 『キンドレッド』を読む人は、奴隷制度の感情的なインパクトに引き込まれる。それは残念ながら、この問題についていま教えられていることのあまりにも多くにおいて、失われがちなものだ。 (マーガレット・キャヴェンディッシュ著、1666年、邦訳:岩波書店) 英国の貴族マーガレット・キャヴェンディッシュが1666年に出版したこの小説は、初のSF小説と言ってもいいだろう。言葉遣いは時代遅れかもしれない。だが想像力に溢れ、恐れを知らないフェミニスト的なこの物語は、当時としては信じられないほど勇敢であるだけでなく、いまだにとてつもなくシャープだ。現代英国のファンタジー作家チャイナ・ミエヴィルやアラン・ムーアなどの作家たちにインスピレーションを与えたとされている。 キャヴェンディッシュによるこのユートピア物語は、人さらいに遭った女性の冒険を描いたものだ。彼女は別の世界にたどり着くのだが、そこを支配するのはキツネ人間やサカナ人間、ガチョウ人間など、一部が人間で一部が動物の生物たちである。この女性はとても美しかったことから、やがてこの世界の女帝となり、空から降らせる「火石(firestones)」などの武器を備えた軍隊を組織して、自分が最初にいた世界への強力な侵入に立ち向かう。(Amazonでの</p>