2021年、プロ野球界では“平成の怪物”こと松坂大輔投手が引退。そして2022年4月10日に“令和の怪物”千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手がプロ野球史上16人目となる完全試合を達成した。
プロ野球界に限らず、競走馬でも芦毛の怪物と言えばオグリキャップやゴールドシップいなどがいる。いずれも怪物と呼ばれるのは“規格外”というイメージが強い。
そこで、今回は52歳の筆者がこれまでハンドルを握ったクルマの中から、昭和、平成、令和の怪物クルマを各1台ずつピックアップ。さらにその各世代怪物クルマの最新の中古車相場も紹介する。
文/萩原文博、写真/トヨタ自動車、マツダ、萩原文博
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初代ソアラの走行性能や先進性は当時まさに規格外!
筆者が免許証を取得したのは、昭和63年12月のこと。もう平成に変わるまで1カ月を切ったタイミング。したがって“昭和の怪物”を運転したのは平成になってから。
その自分にとって“昭和の怪物”に相応しいクルマは、1981年に登場した初代トヨタソアラだ。まだ、中古車媒体の編集部に属していた当時、バリモノの初代ソアラ2.8GTが編集部の社用車としてやってきた。
どれくらいバリモノかというと、納屋で保管されていたクルマで、下回りにほとんど汚れがない状況。装着されていたタイヤは、さすがにひび割れしていたが新車時に装着された純正タイヤの溝が残った状態だった。
タイヤ、ショックアブソーバー、マウント類を交換すると、製造されてから15年以上経ったクルマとは思えないほどの走行性能を発揮。これがもし新車当時だったらもっとスゴかったのかと震えを覚えたので、自分にとっての“昭和の怪物”は初代トヨタソアラとしたい。
初代ソアラは1981年2月に「今までの技術を超えた最高級スペシャリティカー」をコンセプトに開発されたスーパーグランツーリスモだ。
スーパーグランツーリスモとは「卓越した動力性能および操縦性能と高級サルーンの快適性を合わせ持つGTの中のGT」と定義されている。
品位のある美しさと空力性能を追求した外観デザインのボディには、ソアラのために新開発された5M-G型2.8L直列6気筒エンジンを搭載。最高出力170ps、最大トルク24.0kg-mというハイスペックを誇った。
また、デジタルスピードメーターやグラフ表示式タコメーター、燃料計などを採用したエレクトロニックディスプレイメーターを採用するなど当時の最新技術を満載していた。
初代ソアラには2.8L直6エンジンやエレクトロニックディスプレイメーターなど日本初という新機構や新装備は10項目もあった。速さだけでなく、快適性や環境性能でもこれまでのクルマとは一線を画すポテンシャルを、初代ソアラは持っていたので“昭和の怪物”だ。
現在、初代ソアラの中古車は約16台流通していて、価格帯は約158万~約569万円となっている。
非常に迷った平成の怪物は3ロータリーエンジンのユーノスコスモ
続いては、“平成の怪物”なのだが非常に迷う。R32~34の第2世代スカイラインGT-Rや2007年に登場した日産GT-R。そしてレクサスLF-Aなど様々な名車が勢揃いしているからだ。
しかし、そんな中で強烈なインパクトを与えたクルマということで、“平成の怪物”はユーノスコスモの3ロータリーエンジン搭載車とした。
最近BEVに乗るようになり、モーター特有の圧倒的な低回転域からのスムーズな加速性能を味わうと、この感覚は以前味わったことがあると思っていた。
そうロータリーエンジンの特性をよくモーターのようなフィーリングと書かれることがあるが、まさにユーノスコスモに搭載されていた20B型3ロータリーエンジンに近い感覚なのだ。
3ロータリーエンジンはその圧倒的な速さもさることながら、高速走行すると燃料計が目に見えて減っていくという、自分が所有したR32型GT-Rでも味わえない規格外の現象を目の当たりにすることができた。
今後、3ロータリーエンジンを搭載したクルマなんて販売されることもないだろうということで、“平成の怪物”は3ロータリーエンジンを搭載したユーノスコスモに決定した。
ユーノスコスモは、バブル景気まっただ中の1990年に登場。全長4,815mm×全幅1,795mm×全高1,305mmというサイズの2+2の流麗なクーペだった。
搭載されているエンジンは最高出力280psを発生する20B型3ロータリーシーケンシャルターボと230psを発生する13B型2ロータリーシーケンシャルターボの2種類。
組み合わされるトランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はFR(後輪駆動)となっている。
また、最上級グレードのタイプEにはCCSと呼ばれるGPSカーナビを標準装備したグレードがあったが、当時は利用できる衛星の数が少なかったため、東名高速を走行中にもかかわらず、太平洋を走行しているなんてこともあった。
RX-8以降ロータリーエンジンを搭載した市販車は途絶えており、3ロータリーエンジンを搭載するクルマは2度と発売されることはないので、ユーノスコスモを“平成の怪物”に相応しい。
現在、ユーノスコスモの中古車は約10台流通していて、価格帯は約158万~約358万円。そのうち、20Bエンジン搭載車は約310万~約324万円で、流通台数は約4台となっている。
令和の怪物は公道を走れるレーシングカーのGRヤリス!
そして、令和になってまだ4年しか経っていないが、“令和の怪物”はGRヤリスだ。マスタードライバー モリゾウ氏の「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」という想いのもと、「モータースポーツ用の車両を市販化する」、という逆転の発想で開発されたマシン。
そのパフォーマンスの高さは公道を走れるレーシングカーだ。GRヤリスのことを、コンパクトカーに500万円は払えない。という声を聞くが、公道を走れるレーシングカーなら500万円はバーゲンプライスだ。
GRヤリスとの初コンタクトは筑波山のワインディングだった。最高出力272psを発生する1.6L直列3気筒ターボ+スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”のカップリングは、ほぼ初ドライブに等しいワインディングでも思うがまま攻めることができ、ステアリングを握ってすぐに操る楽しさを味わえる。
このようなクルマはGRヤリスのほか見当たらない。だからGRヤリスは“令和の怪物”に相応しいマシンなのだ。2022年の東京オートサロンではそのGRヤリスをベースにフルチューンモデルであるGRMNヤリスが500台限定で販売された。
ノーマルのGRヤリスでも怪物なのだから、このGRMNヤリスのパフォーマンスの高さは想像も付かないし、もし運転することができたら間違いなくGRMNヤリスを“令和の怪物”としてしまうだろう。
現在、GRヤリスの中古車は約38台流通していて、平均価格は約500万円。価格帯は約259万~約552万円となっている。1.6Lターボエンジンを搭載したモデルの中古車は約370万円からとなっている。
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