<p>“北欧の至宝”、マッツ・ミケルセンの魅力を堪能できる6作品。</p><p>#ファンタスティックビースト のグリンデルバルト役! “北欧の至宝”、マッツ・ミケルセンの魅力を堪能できる6作品。</p><p>ジョニー・デップの降板を受けて、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのゲラート・グリンデルバルト役を引き継ぐことが発表になったマッツ・ミケルセン。“北欧の至宝”の異名で知られる彼の魅力が堪能できる作品を、ハリウッドの大作から自国デンマークなどヨーロッパ映画の秀作まで紹介する。</p><p>』シリーズやヨーロッパでの幅広い活躍によって、映画通の間では早くから高い評価を得ていた。そんな彼の人気をさらにグローバルに広げたのが、TVシリーズ「ハンニバル」(2013~2015)だ。『羊たちの沈黙』(1991)や『ハンニバル』(2001)などで知られる伝説の殺人鬼ハンニバル・レクターの若き日を演じ、表の顔は法医学精神科医、その裏では殺戮と料理に快楽を見出す異様な美食家という顔を持つ、悪の華の魅力を大胆に表現した。 仕立てのいいスーツを美しく着こなし、機知に富む会話を楽しむ紳士が獲物に牙をむく時の豹変ぶりは、狂気とエレガンスの絶妙なコンビネーショだ。殺人を犯しては犠牲者の体の一部を持ち帰り、“食材”を加工する。陶然の表情で包丁を持ち、手際よく調理していくシーンは同シリーズのハイライトの一つとなっており、吹き替えなしでマッツ本人が実際に料理をしている。子どもの頃は器械体操をやり、その後バレエダンサーに転じたマッツは運動神経抜群。かといって、格闘シーンでは超人的な技を繰り出すのではなく、キッチンにあるツールや身の回りのものを駆使して相手を倒す実践的なアクションで、逆に身体能力の高さを印象づけている。 コロナ禍の今年7月には、YouTubeでキャストや製作陣が参加するリモートのリユニオン企画が配信。デイジーの花一輪を髪に差して参加したマッツは、同シリーズが新しいハンニバル像を打ち出したことについて、「私たちは、私たちによるモンスターを作りたかった。あるいは天使だね、私は彼(ハンニバル)をそう呼んでいる」と語った。 『ドクター・ストレンジ』(2016) Photo: Walt Disney Studios Motion Pictures/Everett Collection/amanaimages マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『ドクター・ストレンジ』(2016)では、 が演じる主人公ドクター・ストレンジと対決するヴィラン、カエシリウスを演じた。天才外科医が事故で負傷し、神秘的な修行を積んで魔術を駆使するスーパーヒーロー、ドクター・ストレンジに転身する物語で、カエシリウスは闇の魔術を駆使して世界を破滅に導こうとする魔術師だ。 出演を決めた最大の理由は、少年時代に親しんでいた マーベル 作品だから。そしてスコット・デリクソン監督に「カンフーとかフライングのスタントとかがある」と言われたこと。ブルース・リーの熱狂的なファンでもある彼は、「カンフー? やります!」と即答だったそう。毎日2、3時間かかるメイクをほどこし、日によっては12時間近くかかるアクション・シーンを演じ続けるのは50歳を迎えた身にはなかなかの試練でもあり、「身体的に今までで最もハードな作品だった」と当時語っている。 企画段階では一時、ドクター・ストレンジ役の候補にもなっていたマッツはマーベル作品のキャラクターについて、「ヒーローもヴィランも完ぺきな存在ではなく、どこか欠点があるからこそ興味深く、共感できる」という。また、本作に限らず、演じる役について「好きになる必要はないが、理解することが大切」という持論を展開し、「カエシリウスにはカエシリウスなりの正義がある」と語る。「彼は世界をより良い場所にしたいと考えている。苦しみのない、永遠の命がある世界だ。彼の考えにも一理ある。単純にクレイジーなだけじゃない役を演じるのは面白い」 『007/カジノ・ロワイヤル』(2006) ダニエル・クレイグ がジェームズ・ボンド役に起用された第1作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)で悪役ル・シッフルを演じ、一気にマッツの知名度はアップした。犯罪組織の会計士であるル・シッフルは左目に傷があり、涙腺異常のために血の涙を流す。能面のように感情を見せない男の頬をつたう赤い涙という劇的なイメージで、存在を強く印象づけた。 実は、この大役をマッツはオーディションなしで獲得している。出演が決定する前、プラハで別の作品に出演していて、何度オーディションに呼ばれても参加できず、やっと都合がついて「タキシードを着てオーディション会場に行ったら、『君に決まったから、帰っていい』と言われた」とか。ボンドガール選びに時間をかけ過ぎていたため、ル・シッフル役はマッツにほぼ決まっていたようで、形式的なオーディションなしで合格ということになったらしい。それなのに彼は撮影前に『007』シリーズを1本も見たことがなく、出演作のロンドン・プレミアに参加した際に大挙して集まった観衆やメディアを見て、事の重大さに気づいたそうだ。 本作でボンドとシッフルがカジノでポーカーをしてスリリングな心理戦を繰り広げるシーンは、見どころの一つとなっているが、それに匹敵する強烈な印象を残したのが、シッフルがボンドを拷問するシーン。裸にしたボンドを椅子に縛りつけ、ロープで打ち続ける。冷酷でサディスティックな怪演は、後のハンニバル・レクター役起用へと繋がったはず。絶対に口を割ろうとしないボンドとの会話の攻防も見どころだ。 『偽りなき者』(2012) 『セレブレーション』などで知られるデンマークの名匠、トマス・ヴィンターベア監督と組んで、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した『偽りなき者』(2012)は、悪役ではなく市井の人を演じても見事にハマるマッツの演技力が光る必見作だ。舞台はクリスマス間近のデンマークの小村。住人の誰もが顔見知りのような小さなコミュニティの中で、それまで家族ぐるみで付き合っていた親友の娘の作り話によって、窮地に追い込まれる幼稚園の先生を演じている。 幼女が気まぐれで口にした一言から、変質者の汚名を着せられた主人公は、いくら無実を訴えても聞き入れられず、仕事も奪われ、村八分にされて追い詰められていく。マッツが演じた主人公ルーカスは誠実に仕事に取り組み、かといって品行方正すぎない、普通の中年男性として実にリアルなキャラクター。強烈な悪役を演じる際の外連味を一切取り払ったうえで、5歳児も魅了する愛嬌をしのばせてある。 マッツは若い頃から知り合いだったヴィンターベア監督から脚本を読んでほしいと持ちかけられ、一読してすぐに出演を決めたという。それぞれの言い分が納得できて、誰が悪いのか簡単に決めつけられない内容が気に入ったそう。「悪人はいない。そこにあるのは大いなる愛で、その愛が恐怖を生み、やがてそれが憎悪を引き起こしていく。それがこの作品が本当に描いているものだ」 子どもは嘘をつかないという社会の思い込みから振りかざされる正義によって孤立する主人公は、毅然として無実を訴え続ける。重いドラマは最後に微かな光を見せたかと思うと、再び陰る。集団心理の恐ろしさを炙り出した本作は、アカデミー賞外国語映画賞候補作にもなった。ちなみにヴィンターベア監督の最新作『Another Round(英題)』でも、マッツは主演を務めている。 『シャネル&ストラヴィンスキー』(2009) Photo: Regine Abadia/Sony Pictures Classics/Everett Collection/amanaimages 「春の祭典」「火の鳥」などで知られる作曲家のイゴール・ストラヴィンスキーが、家族とココ・シャネルのパリ郊外の別荘に滞在した1920年の夏を描く『シャネル&ストラヴィンスキー』(2009)。マッツは、ロシア革命勃発で祖国を離れてフランスに流れついたストラヴィンスキーを演じた。1913年、「春の祭典」のバレエ公演が行われたパリで出会ったシャネルとストラヴィンスキーが実際にどんな関係だったかはほとんど明らかにされていない。だが、映画では最愛の人だったアーサー・カペルを事故死で亡くしたばかりのシャネル(アナ・ムグラリス)がストラヴィンスキーと恋に落ちる。 音楽とファッション、それぞれの芸術を通して2人は自分自身と向き合い、恋をすることで互いに影響を与えていく。その頃、シャネルは不朽のフレグランス「No.5」に、ストラヴィンスキーは「春の祭典」の再演に取り組んでいた。才能ある者同士が惹かれ合う物語は、ティーンエイジャーのラブストーリーとは違うとマッツは語る。「彼らは大人同士で、それぞれ違う形で互いに魅力を感じている。そこにドラマがあるのです」 Photo: Regine Abadia/Sony Pictures Classics/Everett Collection/amanaimages またスケジュールの都合で、フランス語にロシア語、ピアノ演奏も短期間に習得した準備期間は忙しなかったが、ストラヴィンスキーの名曲の数々を通してその人間性をつかみ取っていったという。強い意志を持つ女性との恋を情熱的に、プライドが高い反面、傷つきやすい作曲家の二面性を繊細に演じた。監督を務めたヤン・クーネンは『ドーベルマン』(1997)などアクションやSF作品を得意とするが、いつもと違うジャンルに挑戦したのは、デビュー作『プッシャー』(1996)の頃から注目していたマッツの出演が決まっていたからだという。製作時には</p>