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 スウェーデンの電動商用車メーカー、ボルタ・トラックスは4月22日、バッテリー電気式(BEV)トラック「ボルタ・ゼロ」に車両総重量(GVW)7.5トン/12トンの2モデルを追加すると発表した。

 ボルタ・ゼロのGVW16/18トンモデルは間もなく量産を開始、7.5/12トンモデルは2025年前半の量産化を目指している。

 いっぽう5月5日には北米市場への参入も表明。ボルタ・ゼロをベースに北米のクラス5~クラス7の中型トラックを将来的にアメリカで生産する予定で、2022年中に現地パートナーを指名するとした。

 「トラックの電動化は安全性向上のための手段」とする異色の新興メーカーが勢いを増している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Volta Trucks


電動トラックにGVW7.5トン/12トンモデルを追加

 電動商用車メーカーのボルタ・トラックス(スウェーデン)は2022年4月22日、バッテリー電気式(BEV)トラック「ボルタ・ゼロ」にGVW7.5トン及び12トンモデルを追加すると発表した。

 2020年にプロトタイプが発表されたボルタ・ゼロは、最初の市販車として16トンモデルを2022年後半に納車する予定となっている。また2023年中には18トンモデルの生産を開始する。これらに続く2番目の製品ファミリーとなる7.5/12トンモデルは、16トンモデルをトライアル中の顧客の要望に応えたものだ。

 新モデルはボルタの開発チームとイギリスのAstheimer Designが共同で設計し、デザインは16トン車と非常によく似ている。フロントの外観は7.5トンと12トンで共通。シャシは12トン車のほうが長く、積載量の増加に対応するためリアがダブルタイヤとなる。

 7.5トン/12トンモデルの開発プロジェクトがスタートしたのは2021年の12月。ロードマップとしては顧客トライアルのためのパイロットフリートを2024年にローンチし、2025年の前半に量産化を目指す。他の車両と同様、開発ペースは業界最速だという。

 なお、ボルタ・トラックスは2025年までに年間2万7000台以上を販売するという目標を掲げているが、この数字には7.5トン/12トンモデルも含まれている。

 ボルタ・トラックスCEOの Essa Al-Saleh 氏は、各モデルの開発状況について次のように話している。

 「7.5トン/12トンモデルにより、『ボルタ・ゼロ』の製品ファミリーが完成します。2022年中にお客様に利用していただくために、16トン車は現在集中的な試験を行なっています。18トン車は2023年に製造を開始する予定です。

 お客様からはボルタ・ゼロ16トンの安全性とゼロ・エミッションに高い評価をいただいています。そのいっぽうで日々の業務で使うにはより小型の7.5トン~12トンクラスの車両が欲しいという要望もいただきました。

 お客様の要望に答え、4モデルすべてを予定通りにお届けできるように、開発チームの強化を急いでいます」。

目指したのは革新的な安全性

 ドライバーにとって革新的な運転環境を提供するというキャブ設計の原則は、新モデルでも踏襲する。ボルタ・ゼロのキャブは内燃エンジン搭載車からのデザイン変更ではなく、ゼロから設計したもので、このセグメントにおけるトラックのデザインを完全に再考したという。

 商用車は都市交通のごく一部を占めるにすぎないが、道路利用者が巻き込まれる交通事故では不釣り合いなほど大きな割合を占めている。

 ドライバーの直接視界が220度に及ぶパノラマビューは、運転席を取り囲むガラスハウス状のキャブによるもので、最適な視認性と死角の削減を目指して設計された。

 また、道路利用者の安全性のために、従来のミラーに代えてリアビューカメラを採用し、ドライバーは360度の鳥瞰画像によって車両の全周囲を視認することができる。それでも車両側面下方にブラインドスポットができるが、物体検知による警報システムを備える。

 内燃エンジンを搭載しないためボルタ・ゼロの運転席の位置は従来のトラックよりはるかに低い位置にあり、ドライバーの目線の高さが地上から約1.8mとなる。これは歩行者やほかの道路利用者とほぼ同じ高さとなるため、コミュニケーションが取りやすい。

電動化は安全性向上のため!? スウェーデンの新興トラックメーカー・ボルタが急成長!
キャブオーバー車と比較すると運転席の低さは一目瞭然

 運転席を中央に配置したドライビングポジションにより、ドライバーは車両の左右どちらからも乗り降りできる。安全のために歩道側に降りることもできるが、ドアはスイング式ではなくスライド式となっているので、車道側でも二輪車などの追突を避けることができる。

 直感的なダッシュボードとインターフェースにより、運転体験は従来の商用車より高級乗用車に近くなっているという。

ボルタ・ゼロで北米市場に参入

 欧州においてBEVトラックメーカー・サービスプロバイダーとしての地位を確立しつつあるボルタだが、5月5日には北米市場への参入を発表した。計画通りなら北米初の「ボルタ・ゼロ」は2023年の年末までにロサンゼルスの公道で見られるようになる。

 北米市場に投入するトラックは欧州のボルタ・ゼロ16トンモデルと同等のドライまたは冷蔵カーゴ車だ。バッテリー電気式の中型トラックであるボルタ・ゼロは特に都市内輸送向けに設計されている。

 ボルタ・ゼロはモーター・トランスミッション・アクスルを一体化したコンパクトな電動アクスルを採用しているが、この電動アクスルはミシガン州に本社があるメリトール製だ。高電圧のバッテリーは車両で最も安全な場所、シャシのサイドレール間に配置する。

 ボルタトラックスは100台のトラックを2023年の中ごろまでに米国の顧客の元でテストする。最初はロサンゼルス、その他の都市がこれに続き、2024年中に量産車をロールアウトする。

 ボルタはこれまでに24台のプロトタイプを製造し、欧州で集中的に試験を行なっている。北米市場への導入までに欧州での製造台数は1500台となる見込みだ。

 米国の重量車区分で「クラス7」(GVWが最大3万3000ポンド=約15トン)に相当するボルタ・ゼロは都市内の輸送を前提としているため、モジュラー式バッテリーによる航続距離は95から125マイル(150~200km)となる。これは市内の配送には充分過ぎる距離だ。

 充電は普通充電(AC)のほか、1時間強でフル充電が可能なDC-250kWの急速充電に対応する。19kWの普通充電1時間当たりの航続距離は12マイル(約20km)に相当する。

 クラス7トラックに続き、2024年~2025年に1万9500ポンド(約8.8トン)のクラス5/2万6000ポンド(約11.8トン)のクラス6トラックを投入する。これは北米市場参入に先だって発表された欧州の7.5トン/12トン車と同等のクラスとなる。

北米での製造と Truck as a Service

 いうまでもなく北米は巨大な市場だが、大型トラックはキャブオーバーではなくボンネットタイプが主流で、ドライバーが個人でトラックを購入し運送業に従事するオーナー・オペレータも多いなど、独特の市場でもある。

 大型車の電動化ではニコラやXosなどの新興メーカーが先行するほか、ダイムラーグループやボルボなどの伝統メーカーも北米市場向けにBEVトラックの開発を加速しており、競争が激しくなっている。

 いっぽうボルタは、欧州での経験から運送業者が電動化に際して直面する複雑な状況を理解しており、これに応じるために、フリートを電動化するために必要なすべての要素を一つにまとめた 「トラック・アズ・ア・サービス」(TaaS)を提供している。

 欧州における TaaS は、インフラの理解から充電設備の導入までを含んだ一連のサービスで、BEVトラックを所有するリスクを軽減するための金融・保険も含まれている。また、車両のライフタイム全体に渡るサービス・メンテナンス要件もすべて含まれているというのも重要な点だ。

 北米でも欧州と同じアプローチにより、サービス拠点となる「ボルタ・トラックス・ハブ」を整備する計画。トラックの稼働時間と顧客の利便性を最大化するため、ハブは物流センターの近くに設置する。同時にサードパーティのサービスネットワークの開発にも取り組む。

 北米での製造に向けて現地パートナーと協議中で、2022年後半に合意する見込みとなっている。米国に投入する最初のクラス7トラックは、欧州向けと同様、オーストリアのシュタイアが製造する。北米での製造は2024~2025年にスタートし、クラス5/6トラックは当初から米国で製造する予定だ。

 ボルタ・トラックス創業者の Carl-Magnus Norden 氏は次のように話している。

 「2020年9月にボルタ・ゼロを発表して以来、ロンドンやパリなど欧州の各都市でトラックが電動化して行き、私たちのコンセプトがお客様のニーズにあっていることを確認しました。

 現在、欧州でも大手の運送事業者様からのプレオーダーが6000台を超えており、私たちの地平線を北米という重要市場に広げる時が来たと考えています。この電動トラックがアメリカのお客様のニーズに完全に合致していると確信しています。

 北米の運送事業者とお会いして、フル電動トラックを紹介する日を楽しみにしています」。

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