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 6月30日に発表、翌7月1日に発売する予定のホンダシビックのハイブリッドモデル「シビックe:HEV」。

 日本向けのシビックにハイブリッドが設定されるのは8代目以来約12年ぶりとなり、「これを待っていた!」という方も多いのではないだろうか。

 その一方で、ホンダ販売店から聞いた情報によると、価格設定がかなり強気であることが判明した。

 ガソリンモデルも「割高感が強い」という意見の多い現行シビック。果たして強気な戦略のシビックe:HEVは売れるのか?

文/渡辺陽一郎
写真/ホンダ、トヨタ

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■シビックにハイブリッドモデル登場!

7月に登場するホンダ シビックe:HEV。現行シビックのテーマである「爽快」をモーターの走りで体現したという

 ホンダは1999年に初代インサイトを発売して以来、ハイブリッドに力を入れてきた。今では小型/普通車については、大半の車種にe:HEVを主力とするハイブリッドを搭載している。

 ハイブリッドを用意しない唯一の小型/普通車がシビックだったが、間もなく搭載車が発売される。ホンダの「e:HEVフルラインナップ体制」が確立するわけだ。

 シビックがハイブリッドを用意しなかった理由は、ほぼ同じボディサイズのe:HEV専用車として、3代目インサイトが設定されていたからだ。従ってシビックe:HEVが発売されると、インサイトは入れ替わりに終了する。

 シビックe:HEVの発売スケジュールを販売店に尋ねると、以下のように返答された。

「シビックe:HEVは、2022年6月30日に発表され、7月1日に発売される。先行予約受注の受け付けは4月21日に開始しており、既に注文を入れられる。

ただし納期は分からない。シビックのターボであれば2か月程度で納車できるが、e:HEVはもっと長い」。

■シビックe:HEVグレード&スペック詳報

 シビックe:HEVのグレード構成はシンプルで、販売店では「装備の充実した上級仕様のみの設定」という。

 衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能を含んだホンダセンシング、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーション、運転席と助手席の電動調節機能、BOSEプレミアムサウンドシステムなども標準装着する。

 シート生地は、プライムスムースとウルトラスウエードで仕上げた。これらの装備内容は、1.5LターボのシビックEXに準じる。

 e:HEVのメカニズムは、新開発された直列4気筒2Lの直噴エンジンに、最高出力が135kW(184ps)、最大トルクが315Nm(32.1kgm)のモーターを組み合わせたものだ。

 e:HEVでは、エンジンは主に発電を担当して駆動はモーターが受け持つが、シビックの場合、発電用エンジンを2Lの直噴式に上級化したことで、実用燃費も向上できた。モーターの駆動力にも余裕があり、静粛性も向上している。

 販売店によると「シビックe:HEVのWLTCモード燃費は24.2km/L」だという。従来型のインサイトは、1.5Lエンジンを使ったe:HEVを搭載して、WLTCモード燃費は17インチタイヤのEXが25.6km/L、新型シビックハイブリッドと同じ18インチのEXブラックスタイルは24.4km/Lであった。

 シビックハイブリッドは、前述のようにエンジン排気量を2Lに拡大して、モーターの駆動力もインサイトは最高出力が131ps、最大トルクは27.2kgmだったが、シビックハイブリッドは前述の184ps/32.1kgmだ。

 そこまで考慮すると、WLTCモード燃費の24.2km/Lも納得できる。

■カムリ、プリウスと比べて安い? 高い?

 シビックe:HEVの価格は394万200円だ。シビックEXは353万9800円だから、シビックe:HEVは約40万円高い。

 また従来型のインサイトは、18インチタイヤ、本革&ウルトラスエードシートなどを備えたEXブラックスタイルが372万9000円であった。

 これと比べても、シビックe:HEVの価格は約21万円上まわる。

 他メーカーのハイブリッドでライバル車になるプリウスは、最上級のAプレミアムツーリングセレクションが、本革シートなどを装着して344万2000円だ。

 シビックe:HEVは、約50万円高い。プリウスはWLTCモード燃費も優れ、最上級グレードでも27.2km/Lに達する。

 シビックe:HEVと価格が同等のハイブリッドは、セダンや5ドアハッチバックでは、カムリWSの393万7000円が最も近い。

 直列4気筒2.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドシステムを搭載して、WLTCモード燃費は24.3km/Lだから、シビックe:HEVの24.2km/Lとほぼ同じだ。

 カムリWSでは、アルミホイールのサイズが17インチに留まり、シビックe:HEVと同様の18インチは5万1700円のオプションだ。助手席の電動調節機能も、電動チルト&テレスコピックステアリングとセットで5万7200円のオプションになり、JBLプレミアムサウンドシステムは8万300円で用意される。

 つまりカムリWSは、シビックe:HEVに比べて装備はシンプルだが、ボディサイズには余裕があって後席も広い。

 このように考えると、シビックe:HEVの価格はカムリと同等で、サイズの近いプリウスに比べると約50万円高い。前身のインサイトと比べても約21万円の上乗せだ。

 シビックの価格は、1.5Lターボエンジン搭載車も高めの設定で、e:HEVはさらに約40万円上まわるから、割高感が一層強まった。

■割高感の背景─ホンダ車の価格設定の方法…ベーシックグレードがほしい!

シビック自体の価格設定の高さにハイブリッドの価格が上乗せされたことで、かなり高額な設定となっているシビックe:HEV。ベーシックグレードが追加されれば購入を検討する顧客も増えるだろう

 シビックの価格がターボを含めて割高な背景には、ホンダ車の価格設定の方法がある。ホンダの場合、それぞれの市場において、収支のバランスが取れるように価格を決めることだ。

 ライバル車や市場全体の価格動向はあまり汲み取らない。そのために販売規模の小さな市場では、大量生産によるコスト低減の効果も薄れるから、1台当たりの価格が高まりやすい。

 日本におけるホンダの売れ筋車種は、N-BOX、フィット、フリードといった全長が4400mm以下のコンパクトな車種に偏り、国内で売られるホンダ車の80%を占める。

 シビックやアコードは、残りの20%に属する少数派だから、価格を安く抑えることは難しい。その結果、割高になり、売れ行きがさらに伸び悩んでしまう。

 シビックe:HEVの売れ行きを多少なりとも伸ばすには、複数のグレードを用意する必要がある。せめて1.5LターボのシビックLXに相当するベーシックな仕様を、350万円前後で用意したい。

 そうすれば「e:HEVのベーシック仕様か、それともほぼ同じ価格で買えるターボを搭載した上級のEXか」という選択が成り立ち、シビックを選びやすくなる。グレード構成や価格をユーザーの目線で決めるべきだ。

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