ウクライナ侵攻に関するコンテンツへの広告配信事業について、Googleが警告を発した。戦争の存在を否定したり、戦争を利用したりするコンテンツに対して広告収益を停止するというもの。当サイトを含む広告配信を受けているサイトへ警告が発せられたものと思われる。参議院議員の鈴木宗男氏、弁護士の橋下徹氏らの主張も収益停止の対象とされる可能性はある。
■Googleからの便り
当サイトはこれまでGoogle AdSenseを利用してサイトに広告を掲載しており、4月中にGoogle Ad Managerに切り替えた。
4月14日未明に双方から「ウクライナに関する最新情報」という件名でメールによる警告が届けられた。2通とも文面は同じで、当サイトはもちろん、アドセンス、アドマネージャーと契約する法人・個人に送信されたと思われる。
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お客様
ウクライナでの戦争を受け、Google は、戦争を利用するコンテンツ、戦争の存在を否定するコンテンツ、または戦争を容認するコンテンツを含む広告の収益化を一時停止します。
なお、ウクライナでの戦争に関する主張が既存のポリシー(たとえば危険または中傷的なコンテンツに関するポリシーでは、暴力を煽るコンテンツや不幸な事象の存在を否定するコンテンツの収益化が禁止されています)に違反していた場合は、それらの主張に対してすでに措置を取っております。パブリッシャー様向けガイダンスが今回の紛争に関連しているため、その内容をわかりやすく説明する(場合によっては拡大する)ことが、このお知らせの主旨です。
この一時停止措置の対象には、不幸な事象が起きた責任は被害者自身にあると示唆する主張、および被害者に対する同様の非難(例: ウクライナが大量虐殺を行っている、または意図的に同国民に攻撃を行っているとする主張)が含まれますが、これらに限定されません。
よろしくお願いいたします。
Googleアド マネージャーチーム(AdSenseチーム)
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これまでも、ウクライナ侵攻に関して他者を中傷したり、暴力を煽動したりするようなコンテンツに関しては既存のポリシーに従って広告の収益が停止されていた。これに今回、以下のようなコンテンツも収益停止の対象となった。
(1)戦争を利用するコンテンツ
(2)戦争の存在を否定するコンテンツ
(3)戦争を容認するコンテンツ
(4)不幸な事象が起きた責任は被害者自身にあると示唆する主張
(5)被害者に対する(4)と同様の非難
この(5)の中には、ウクライナが大量虐殺を行っている、または意図的に同国民に攻撃を行っているとする主張が含まれているとされている。これはまさにロシア側の主張そのものであり、それを主張するコンテンツであれば収益停止とされるということである。
■Googleのポリシーに反する主張の例
上記のポリシーに反する主張は、たとえば駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏のものがある。
4月9日にTBS系「報道特集」に出演した際に、キーウ近郊のブチャでロシア軍がウクライナ人を虐殺したことについて「なかった」「自作自演のでっち上げ」などと話している。
このインタビューは現在、TBS NEWSで公開されている。このようなインタビューを掲載・公開した場合、直ちに収益停止の対象となるかは分からないが、例えばガルージン氏のコメントなどを根拠に同種の主張をサイトなどで公開した場合、広告収益停止の対象とされるのは間違いない(TBS NEWS・「“虐殺”はでっち上げ」駐日ロシア大使単独インタビューで語る【報道特集】)。
これまで一貫してロシア寄りの主張をしているのが日本維新の会の鈴木宗男参院議員。同氏は自身のブログの中で「テレビから、ロシア側、ウクライナ側の主張、映像が知らされるが、なにが真実で、なにが正しいのか、受け止めに躊躇してしまう。」(花に水 人に心 ムネオ オフィシャルブログ・4月6日公開)としている。
ロシア側は今回の侵攻の責任はウクライナ側のロシア系住民への虐殺にあり、ウクライナの非ナチス化のために行っているとしている。このような主張に対し、鈴木氏は正誤の判断がつかないと言っているのであり、ロシアの主張に一定の理解を示していると言えなくもない。コンテンツ内で同様の主張をするのであれば、上記(4)、(5)に抵触する可能性はある。
弁護士の橋下徹氏も際どい発言をしている。ツイッターで以下のような投稿がある。
ロシアは侵略者だ。しかし戦争になった以上法的正当性に拘泥せず戦争終結に向けて政治をやるべきだ。ロシアが倒れるまでにウクライナにどれだけの被害が生じるのか。戦時には学者的学級委員的政治家は役に立たない。ヤクザ相手には清濁合わせ飲むヤクザ的政治家が必要だ。(3月1日午後7時4分投稿)
これは(3)の戦争を容認する例と評価されても不思議はない。
Googleでは、主張がポリシーに抵触するかどうか等についてはAIが判定していると言われている。どのような判断がされるかは蓋を開けてみないと分からず、あくまでも可能性の問題であることはご了解いただきたい。
■炎上商法のサイトには厳しい決定
鈴木氏や橋下氏が自身のSNSで持論を披瀝している分には広告収益停止は何の関係もない。
しかし、ネット媒体からの執筆依頼があった場合、その媒体がGoogle Ad Manager(通常、マスメディアはAdSenseでない場合が多いとされる)と契約していたら、掲載までにひと悶着あるかもしれない。このような状況になれば、さすがに鈴木氏に執筆依頼やインタビューなどを行おうというサイトは少ないと思われる。
一方、橋下氏のように”集客力”のある情報発信者は、媒体としても活用したいところ。今後は依頼する際に「ポリシーに抵触しないようにお願いします」と事前に釘をさすことになるのではないか。
いずれにせよ、炎上商法で広告料を稼ごうというサイトには厳しい決定となったのは間違いない。
■表現の自由への制約か
こうしたGoogleの決定は、表現の自由に対する制約になっているようにも思える。しかし、Googleは「特定の主張をするな」と言っているわけではない。主張するのは勝手であるものの、その場合は広告料は出しませんということに過ぎない。
ドイツではナチスを礼賛したり、ユダヤ人の大量虐殺を否定する主張をしたり、などの言動は厳しく禁じられている。そうした表現活動は、保護すべき自由に含まれないと考えているものと思われ、違反者には罰則が科される。
今回のGoogleの決定も、そのような考えがベースにあると言って差し支えない。それは「言論には責任が伴う」ということと、ほぼイコールであると考えられる。
鈴木氏や橋下氏が何を思って、これまでのような主張をしてきたのか、その真意は分からない。しかし、両者とも妄想のような言い分をITの巨人が許さないとしたことを重く捉え、世の人々の声に真剣に耳を傾ける時が来たと感じてほしい。