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日立製作所が、給与を据え置いたまま週休3日制を選択できる新しい勤務制度を導入することが報道各社で相次いで報じられた。11日夕にスクープした日本経済新聞によると、対象は1万5000人に上り、2022年度中に導入するという。

これまで、1日あたり3.75時間としていた勤務時間の下限を撤廃することで、働く日を従業員自身が選びやすくなる。勤務時間の下限撤廃により、たとえば、週4日を10時間勤務として、残りの3日を休日にすることも可能になる。

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週休3日制で純利益が2倍に

週休3日制は、政府も積極的に導入を後押ししており、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)に「選択的週休3日制」が盛り込まれたことでも話題となった。なお、NECやパナソニックも2022年度中に週休3日制の導入を予定しているという。

週休2日制から週休3日制への移行は、欧米では既に珍しいことではなくなっているようだ。BSテレ東「ワールドビジネスサテライト」によると、深刻な人手不足を解消するために、米システム会社「エレファント・ベンチャーズ」が2020年10月から週休3日制を採用しているという。

同社のアート・シェクトマン最高経営責任者(CEO)は番組のインタビューに、「求人への応募数は『週休3日』の前と比べ、2~3倍になった。週休3日の導入が人手不足の中、優れた人材を確保する武器になっている」と述べている。同社によると、週休3日制の導入後、純利益が2倍に増加したという。

また、米CNNは、コロナ禍を機に長く続くアメリカにおける人手不足の解消手段として、週休3日制を進めるべきと主張している。

「大退職時代」から得た重要な教訓が次第に明らかになってきた。それは、週に1日仕事を減らすことだ。

CNNによると、最近仕事を辞めた米国の若年層(22~35歳)にアンケートを取ったところ、回答者の80%が週休3日制を支持しているという。

週休3日制は働く人の幸福度が高い

日本もアメリカ同様、人手不足の企業が数多くあるが、企業が優秀な人材を獲得するためには何をすればいいのだろうか。そのヒントになりそうな調査がある。

就職や転職に関するコンテンツを提供するビズヒッツが昨年4月、転職経験のある500人に「転職先の決め手」についてアンケート調査を実施したところ、「希望する仕事内容だった」「収入に納得した」に次いで3位だったのが「勤務時間・休日数が良かった」だった。

他にも理由で挙げられた「希望する勤務地で働ける」「社風・雰囲気にひかれた」「福利厚生が整っている」「規模・安定性・成長性にひかれた」などを抑えている。アンケート結果をそのまま受け取れば、優秀な人材を獲得するためには、多額の費用をかけて福利厚生を整えるより休日数を増やした方が効果的と言える。

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米経済雑誌「フォーブス」によると、週に4日間働くポジションを新たな企業から打診された場合、4人に3人が、「現在の仕事を辞めることを検討する」と回答している。

さらに、週休2日より週休3日の方が、働く人の幸福度が高いというデータも出ている。厚生労働省の元官僚で、リクルートワークス研究所の坂本貴志氏は、執筆した論文「週休3日制をどう考えるか―実態把握を中心に―」の中で、勤務日と働く人の幸福度の関連を次のように指摘している。

週4日勤務者を週5日勤務者と比較すると、仕事満足度も幸福度も高いという結果となった。週5日勤務者で仕事に満足している人の割合は37.0%であるが、週4日勤務者は41.6%である。幸福度に関しても幸福だと感じている人の割合は週5日勤務者(50.3%)より週4日勤務者(55.0%)の方が高くなった。

「Do Happier Employees Really Stay Longer?(幸せな社員は本当に長続きするのか?)」という論文(米サウスイースタン・ルイジアナ大学 David Wyld教授)でも、企業の離職率を低下させるために特に重要な要素が、従業員の仕事満足度と幸福度だと指摘している。

日本でも週休3日制は根付くか

ただ、日本企業では冒頭の日立や日本マイクロソフト、ヤフーといった一部大手企業以外に、週休3日制を導入する企業はまだ少ない。

東京都産業労働局の「令和2年度働き方改革に関する実態調査」によると、「今後導入してほしい制度」として54.5%の従業員が「週休3日制」を挙げているのに対して、60.5%の企業が週休3日制を「導入する考えがない制度」として挙げている。

企業が週休3日制の導入を嫌がる理由としては、商機が減る可能性、同業他社に仕事を奪われるリスク、給与体系を変えなければならない、などが考えられる。しかし、そもそも働いてくれる人がいなくては企業活動自体が立ち行かなくなる。

日本も人手不足に悩む企業が多い中、少子高齢化により将来は今よりさらに働く人が減っていく。多くの従業員が望む「週休3日制」という新しい働き方に、企業が否応なしに対応しなければならない時代がやってくるかもしれない。