東京外国為替市場は13日、円相場で一時1ドル=126円台まで値下がりし、2002年5月以来の低水準にまで落ち込んだ。この日午後、報道各社が「約20年ぶりの低水準」と報道すると、ネットでは経営者や投資家らの懸念や失望が深まった。
2002年5月といえば、時の首相は小泉純一郎氏。小泉政権時代といえば、堀江貴文氏らIT長者のヒルズ族が台頭し、郵政選挙など経済面でも勢いのあった時の記憶を思い起こす人もいるだろうが、それは後年のこと。この年は就任から1年後のことで、政権の前期は90年代のバブル崩壊後から日本経済の重荷になっていた不良債権の処理を進めている段階で、不況はその後さらに深刻化した。
「1ドル=126円」を記録した同年5月21日の日経平均は、11801円とまだ持ち堪えていたが、この年の7月以降は1万円の大台を割り込み、翌年4月28日にバブル崩壊後最安値となる7607円をマークした。
そうした歴史的経緯から「不況はこれからが本番」という不気味さも漂うが、今回の円安で好転の兆しが感じられないのは、ロシアのルーブルにすら負け始めているという事実だ。周知の通り、ルーブルは、ロシアのウクライナ侵略戦争により、欧米各国による経済制裁で国際銀行間の決済ネットワーク(SWIFT)から排除されたことなどにより、3月上旬には「1ドル=150ルーブル」にまで相場が大きく落ち込んだ。
しかし、エネルギー産出国であるロシアはやはり強い。EUは天然ガスや原油を制裁対象に入れなかったこともあって、致命傷までは免れた。3月後半に入り、ルーブルも持ち直し、4月に入ると「1ドル=80ルーブル」と侵略戦争の前に持ち直した。
資源国でもなく、かといってデジタルでも敗戦し、経済的な強みがどんどん失われている日本の円。「ルーブルに次ぐ下落率」(日経新聞)と指摘されながら、今のままでは一人負けの様相が濃くなるばかりだ。
経済学者の野口悠紀雄・一橋大教授はこの日、プレジデントオンラインへの緊急寄稿で「日本は世界の先進国から滑り落ちようとしている」と警鐘を鳴らしたが、岸田首相は午後、記者団に円安の見解を尋ねられても「為替の水準について私の立場からは申し上げない」と沈黙した。「検討使」「検討おじさん」とも揶揄される岸田首相だが、ネット民は「とうとう検討すらしなくなったか」と失望を隠せないようだった。