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Blade & Sorcery:Nomad」は、剣と魔法が織りなす中世ファンタジー世界を舞台に、現実の物理法則に従ったリアルな剣戟を楽しめる戦闘特化型のVRアクションゲームです。

2018年にSteamでのアーリーアクセスが開始し、アップデートでコンテンツを拡充しながら現在も鋭意開発中となっています。今回プレイしたのは、昨年11月にリリースされたMeta Quest2版です。世界で話題のVRファンタジーアクションを体験した感想と共に、本作の魅力を紹介していきたいと思います。

リアルな武器の挙動が引き出す暴力衝動

本作に登場する武器の種類は、アーリーアクセス中である現時点でも多くのバリエーションが用意されています。長剣、短剣、手斧、メイス、ハンマー、大剣、槍、斧槍、盾といったオーソドックスな物から、両刃剣やジャマダハルといったやや珍しいテクニカルな武器まで。遠距離戦用に弓や、魔法戦に特化した杖なども使用できるので、思い浮かぶ戦闘スタイルはおおよそカバーできているといって良いでしょう。

これらの武器には全て重量が設定されています。片手用の武器はもちろん片手で問題なく扱えますが、両手用の武器を片手で振ろうとすると、ぶらんぶらんと安定せずまともに攻撃ができなくなるのです。

しかも、武器は安定させて振り下ろせばそれでよしというわけでもありません。というのも、武器には部位ごとにダメージ値が設定されているからです。斧などは刃のある部分で斬りつければ殺傷力の高い一撃になりますが、刃のない部分では威力は大きく下がってしまいます。

剣においては、同じ刃で斬ったとしても、先端より中心で斬った方がより大きなダメージが与えられるといった具合です。くわえて、武器を振る勢いも重要です。勢いが弱ければ、たとえ鋭い刃の部分で攻撃を当てたとしてもダメージはほとんど与えられないでしょう。

敵にも、全身に物理的な性質が細かく設定されています。何も身に着けていない剥き出しの素肌には簡単に斬撃や貫通ダメージが通りますが、鎧でガチガチに固めた箇所には剣ではまともにダメージが通りません。鎧の隙間を狙って攻撃するか、鎧の上からでも有効な鈍器系の武器に切り替えるなど、状況に応じた立ち回りが必要になってきます。

さて、こうして文章に書き起こしてみると、本作はシミュレータ寄りの手ごわいゲームに思えます。気軽に手を出すのは、ちょっと躊躇してしまいそうですよね。

しかし、なんのことはありません。要は、敵が痛がりそうなところへ痛い一撃をくれてやればいいのです。

これらのリアリティを追求した要素は、あくまで体験の質を高めるためのものであって、ゲームプレイのハードルを高くするものではありません。今まで遊んできたアクションゲームで「そういうものだから」と受け入れてきたゲーム的不文律や常識は捨ててください。

「ここを狙えば効きそうだ」とか「これで殴ればたぶん死ぬ」という直感が――あなたの戦闘センスが、そのまま通用する世界なのです。

ちなみに、敵の特定部位に対して、強く、鋭く、正確に斬り込めば切断することも可能です。動き回る敵に対して実行するのはかなりの熟練を要するので、狙って部位切断をできるようになれば達人級の腕前と言っても過言ではありません。さすがに切断はやりすぎ……という方は、設定でゴア表現をOFFにできますので、優しくなった世界で安心して戦いに狂いましょう。ひとたびこの臨場感あふれる戦場に降り立てば、普段は抑えつけている暴力衝動が引き起こされること間違いなしです。

テレキネシスから凶器攻撃まで、なんでもアリの自由なバトル

基本的には武器による剣戟がメインの本作ですが、リアルな戦場ではそれほど綺麗に事は運びません。とくにゲームを始めたばかりで操作に慣れないうちは、手に持っていたはずの武器がすっぽ抜けてしまい、仕方なくステゴロで戦っていたなんてことも珍しくありません。

そこらへんに転がっている椅子や壺などを拾い上げて応戦していると、中世ファンタジーアクションに挑んでいたはずが、いつのまにかカンフーアクションを体験しています。

もちろん、ある程度操作に慣れてくれば、面白いように敵を打ち倒していけるようになります。流れるような動きで敵の急所を突き息の根を止めていく暗殺者や、相手の攻撃をすべて受け流して致命的な一撃を叩き込んでいく騎士など、目指すビジョンに近い戦闘を達成するたびに得も言われぬ気持ち良さが込み上げてきます。

武器の持ち方ひとつに至るまで発見と気づきがあり、創意工夫で自分なりの戦闘スタイルを確立していけるのも本作の大きな楽しさです。

てっとり早く勝利の美酒を味わいたい? それならば、大剣や槍といったリーチの長い武器を使うのがいいでしょう。リーチの長さは強さである、という実践における鉄則を肌で実感できるはずです。血に飢えた狂戦士の如くクレイモアを振り回しながら敵を屠(ほふ)っていくもよし、盾でがっちり身を守りつつ槍でチクチクと突きを繰り出して堅実に屍を築いていくのもよしです。

それでも納得いかなければ、もう魔法を使っちゃいましょう。本作には「火」「稲妻」「重力」の三つの魔法が実装されています。遠距離から放てる火の玉や、敵の動きを止められる稲妻も十分強いのですが、なかでも重力魔法の威力と汎用性は頭一つも二つも抜けています。

敵やオブジェクトを弾き飛ばしたり、離れた場所から念力のように物体を掴んで制御するという、まるでどこぞのSF映画に出てくるような能力です。さらに、両手でそれぞれ重力魔法を使用して合体させたあと解き放つようにアクションすることで、プレイヤーの周りにドーム状の無重力空間を展開もできます。

プレイヤー以外のすべての敵とオブジェクトが空中に浮かび上がるので、もはや戦いどころではありません。あとは壁に叩きつけるなり、場外ホームランするなり、真下で剣を立てて待機するなり、好きにしましょう。この魔法だけあればいいんじゃないかな、と思わせてくれるイカれ性能っぷりです。

さらに、魔法にはもう一つ使い道があります。それがエンチャントです。そう、剣の刀身を魔法でコーティングしていくあの動作を、自分の手で実際にできてしまうのです。

魔法剣というファンタジー世界のロマンをしっかり押さえている辺りに、本作への信頼感がグッと高まりますよね。エンチャントは見かけだけではなく、しっかり実用性もあります。それぞれの魔法ごとに異なる効果が付与されますが、なかでも火のエンチャントは鎧を貫通するようになるので、鎧ごと敵を串刺しにするダイナミックな戦闘が可能になります。

もちろん、剣以外の武器にもエンチャントは可能です。魔法を使うにはMPを消費しますが、MPは自然回復するので、気にせずガンガン使いましょう。

魔法のほかにも、自分を含めたすべての物の動きをスローモーションにできるという機能が実装されています。これを使えば、急所への的確な攻撃が容易になるのはもちろん、とっさに剣を逆手に持ち替えて刺突攻撃を行うなどのトリッキーな戦い方も容易になります。

空中に放り投げた武器をジャンプしてキャッチしそのまま降下して敵の急所を一刺しにするなどといった、通常では難度の高すぎるアクロバティックな魅せるアクションも実行できるかもしれません。魔法と同じく時間が経過すれば再使用できるので、気軽に使えるのも嬉しいところです。

おっと、ファンタジー世界とくれば、忘れてはならないのが回復アイテムの定番であるポーションでしょう。本作では戦闘のリアルさに反してプレイヤーの体力は多めに設定されているので、簡単には死なないようになっていますが、それでも体力の回復は重要です。

回復するには、まずポーション瓶を手に取り栓を開けなければいけません。そして口に流し込むことで少しずつ回復していきます。口以外にかけても体力は回復しないので、景気よくグビグビ飲みましょう。

当然このポーション瓶も武器として扱えるので、敵を掴んで頭をポーション瓶で殴打するという、最悪な酔っ払いのようなムーブだって可能です。武器として扱う際は、中身がこぼれないようにしっかりと栓をするのをお忘れなく。長年ゲームを嗜(たしな)んできましたが、ポーションで人間を撲殺できるゲームは初めて見ました。大興奮です。

MODを導入すれば世界はさらに拡張される

冒頭でも触れましたが、本作「Blade & Sorcery:Nomad」は、未だにアーリーアクセス中です。したがって、今後もコンテンツの追加や既存要素のアップデートが図られていく予定です。

現在プレイできるのは、サンドボックスモードのみとなっています。こちらは、拠点となるマイホームの地図から遺跡やコロシアムなどのロケーションを選択して移動し、敵の種類や出現数やシチュエーションなどを自由に設定して、ひたすら戦っていくというものです。ロケーションによっては、高低差やギミック利用した戦略的な立ち回りが実践できたりもします。

また、開発中ではありますがダンジョンがひとつ実装されています。これは、訪れるたびに地形が半自動生成される地下迷宮を攻略していくものです。物陰に隠れて敵をやり過ごしたり、こちらに気づいていない敵を奇襲したりと、プレイ感覚が違ってくるのでなかなか新鮮です。

ロードマップによれば、年内には新モードであるクリスタルハントモードの実装が予定されています(Quest2版はPC版から遅れてのアップデートになります)。詳細は不明ですが、どうやらクリスタルを収集していく冒険や探索のフレーバーが加えられたモードのようです。武器や鎧の購入、レベルアップとスキルツリーなども盛り込まれるようで、RPG的な成長要素が加わるのかもしれません。本作の完成に向けた最後の目玉コンテンツと言えるでしょう。

開発者がMOD文化に積極的な姿勢であることも特筆すべき点です。現在、MOD配信サイトにて本作向けに数多くのMODが公開されています。バニラ(MOD非導入状態のこと)では扱えない日本刀のような新武器や、時間を停止させて一方的に攻撃できるチート級の魔法、果てはファンタジー世界で銃火器を乱射したりなんてことも。

MODの導入により、本作のようなサンドボックス型アクションゲームの真骨頂とも言える、タガの外れた真に自由で混沌とした世界が無限に広がるでしょう。Quest2版でも最新のアップデートにてMODの導入が可能になりましたので、PC版同様にカオスな戦闘を楽しむことができます。

注意点として、今後の大きなアップデートによっては正常に適用されないMODが出てくる可能性もあるので留意しましょう。なお、MODを導入しなくとも、設定から「無敵」や「MP無限」といった公式チートが簡単に使用できます。

本作についてあえて難点を挙げるなら、メニューから確認できる簡易的な操作説明以外にチュートリアルがないことと、日本語には対応していないことでしょうか。しかし、チュートリアルは今後のアップデートで実装予定ですし、日本語が非対応なことについては、そもそも現状では物語的な要素が皆無のため、英語ができなくてもほとんど問題はありませんでした。

それでも心配なら有志による日本語化MODがありますし、YouTubeには先輩剣闘士による基本的な操作の詳しい解説動画があるので、興味はあるけど躊躇しているという方は参考にすると良いでしょう。

VRの強みである直感的な操作と圧倒的な臨場感、そのポテンシャルを最大限に引き出している「Blade & Sorcery:Nomad」は、現時点で間違いなくVRアクションの最先端を行く作品の一つと断言して良いでしょう。剣と魔法の中世ファンタジー世界で、自分の発想や工夫がそのまま戦いに反映される興奮は、本作でしか味わえません。

子供の頃に夢みた、あるいは未だ夢みてやまない、剣戟きらめき魔法飛び交う戦場へダイブしてみませんか?

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https://www.oculus.com/experiences/quest/2031826350263349/

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