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開催中の『バドミントン国別対抗戦2022 トマス杯・ユーバー杯』。2大会ぶりの優勝を目指す日本女子は、5月12日(木)から決勝トーナメントに進出する。

注目は、ダブルスの期待の新星、志田千陽と松山奈未の通称“シダマツ”ペア

東京オリンピック後から急成長し続け、2022年3月にビックタイトル「全英オープン」を初制覇した彼女たちは、パリオリンピックでのメダルも期待される有望株だ。

彼女たちは、いったいどのようにして急成長を遂げたのか。

◆「今までと違う形で勝てた」転機となった試合

2014年、高校生の時に初めてペアを組んだ志田と松山。

日の丸をつけて出場した2015年の「世界ジュニア選手権」で銅メダルに輝くなど、当時から将来を期待される存在だった。

しかし、東京オリンピックの代表選考レースでは、福島由紀・廣田彩花ペア、永原和可那・松本麻佑ペアに次ぐ3番手に甘んじ、夢舞台の切符をつかむことはできなかった。

東京オリンピックは自分の中でやっぱりダメでした。でも次はパリってずっと思っていたので、オリンピックを見ながら『私たちが次あそこに立てたら』と思っていました」(松山)

やっぱりパリでは絶対譲らないっていう気持ちが大きくなりましたね」(志田)

東京オリンピックの悔しさを経て、オリンピック出場への思いを強くした2人。

そんな彼女たちが「全英オープン」という伝統ある大会で勝利した理由は、これまでと戦い方を大きく変えたからだ。

ターニングポイントとなったのは、準々決勝の韓国戦。これまで3戦全敗だった東京オリンピック銅メダルのペア相手にストレートで圧勝し、大きな成長の跡を示した。

今までと違う形で勝てたので、新しい発見にもなったし、初めて勝つこともできた。あの一試合というのはすごく収穫になったと思います」(志田)

志田が言う“今までと違う形”とは、彼女たち2人のフォーメンションを意味する。

実はこの試合、2人は前衛と後衛を変幻自在に入れ替えていた。それまで基本的に前衛は松山、後衛は志田が務めていたが、さまざまな攻撃パターンを繰り出したことで相手を翻弄し、勝利を手繰り寄せたのだ。

「私が前衛にいる時もどんどん積極的に前に出ることができましたし、松山が後衛のカバー力がすごくついて、アタック力も強くなっているので、お互いが逆の役割になった時も安定してプレーできるようになって、得点するパターンが増えたと思います」(志田)

◆急造ペアがもたらした新たな強み

この戦い方を見つけたのは、2021年10月。怪我の功名ともいえる出来事だった。

志田が足を捻挫して休養中、松山はリオオリンピック金メダリストの松友美佐紀と臨時のペアを組み、「ユーバー杯」という国際大会に出場。そこで大きな“気づき”を得る。

志田・松山ペアで組んでいる時、自分は前衛のプレーが多いんですけど、松友さんも前衛の方なので、自分が後衛に回ることが多かったです。そこで攻撃の形とかもすごくできましたし、『自分ってこういう球出しで得点につなげてもらえるんだ』とかすごく感じられました。そういうところがすごくよかったのかなと思います」(松山)

前衛のスペシャリスト・松友と組んだ松山は、後衛の役割をメインで担当。後衛でもカバー力を発揮するなど、潜在能力の高さを見せつけた。

一方、その試合を応援席で見ていた志田にも新たな発見があったという。

「『こんなに動けるようになってる!』と思って(笑)。後衛を任せても大丈夫なんだと知れたので、それがすごくプラスな方にいったなと思います」(志田)

◆初めての口論で気づいたお互いの本音

そして成長したのは、技術だけではない。

「全英オープン」中に起きた“ある出来事”で、2人は心の成長も遂げていた。

「1回戦が終わったときに話したんですけど、その時にお互いがぶつかりあってしまって…。自分はいつもあまりしゃべらないんですけど、ちょっと強く言い返してしまったんですよ」(松山)

これまでペアを引っ張ってきたのは、ひとつ先輩の志田。松山が強く言い返したのはこれが初めてだった。

志田はそのとき、初めて松山の本音に気づけたという。

(全英オープン前の)試合からずっと調子が悪くて悩んでいて、(松山に)話したりしていたんですけど、『逆に声をかけられすぎるとやりづらい』ということを初めて聞けました。『そう思っていたんだ』『ちょっとお節介だったかな』と気付けました」(志田)

正直に思っていることを言ったことによって、2人の関係性は変わった。

自分から『こういう球を打ってほしい』とか、『こういう球を打ったら相手がちょっと嫌そうだよ』とか自信をもってあまり言えなくて…。自分がもっと伝えられるようになったら、何か変わるのかなと今はすごく思っています」(松山)

大きな成長を遂げた彼女たちが見据えているのは2年後だ。

「(パリオリンピックでは)必ず金メダルを取りたいと思っているのでので、そこに向けて本当に一日一日を大事にしていきたいなと思います」(松山)

「絶対に譲らないという気持ちと絶対に金メダルを取るというシンプルな気持ちです」(志田)

2年後の夢舞台に向けて着実に力をつけるシダマツペア。今日からはじまる「ユーバー杯」決勝トーナメントでも、どんな戦いを見せてくれるのか期待が高まる。