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テスラ

| この女性オーナーも問題だが、多数出現した「Me Too」も問題であり、その多くも虚偽の情報拡散を謝罪している |

なかなか世の中はフェイクニュースに対する耐性がつかないが、これはもう仕方のないことだとも思われる

さて、昨年はじめに中国で問題になった「テスラの意図しない加速」問題。

これは2020年8月、テスラに乗る女性オーナーが駐車中のクルマの列に次々と衝突してしまい、その原因が「自身の乗るテスラが急加速したため」だと主張したことに端を発します。

このドライバーは浙江省温州市の陳さんという人で、彼女は2021年の上海モーターショーの海上にてテスラブースに乱入し、そこで展示されるテスラの上に登って「自分はテスラ車の不具合のせいで事故を起こした」「テスラ車は危険だ」と声高に主張することとなったわけですね。

そしてこの事件は中国の人々の心を大きく動かし、「アメリカの巨大企業にひとり勇敢に立ち向かう中国人女性」としてたちまちジャンヌ・ダルク的な扱いを受けるようになりますが、これに呼応する形で「自分のテスラも急加速した」「ブレーキが効かない」とする人々が次々に登場し、中には自分のテスラに「事故を起こしたとしても、自分に過失がない」ことを示すため、足元にカメラを取り付けるユーザーが大量出現したことも報じられています。

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ただしそこから事態は思わぬ方向に

そして昨年春から夏にかけてはこういった「テスラバッシング」が拡大し、マンションの駐車場から住人のテスラが締め出されたり、公共施設では「テスラの出入り禁止」という張り紙がなされたりといった報道が相次ぎ、この時点でテスラは中国当局から呼び出されるなど「もしかするとテスラは中国市場を失うのでは」という懸念も囁かれたわけですが、時を同じくして、ことの発端となった陳さんが「テスラのライバルである、NIOの関係者」である可能性が高いということが中国のSNSにて証拠ととも拡散され、事態はちょっと思わぬ方向へ。

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さらにテスラや公的機関も本格的な調査を行っており、温州自動車技術会は「この事故が運転手のミスである」こと、つまりドライバーがアクセルペダルとブレーキペダルを間違えていたことを明らかにしています(事故直後の2020年10月にも、温州自動車工程協会が同車両を調査し、事故直前の5秒間、ブレーキペダルが踏まれていないことが証明されている)。

結局テスラの「ブレーキ問題」は中国のテスラオーナーのでっち上げだった

これらの「事実」により、温州の裁判所は、この陳さんがテスラの評判を意図的に落とす行為を行ったと判断し、公的に謝罪するだけでなく、約100万円の損害賠償をテスラに対し支払うべしという判決を出すことに。

この他にも、テスラは「ネット上で誤った情報を拡散した」人々やテスラオーナーを追求することになりますが、そのうち多くは「話をでっち上げた」ことを認め、すでに公式に謝罪し、これに加担したメディアやソーシャルメディアも「誤報を広めた」ことを謝罪しています。

くだんの陳さんについては、「事故後、私はブレーキではなくアクセルペダルを踏んだと分かっていても動揺していたのです。私は2020年8月中旬から、Douyin、Weibo、ラジオやテレビのインタビューで、テスラの自動加速とブレーキ故障について虚偽の内容を語り、また命を大切にするためにテスラに近づかないようにすべきだという内容を捏造し続け、テスラ社やテスラ車を侮辱し中傷しました。私は今、自分の行為の本質を自覚し、テスラおよびテスラ車に大きな悪影響を及ぼしたことを反省しています。テスラ社および私の発言に惑わされた方々に心からお詫び申し上げます。また、インターネットユーザーの皆様には、自分勝手な考えや他人の強制に目を奪われることなく、見識と真実を見る目を持って行動していただくことをここに望みます」とコメントしており、すっかりその勢いがどこへ行ったのやら、という感じに。

自動車業界に限らず、様々なデマによって個人や企業がダメージを受けることは少なくはなく、しかしいつになってもこういった状況が変わらない(なかなかフェイクニュースに対する耐性がつかない)のもまた事実であり、おそらくは今後もこの状況が改善されることはないのかもしれません(中には悪用しようと考える人も出てくるものと思われる)。

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ちなみにテスラ車の「火災」は年々減っている

ブレーキ問題とはまた別に、ときどき話題となるのがテスラ車の火災。

もともと「そんなに多く」はなかったと認識していますが、今回テスラは2012年から2021年までの車両火災データを公開し、走行距離あたりの火災事故につき、年々改善されていることを明らかにしています。

テスラによると、2012年-2020年の期間においては2億500万マイルに一台の比率でテスラ車が燃え、しかし2012-2021年の期間中だと、およそ2億1000万マイル走行するごとに一件の火災が発生しているとのことで、つまり2020年から2021年の間に大幅な改善があったことを意味します。

ちなみにこの「火災」については、全米防火協会(NFPA)のデータとの「適切な比較」を行うため、構造物火災や放火など、車両とは無関係のものが原因の火災も含まれていますが、全米防火協会に発表する「車両火災の全国平均」は1900万マイルにつき一件という数値に比較すると、テスラのクルマは「一般的なクルマが燃える確率に比較すると、1/11」の割合でしか燃えておらず、つまり「ガソリン車も含めて著しく安全」だとも言え、さらに「ガソリン車の二倍の確率で燃える(これは英国での統計ですが)」とされるEVだけに絞ると「EV平均に比較して「著しく安全」だとも考えることができそうですね。

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世の中ではテスラを忌み嫌う人が多いとされ、ときには襲撃の対象となっているそうですが、こういったニュースを見るに、テスラの不具合や品質についても上述の「中国での一件」のようにガセが多いのかもしれません。

実際のところ、識者がテスラのクルマを見てみると、とくに問題は見られないという意見も多く、テスラはネガティブキャンペーンによって損をしているという可能性もありそうです。

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