2022年、春の新年度スタートから世間は値上げラッシュ。食料品や光熱費など生活に身近な部分はもちろん、意外なものでは歯科治療に使う銀歯まで、我々庶民は値上げの嵐に苛まれている。
クルマまわりにかかる費用もじわじわと上がっている。昨年度から天井知らずのガソリン料金は言うに及ばず、最近では自動車を製造する「材料」の部分にも値上げの波が押し寄せつつある。
クルマを取り巻くおカネの話を、クルマの達人・国沢光宏氏が解説する。
※本稿は2022年4月のものです
文/国沢光宏、写真/AdobeStock(メイン写真=Yoshiyuki@AdobeStock)
初出/ベストカー2022年5月10日号
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■値上げラッシュの2022年春! クルマの値段も上がる!?
早ければ今年の夏くらいから新車の価格がジワジワ高くなるかもしれない。理由は簡単。部品や素材の購入コスト上昇によるものだ。
例えばクルマの基本となっている鋼材。鉄鉱石から製鉄する工程において、石炭など大量のエネルギーを使う。
ご存知のとおり2年ほど前からエネルギーコストはジワジワ上昇傾向。
わかっているだけで日本製鉄がトヨタに卸す鋼材の価格を1トンあたり4万円上げた。ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギーコストはさらに高くなることだろう。
クルマ1台における鋼材は車重の70%くらいだと言われているため、車重1400kgであれば1トン。鋼材だけで4万円高くなるということ。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、3年連続の値上げすらありうる状況になっている。
そのほか、金属系でいうとアルミニウムの調達コストが厳しい。欧州メーカーはエネルギーコストの低いロシアからアルミ材を大量に調達しており、すでに生産調整に追い込まれている。今後、世界中で奪い合いになりそう。
石油を使う製品の値上がりも始まった。好例がタイヤ。
原料のうち、天然ゴムは3割ほど(供給力不足のため上昇中)。7割は値上がり傾向になっている石油や鋼材など。直近の1年で2%上昇しており、これまた紛争を受けさらなる値上げになるという。
石油価格と直結しているオイル類は7%以上の上昇。石油から作る樹脂部品のコストアップについちゃ説明するまでもなかろう。脱石油部品の普及は進まない。
さらなる値上がり要因を抱えているのが、環境規制の強化によりニーズ高まる電動化車両&排気ガスのクリーン化に使われる貴金属や希土類。触媒に使われるパラジウムは5年前まで1g=3000円程度だった。
なのに直近だと1万円! ディーゼル車の触媒には5g以上使われているため、大幅な値上がり要因になってしまう。
ハイブリッド車に使われている大容量電池の素材(リチウムやニッケル、マンガンなど)の原材料高騰も止まらない。
電動化車両の原料についていえば、基本的に需要と供給のバランスが崩れかけていたことも大きい。
需要は増える一方。供給量は思ったより増えない。となれば売り手が強くなる。材料がないとクルマを作れないから、多少高くても購入しなければならなくなる。
半導体不足からくる調達コストの上昇を見れば驚くばかり。これを繰り返していくと、あっという間に高い相場展開となってしまう。すべての材料が高くなる、と言ってよい。
当然の如く自動車メーカー内で吸収することなどできないだろう。1400kgのクルマでいえば、下を見て1台あたり10万円。電動化車両は15万円近い調達コストの上昇を避けられない状況になってきた。
おそらくフルモデルチェンジだけでなく、マイナーチェンジや年次改良でも値上げを余儀なくされると考える。
値上げ幅だけれど、10万円は覚悟しておいたほうがよい。
もしクルマを乗り換える予定あるなら、今のうちに契約しておくことを推奨します。
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