3月の大統領選で勝利した韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が10日、就任した。任期は5年間。ソウル市内の国会議事堂で就任式が行われ、尹大統領は就任演説を行った。
尹大統領は
自由民主主義と市場経済の体制を基盤に国民が真の主人となる国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくらなければならないという時代的な要求を受けてこの場に立った
と語ったほか、北朝鮮問題について
北が核開発を中断し、実質的な非核化に転換すれば、国際社会と協力し北の経済と住民の生活の質を画期的に改善できる大胆な計画を準備する
などと述べた。
中国紙、社説で意外な就任歓迎
尹大統領の就任について、中国はどう見ているのか。5年ぶりの保守政権の誕生により韓国の対外政策も変化する可能性があるが、中国の大手紙「環球時報」はこの日、「中韓関係の処理は尹錫悦大統領こそ有望」との社説を掲載し、就任を歓迎した。
社説では、アメリカの存在について言及。
アメリカは韓国を取り込もうとする力をいっそう強め、NATOの触角を朝鮮半島や北東アジアにまで広げようとしている。米国は韓国をインド太平洋戦略におけるコマとして見ており、米国の出方が中韓関係にも大きく影響する。
韓国が米国主導の「対中包囲網」に組み込まれると、「韓国自身の利益を損ね、経済発展の勢いを失わせる」と指摘。尹大統領はかつて米メディアからの取材に対し「米中関係は共存共栄できると信じている」と語っていたといい、
米中関係の共存共栄のために韓国が建設的な力を発揮できれば、韓国の国際的な地位とイメージは日本を大きく引き離すに違いない。
と期待を込めた。
THAADミサイルに注視
中国側が特にポイントとして見ているのは、サード(THAAD)ミサイル配置についてだ。米陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイルシステム「サード」は2017年に韓国に配備され、中国は大反発し、韓国製品の不買運動にもつながった。
注目すべきは、尹大統領がこのたび発表した施政大綱でサードに関する部署の追加がなかったことだ。大綱では、韓国は中国と協力関係を維持発展させる必要があるとあった。
その上で、尹大統領は中韓関係にとって有望な存在であると持ち上げた。
中韓関係30年の経験から考えて、中韓関係を平穏に処理すべきは尹大統領こそもっとも有望であり、有益な政治的遺産も保たれるだろう。
最後は、韓国を誇りある民族と持ち上げた。
バイデン大統領は韓国を訪れた後に日本を訪問する予定だが、韓国世論は決して浮き足立ってはいない。米国による圧力は韓国の国家的利益に反するとの警戒心を抱いているのだ。こうした現実的で冷静な態度は、自立した誇りある民族ならば、すべからく持っているものである。
ウクライナ危機で西側陣営の結束が強まるなか、中国は米国への敵対心をより強めている印象。中国が尹政権を持ち上げているのは、韓国が西側に取り込まれるのを阻止したいという警戒心の現れと見ても良いかもしれない。