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東京・大手町の日経新聞本社(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

日本経済新聞社は10日、月刊誌の「文藝春秋」や「週刊文春」を発行する株式会社文藝春秋に抗議文を送ったと発表した。

月刊の文藝春秋や週刊文春では日経社内のパワハラ問題などを報じてきたが、抗議文では、「当社および関係者の関係者の社会的信用と名誉を著しく損なう記事を掲載し続けている」と主張している。

日経「社会的信用と名誉を損なう」

抗議対象となった記事の一つが、月刊誌の文芸春秋が7月特別号で掲載した「日経新聞で何が起きているのか」。これについて日経側は

当社および株式会社テレビ東京ホールディングス、株式会社テレビ東京のガバナンスや事業戦略、人事労務管理などについて、臆測を交え、事実関係を歪曲した極めて悪質な内容だ。

とクレーム。また、週刊文春3月31日号などで日経の社内事情について報じた記事内容についても

今回同様に断片的な情報と、匿名の一部社員らの臆測を含む証言をつなぎ合わせ、当社や関係者の評価を貶める内容でした。

などと否定した。その上で、

憶測や誤認に基づく記事で当社の社会的評価を低下させる貴社の報道姿勢を断じて認めることはできません。事実に向き合い、正確な報道に徹することを強く求めます。

と要求した。

日経が問題視した記事の内容は?

日経が問題視した記事はどのようなものだったのか。今月10日の発売号の月刊誌で掲載された「日経新聞で何が起きているのか」」は、日経と同社が筆頭株主であるテレビ東京HDとのいびつな関係をつまびらかにし、両社の関係を「日経が覆い隠してきた宿痾の病巣」と表現している。

記事は、日経新聞社からテレビ東京への天下り構造を皮切りに、「OK戦争」と言われる社内の派閥争い、それに端を発した同社幹部のパワハラ体質、疲弊しきった社員が若手を中心に大量離職していることなど、現在の日経新聞社が抱えるさまざまな問題点を指摘し、同社のコーポレートガバナンスを問うている。

記事は、「器が紙からデジタルへ変わっても、コンテンツ自体が評価されなければ没落は止められない。それには、『OK戦争』で荒廃しきった企業風土と底が抜けたガバナンスを立て直すことが先決だ」と結ばれている。

一方、週刊文春では3月24日号から4月7日号までの3回連続で掲載。「ウクライナ侵攻報道は千載一遇のチャンス」というメッセージを、同社編集局長の井口哲也氏が社内連絡ツールで社員に送っていたことを告発する記事や、「日経新聞の危機 依願退職53人、ハラスメント相談30件」の見出しの記事。さらに同社グループ長にパワハラで出勤停止2カ月の処分が下ったことを伝えた。

東京・紀尾井町の文藝春秋社の看板(写真:アフロ)

日経の“徹底抗戦”どうなる?

「文藝春秋」や「週刊文春」の一連の記事は、多面的な取材がなされており、豊富なリーク情報をもとに執筆されたもので、一読者からすると説得力のあるものに思える。しかし文春の“砲撃”に対し、日経側は記事内容を全面的に否定するなど“徹底抗戦”の構えを見せたことで、社内外でも波紋が広がりつつある。

関係者によると、一連の報道後、日経社内では「社外に情報を流すことは断じて許さない」という趣旨で社員に警告する通達が出ているというが、「プーチンのように統制を強めたからといって組織を根本から立て直さない限りがリークが続き、文春をむしろ怒らせてさらなる続報が出なければいいが…」という懸念が中から聞こえてきそうなのは気のせいだろうか。

それでも、日経側が、あくまで文春の記事が「事実無根」というのであれば、このような抗議文ではなく反証記事を出してみてはどうか。「文春 対 日経」が盛り上がって、年々部数が減っていく紙の新聞の部数増につながったり、会員数の頭打ちが指摘されている電子版の会員が増えたりするかもしれない。