中国の商務部は昨年11月、2025年までの第14次5カ年計画中に、累計7000億米ドル(約85兆円)の外国投資を誘致する目標(期待指標)を打ち出した。同国が「双循環」戦略で掲げる国内産業・市場の強化拡大には外国投資が欠かせない。通商摩擦は存在し、完全な政経分離はあり得ず、また日本企業が投資決断を下しにくい環境もある。しかしながら、サプライチェーン危機下で日中両国は相互補完関係の構築が見込める。日本企業は是々非々の姿勢で、中長期的視野に立った成長戦略を検討すべきだ。
20年までの第13次5カ年計画期間中、中国における外国直接投資は、前5カ年比10%増の6989億ドルと過去最高を記録。商務部によると、製造業では半導体や電子・電機関連など「ハイテク」に区分される投資の比率が10ポイント伸びて全体の3割超を占めた。経済成長が鈍化するなか、今5カ年の目標を直近実績と同水準に据え置いたことは、中国政府が産業高度化の推進役の一つとして外資に期待する証左とも受け取れる。
ロシアによるウクライナ侵攻は残念ながら、経済関係強化が地域の緊張緩和や紛争抑止を必ずしも保証しないことを示した。あるいは石炭や原子力の共同利用からスタートしたEU(欧州連合)の成功体験を基に、石油・天然ガスなどエネルギーを結節点として、EUが独自にロシアとの相互安全保障体制を醸成するもくろみがあったやもしれぬが、いったんは挫折したと言わざるを得ない。
一方、アジアでは今年1月にRCEP(地域的包括的経済連携協定)が日中両国を含む10カ国で発効。2月には韓国、3月にはマレーシアが加わり、発効国は12に増えた。加盟国間では化学品を含め関税が段階的に減免される。日本企業もRCEPをテコに、日中に東南アジア諸国、インドを加えた広域の化学品供給・調達網構築に動き出した。
中国では欧米化学企業が、CO2排出削減や省エネに寄与するファインケミカル分野で投資継続の姿勢を鮮明にしている。また広州(広東省)ではこのほど、スイスの医薬大手ロンザが日本円にして26億円超を投じ、高薬理活性原薬(HPAPI)の製造能力を増強した。同工場は世界市場へのAPI供給拠点と位置付けられる。中国を調達・供給拠点として捉えた場合の商機は言うまでもない。
必要十分条件でないとしても、緊張緩和に民間の取り組みが不可欠なことに変わりはない。地域の安定維持のため日本企業も主張すべきはしつつ、環境や持続可能性、半導体、5Gに関連する化学品市場で存在感を高めてほしい。
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