1986年、「自由劇場」出身者の大谷亮介さん、余貴美子さんとともに劇団「東京壱組」の創立メンバーとなった斉藤暁さん。テレビ、映画など映像の仕事も本格的にはじめることに。
そして1997年にはじまった『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で秋山晴海副署長を演じ、北村総一朗さん、小野武彦さんとともに“スリーアミーゴス”として人気を集めて大ブレイク。舞台、CM、バラエティ番組などにも引っ張りだこに。
◆スーパー戦隊シリーズで子どもたちの人気を集めて
劇団「東京壱組」には事務所がなかったため、メンバーはそれぞれ自分でプロダクションに所属し、舞台公演のときに集結することに。
「プロダクションには入ったけど、最初は全然仕事がなくてね。カツカツだったけど、でも、わりとすぐに何とか仕事だけで生活できるようになりましたよ。もう夢のようでした。CMが大きかったんだよね。1本CMをやったときに、1回で借金が返せるみたいな感じでね。うれしかったですよ」
-CMはオーディションですか-
「そうです。オーディション。オーディションに行くと、毎回同じメンツが受けているんだよね。同じメンツが回っているんだよ。いやになっちゃってね(笑)。でも、本当に助かったなあ」
斉藤さんはスーパー戦隊シリーズ(テレビ朝日系)への出演も多く、1993年『五星戦隊ダイレンジャー』、1995年『超力戦隊オーレンジャー』、1997年『電磁戦隊メガレンジャー』に出演。
「メガレンジャーでは久保田博士役やりました。あれもうれしかったですね。1年間できたわけだから。東映の撮影所まで、交通費を浮かすために原チャリで通っていましたよ(笑)」
-説明ゼリフも結構あったのですか-
「そんなでもなかった。だいたいは『頑張れ!』とか、『行くのだ!』という感じでね(笑)」
-子どもたちに声をかけられるようになったのでは?-
「それはありました。あと『うたう!大龍宮城』(フジテレビ系)というドラマもあって、カメの個人タクシーの運転手(亀山海吉)をやったんですよ。
そのドラマは、お姫様がいて、海が汚れたので龍宮城を再建するために、魚がみんな人間に変身して、地上でお金を稼いで、また海に戻っていくという壮大なストーリーだったんですよ。
そういうストーリーだということを後から聞いて、『えっ?そうなの?』って驚いたんだけど、はじめはそんなこと知らないでやっていたんですよ。やっているうちにわかったの。
僕はセリフがないんですよ。パントマイム。だから全然覚えなくて良かったんです。頷(うなず)いたりなんかするだけですから(笑)。セリフはお姫さまとか王様が言うの。王様はエド山口さん。そういうことがないと知り合いませんよね。おもしろかったですよ。
今でも『子どものときに見ていましたよ、亀山さん』って声をかけられることがあるんですよ。結構いい年齢のおばさまに。そりゃそうだよね。1992年のドラマだから30年前だもん(笑)。でも、子どもの頃に見ていた方の記憶に残っているというのはうれしいですよ」
◆『踊る大捜査線』シリーズで大ブレイク
1997年、『踊る大捜査線』の放送がスタート。斉藤さんは秋山晴海副署長役で出演し、北村総一朗さん演じる神田総一朗署長と小野武彦さん演じる袴田健吾刑事課長の3人で「スリーアミーゴス」と呼ばれ大人気に。
-『踊る大捜査線』に出演されることになったのは?-
「事務所に依頼が来て北村さんと小野さんとやることになったんだけど、みんな10歳くらいずつ年齢が違うんですよ。『踊る大捜査線』がはじまったとき、僕は44歳くらいで小野さんが55歳ぐらい、北村さんが62歳だったかな?
それが何年もやったでしょう? だからすごいよね。僕は小野さんより11歳年下なのに、あのドラマでは上司の役をやっているんだもん。『いいのかい?これ』って。やりづらいやりづらい(笑)。あれはいまだに小野さんに会うと『俺やりづらかったんですよ』って言っていますよ」
-『踊る大捜査線』で大ブレイクされましたね-
「そうですね。おかげさまで。『スリーアミーゴス』って僕以外の2人、北村さんと小野さんは新劇出身なんですよ。僕だけがアングラじゃないですか。新劇のすごさというのが、あの二人でわかりましたよ。勉強になりましたね。
毎回北村さんが『ちょっと集まってくれ』って言うんですよ。それでまだみんな撮影する前に、僕らのシーンを練習するんですよ、延々と。三つか四つしかセリフがなくて簡単なシーンなんだけど、何十回も練習をやるんですよ」
-プロデューサーだった亀山千広さんが舞台版のときに、お三方は1時間くらい前から毎回練習をされていたとおっしゃっていましたね-
「そうそう。1時間どころじゃないですけどね。もっと練習していましたよ。だから『舞台をやりましょうよ』って、僕が言ったの。そうしたら、北村さんと小野さんは、『舞台なんてないよ。なるわけないじゃない』って言ったけど、舞台になったもんね(笑)。
それで『3人で歌でも歌いましょうよ』って言ったら歌になったしね。二人とも『そんなのない』って言っていたんですよ。『映画になる』ってなったときにも『映画にしちゃダメだよ。絶対にダメ。お客さんが来ない』って言っていたけど、ドカンでしょう? あの二人は新劇だから真面目なんですよ。
僕はアングラだからさ、『せっかくだからやりましょうよ』って言ったら、全部実現したもんね。すべて言ったとおりでしょう? でも、すごかったんですよ、二人と練習するのは」
-毎回1時間も-
「いやいや、そんなもんじゃない。もっとやりましたよ。僕たちが朝8時半に来ているのに撮影が押すこともあるじゃない。午前中に撮影するはずだったのがお昼になって、待ち時間もずっと練習。
『もういいんじゃないですか』って言うと、『お前のためにやっているんだ』って言うんです、北村さんが。『ホントかなあ』って(笑)。それでお昼になって、『メシ食いに行こう』って行くでしょう? それでメシ食っている最中にもセリフをやり出すんだからね。
こっちはもうビックリだけど、やり出したからセリフを言わなくちゃいけない。食べながら3人でやるんだからね。好きなのよ(笑)」
-練習の成果もあって、お三方の息もピッタリで、毎回テーマ曲が流れるとワクワクしました-
「それだけ裏で練習をやっているんですよ。それで取材されたときなんかは『練習なんて全然やっていませんよ』って言っているんだからね。誰よりも練習をやっているのにさ(笑)」
大人気となった「スリーアミーゴス」は、スピンオフ作品やCM、イベント、バラエティ番組にも出演。「スリーアミーゴス」を主役にした舞台版『舞台も踊る大捜査線 ザッツ!!スリーアミーゴス』も計5回公演で上演された。人気俳優となった斉藤さんは多くの映画、テレビ、舞台に出演することに。
次回後編では『科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)の撮影エピソード、特技のトランペット、声優をつとめた映画『とんがり頭のごん太-2つの名前を生きた福島被災犬の物語-』などを紹介。(津島令子)