もっと詳しく

ここ数日、九州と韓国・釜山を海底トンネルで結ぶ「日韓トンネル」構想がネットで再び注目されている。日本と韓国を海底トンネルで結ぶ案は、古くは戦前の日韓併合期にまでさかのぼる。

※赤の点線は現在の航路(bogdanserban /iStock)

日韓トンネルは佐賀県・唐津から壱岐島、対馬を通って韓国・釜山まで全長約250キロを結ぶルートなどが想定されており、海底部分は150キロに達する。建設費用は、10兆円。北海道と本州を結ぶ青函トンネルが全長54キロ、海底部23キロであることを考えると、極めてスケールの大きい工事と言える。

もともと、1980年代に旧統一教会(現:世界平和統一家庭連合)が日韓トンネルの建設を提起し、推進してきた経緯がある。現在も、旧統一教会の関連団体である一般財団法人「国際ハイウェイ財団」が、調査や研究を続けている。同財団のホームページには、次のように書かれている。

日韓トンネルが日本と韓国の愛の架け橋になり、平和のトンネルになることにより、真の平和が生まれてきます。

日韓トンネル構想は、その後も2002年日韓ワールドカップの際などに浮上したが、具体化は進んでいない。朝鮮日報によると、最近では、釜山市長選前の21年2月、韓国の最大野党「国民の力」非常対策委員長(当時)の金鍾仁(キム・ジョンイン)氏が、

釜山・加徳島と日本の九州をつなぐ日韓海底トンネルも積極的に検討する

と明らかにした。経済効果は約5兆円、雇用誘発効果は45万人だという。建設費については日本側が7兆円、韓国側が3兆円と試算した。金鍾仁氏の発言を機に、日本でも新聞各紙やテレビなどが取り上げ、再浮上した。

ネットでは厳しい声

6月9日には、読売新聞社と韓国日報社による共同世論調査が報じられ、今後の日韓関係について「良くなる」との回答が日韓とも上昇。日韓関係への注目が集まり、ネット上で再び「日韓トンネル」が話題となった一因と見られる。だが、ツイッター上では、以下のような反対意見が大半を占めた。

日韓トンネルって、今の日本からしたらそこまで優先度高くないと思うんよな
それを作るなら、その金を経済対策とか教育・子育て支援に回した方がええと思う

日韓トンネルの話題だけど、そもそも150km近くも海底を走るなんて危機管理的に絶対通りたくないやん。海底地盤も決して強い訳ではないらしいし。どんなメリットがあるんだろ

とはいえ、構想自体は面白いという声もあった。

日韓トンネルは。
純粋に「土木工学」「海底地質」「海底地形」的にはとても面白いなぁと思っており。
やるやらないは政治的な問題が色々あるから、それはそれとして。
純粋に工学的な実現の可否の研究は面白いと思う。

実現性は極めて低いが、「もしも作るとしたら……」という架空の話としては、確かに興味深い話ではある。

※画像はイメージです(lexmartin /iStock)

地元の反応は?ご当地在住、中川淳一郎氏に聞く

日韓トンネルの起点とされる佐賀県・唐津に住むネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、構想についてこう語る。

地元では全然話題になってないですね。「どうせ実現せんやろうが」と思っている人がほとんどでしょう。

対韓感情も複雑だという。

2012年には韓国の窃盗団が対馬から仏像を盗んだ事件があり、韓国について批判的な考えの人も少なくありません。無理にトンネルを作ることで、両方の国民に変な軋轢が生まれる恐れもあるように思います。

利便性の向上についても、疑問視した。

すでにフェリーや飛行機で行き来できるので、新たにトンネルができても利便性はそれほど変わらないのでは。地元としては、玄海原発の再稼働の是非や、玄海町との合併などの問題のほうが、ずっと切実です。日韓トンネルは、わざわざ作る必要はないんじゃないかと思います。

実現すればすごいことだが、夢物語にとどめておくのが良さそうである。