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スポーツカーも顔負けのハイパフォーマンスマシンだった!! “特別”な赤帽サンバーの今昔

 軽トラック、軽1BOXバンという軽商用車ながら歴代RR構造、四輪独立サスペンションを採用するなど、マニアックな魅力を持っていたスバル自社製サンバーの生産終了から2022年で10年が経った。

 サンバーは現在ダイハツ ハイゼットのOEMとなっているが、その中でも特別な存在だったのが軽商用車を使った個人による貨物軽自動車運送業者の組合となる赤帽が使っていた「赤帽サンバー」である。

 ここでは最終型スバル自社製サンバーをマイカーにしていたこともある筆者が、赤帽サンバーの今昔などを解説していく。

文/永田恵一
写真/SUBARU

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■そもそもサンバーとはどんなクルマだったのか

1961年登場の初代スバル サンバー。リヤエンジン方式をキャブオーバーレイアウトに組み合わせることで、当時の軽4輪トラックと比べて低床かつ広い荷台を実現していた

 初代サンバーは1961年にスバル360のRR構造を使った軽トラック、軽1BOXカーとして登場した。

 初代サンバーは軽商用車ながら特に軽負荷のときのトラクション(駆動力)確保に貢献するRR構造に加え、当時乗用車でもあまりなかった四輪独立サスペンションにより、ガラスや豆腐といった「壊れやすい荷物にも優しい」といった強みもあり、堅調に売れ続けた。

 サンバーは歴代モデルともに10年ほど生産されるのだが、ターニングポイントとなったのが1990年登場の5代目モデルだ。

 5代目サンバーは軽自動車の規格がボディサイズに加え、排気量も550ccから660ccに拡大されたのを期にフルモデルチェンジされたモデルで、このモデルからエンジンはスーパーチャージャーもある4気筒となり、サンバーは軽商用車においてより孤高の存在となった。

 スバル自社製としては最後となった6代目サンバーは1999年登場で、このモデルも衝突安全性確保のため軽自動車の規格が現在のものに拡大されたのもあり、サンバーも短いノーズを持つようになった。

 筆者は2001年式の6代目サンバートラックのスーパーチャージャー+4WDに乗っていたのだが、まずパワートレーンのスペックが「RRベースの4WD、過給器付、4WDのMTは1速より低いEL(エクストラロー)があるので実質6速」と、軽トラックながらポルシェ911ターボのようである(笑)。

2012年3月、スバルはサンバーバン/トラックの生産を終了し、54年の軽生産の歴史に幕を閉じた。写真は2009年9月~2012年3月まで生産された最終モデル

 さらに個人売買で買った私のサンバーの前オーナーは私のボスである国沢光宏氏で、このサンバーは国沢氏がカートを運ぶために買ったものだったのもあり、2代目インプレッサWRX STIの生地を使ったシートや3代目レガシィのマッキントッシュオーディオが付いているなど、軽トラックとは思えないカスタマイズが満載であった。

 軽トラックとは思えないのは乗っても同じで、高速道路の追い越し車線の流れに余裕を持って乗れる動力性能をはじめ、流行りの車高アップをした際にダンパーにも手を加えるとユッタリとした動きになった足回りなど、軽トラックらしいプリミティブな運転する楽しさを持ちながら、快適性も高いという実に面白いクルマだった。

 ただ、燃費だけは芳しくなく、自分の経験もあり「荷物満載かつ、荷台をより高くしていることも珍しくなく、ペースの速い赤帽サンバーの燃費はどうなんだろう?(それも考慮してかスバル自社製最終型サンバーの燃料タンクは40リッターと軽自動車としては大きかった)」とよく思ったものである。

■街でよく見かけたけど実は特別! スバルが手掛けた赤帽サンバーの中身とは!?

2004年の東京モーターショーに出展された赤帽サンバー

 赤帽サンバーは1970年代半ばに赤帽が発足し、当時の軽商用車は「走行距離の長さやペースの速さといった、赤帽の厳しい使われ方に対応できない」という赤帽からの要望に対し、スバルが赤帽専用車を引き受けたという経緯で生まれたモデルだ。

 3代目モデルから加わった赤帽サンバーは赤帽の厳しい使われ方に対応し、スバル自社製としては最後となる6代目サンバーでは以下のような手が加えられていた

●機能面
・専用エンジンは、4気筒スーパーチャージャーをベースにクランクメタル、ピストンリング、シール&ガスケット類の強化、白金プラグの採用などが行われ、耐久性、信頼性、動力性能、燃費といった性能を向上。
 さらにヘッドカバーは3代目モデルの頃からインプレッサWRX STIのインテークマニホールドのような赤いちりめん塗装だ!
・フロントディスクブレーキにパッド摩耗センサーを追加

●キャビン内
・パーキングブレーキは仮眠の際などに便利な収納式
・電源ハーネス追加(無線機の使用などのため)
・高照度ルームランプ
・強化レザー表皮シート(耐久性の向上に加え、カラーも赤帽の制服に合わせたものに変更)
・地図などを置くのに便利な頭上のオーバーヘッドシェルフ

●エクステリア
・エアダム一体バンパー(走行安定性向上のため、私のサンバーもこれが付いていた)
・複合曲面ミラー(通称おけさミラーと呼ばれるもので、左側のドアミラーをノーズに移動し視認性を向上)

 といった仕様になっており、商用車と競技ベースという目的こそ違うが、スバル自社製の赤帽サンバーは赤ちぢみ塗装のヘッドカバーが象徴するようにインプレッサWRX STIのようなクルマだったのだ!

■現在の赤帽サンバーはどうなってるのか?

 スバル自社製サンバーの生産終了以来、サンバーはダイハツハイゼットのOEMとなっているが、赤帽サンバーも継続中だ。現在、赤帽サンバーは2021年12月にビッグマイナーチェンジされたハイゼット、フルモデルチェンジされたハイゼットカーゴベースとなっている。

ダイハツ ハイゼットのOEMとなった現行型サンバー

 現在の赤帽サンバーに装着される主な特別装備をハイゼットの幌付トラックで見てみると、

●機能面
・リアサスペンションの4枚リーフ(加重が重い時にも耐えるためのもので、標準車にも設定あり)

●キャビン内
・プリントレザーシート
・オーバーヘッドシェルフ

●荷台
・夜間消音式バックブザー
・赤帽用インナーフック

 と、スバル自社製時代に比べるとそれほど目立つものはなく、むしろ自動ブレーキ、LEDヘッドライト&フォグランプ、パワーウインドウ、プッシュボタンスタート、デジタルルームミラーといった乗用車的な装備品が付くことのほうが目に付くくらいだ。

 この点に関しては、クルマ好きだと残念に感じるかもしれない。しかし、サンバーがスバルからダイハツに引き継がれる際にスバルから赤帽サンバーの評価方法や評価基準が開示され、対応しているとのことなので、見方を変えれば標準車にそれほど手を入れなくても赤帽車に対応できるようになったとも解釈できる。

 このことはスバル自社製赤帽サンバーを通じたダイハツの軽商用車の基本性能向上として、歓迎すべき点とも言えるのではないだろうか。

■赤帽のサンバーの中古車は買えるのか?

 新車は赤帽に加入しないと買えない赤帽サンバーだが、中古車検索サイトを見るとスバル自社製最終型が20台ほど流通しており、中古車なら購入可能だ。

 流通している元赤帽サンバーは、赤帽カラーは剥がされ、幌が外され平トラックになっているものなど姿はさまざまで、当然ながら20万キロ越えの走行距離も当たり前だ。

 元赤帽サンバーの中古車価格は50万円から160万円といったところで、スバル自社製最終型サンバーのスーパーチャージャーの中古車価格が40万円から200万円というのを考えると、高くないともいえる。

 それだけに「クルマ好き視点でスバル自社製サンバーを買う」というなら、いろいろな意味でマニアックな魅力も含め、元赤帽サンバーはアリな選択肢なのではないだろうか。

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