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 道路でタイヤが浮かんだまま走っているトレーラを見たことがあるだろうか? 初めて見て、ドキッとした方もいるかもしれないが、それは「リフトアクスル」という機能。文字通り車軸(アクスル)を浮かせる(リフト)ものだ。

 リフトアクスルは、日本のトレーラはもちろん、欧米ではトラック/トレーラに幅広く採用されているもの。燃費向上やタイヤ摩耗低減などに寄与するが、日本には、ほかの国や地域には存在しない、とてもありがたいメリットが存在するという。

 一体どんなメリットがあるのだろうか? 知られざるリフトアクスルの秘密に迫った!!

文/トラックマガジン「フルロード」編集部 写真/各メーカー、トラックマガジン「フルロード」編集部


そもそもリフトアクスルとは?

空車時や軽量貨物積載時に車軸を持ち上げる機能がリフトアクスル。燃費向上などに寄与することから、世界のさまざまなトラック/トレーラが採用している

 リフトアクスルは、空車時や軽量貨物積載時など、車軸にかかる荷重が軽い時に、自動的に車軸をリフトさせ、タイヤが接地しないようにするシステム。車軸にかかる荷重がある限度を超えて重くなると、自動的に車軸が降りてきて、荷重を分散させる。

 どうしてタイヤを浮かせるのかというと、接地するタイヤの本数が減ることで、路面抵抗が少なくなり、結果として燃費が良くなるから。また、タイヤやブレーキパッドの摩耗を低減することにもつながる。

 機械制御式、電子制御式の2タイプが存在し、近年は電子制御式が主流。どちらも車軸の荷重を監視し、既定値を超えるまたは下回る場合に、エアサスのエアバッグの膨らみ方を調節して、車軸のリフトまたはダウンを行なう。

 国内では実質的にエアサスペンション式の2軸/3軸セミトレーラ専用の装備となっているが、欧米では単車/連結車を問わず幅広い車両が採用。車軸を増やすことでより大きな車両総重量が得られるアメリカでは、積載量を稼ぐためリフトアクスルを活用する特装車も存在する。

 いっぽう、日本は車軸を増やしても車両総重量を増やすことができないため、単車へのリフト・アクスル採用はない。ちなみに、日本で一番最初にリフトアクスルを製品化したのは、NIPPON EXPRESSホールディングス子会社のNX商事(旧:日通商事)とされている。

リフトアクスルで高速料金が安くなる!?

日本の高速道路の車種区分は3軸までが大型車、4軸からは特大車となる。もっとも大きな特大車料金は大型車料金より4割近くも高い

 国内でエアサスペンション式の2軸セミトレーラがリフトアクスルを採用する理由は、もちろん燃費向上やタイヤ/ブレーキパッドの摩耗低減もあるが、一番はやはり高速料金が安くなるからだろう。

 日本の高速道路の車種区分は、ざっくりいうと車軸の合計の数が3軸までなら大型車、4軸から特大車。つまり2軸セミトラクタに2軸/3軸セミトレーラを組み合わせる場合、リフトアクスルを使ってトレーラ側の車軸を1軸にすることで、特大車から大型車へプライスダウンが可能となる。

 例えば東名高速の東京IC〜名古屋ICを走る場合、車種区分が特大車だと1万9800円だが、大型車なら1万1900円で通行可能。通常、往路は荷物を積んで走行するため、復路が空車または軽量貨物積載時にリフトアクスルを使うことで、片道分の料金が約40%安くなる計算だ。

 合計金額は、どちらも特大車の場合で3万9600円、往路が特大車で復路が大型車の場合で3万1700円で、差額は7900円。同ルートを年間100往復する場合、1台で年間79万円の節約となる。もちろん、複数の車両を保有する場合は、より大きな金額が節約可能となる。

 これにより、利益を生まない空車時でも高速道路を使いやすくなり、結果としてドライバーの拘束時間低減などにもつながる。ドライバー不足でトレーラ導入が進む中、リフトアクスルは今後ますます注目される装備といえそうだ。

 なお、リフトアクスルの「どの車軸を残すか」だが、2軸車は一番後ろを残すのが基本。いっぽう、3軸車は一番後ろ残し、真ん中残しの2パターンが存在。前者はリアオーバーハングが変わらず、後者は最小回転半径が小さくなるなどの特徴があり、用途に応じ使い分けられている。

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