911 RSR 93号車でGTE-Amにエントリー
第90回ル・マン24時間レースは、6月11~12日にフランスのサルト・サーキットを舞台に決勝レースが行われる。そしてこのレースにて、マイケル・ファスベンダーはポルシェのカスタマーチーム「プロトン・コンペティション(Proton Competition)」の911 RSRで参戦。彼は2021年のル・マンのテストデイに参加しているが、決勝レースを走るのは今回が初となる。
プロトン・コンペティションの93号車でファスベンダーのチームメイトを務めるのは、ポルシェ・ワークスドライバーのマット・キャンベルと、カナダ出身のザカリー・ロビション。ふたりと共にGTE-Amカテゴリーにエントリーするファスベンダーは、次のように意気込みを語った。
「ル・マン24時間レースへの出場は私の夢でした。夢というのは、自分がどれだけの労力を費やしたか、どれだけの挫折を味わったか、そんなことは考えないものです。このレースに出場するために必要なことを学んできましたし、戦えるだけの手段も得てきています。自分のポテンシャルをフルに発揮できる魅力的な機会が目の前にあるのです。これは一度しかないチャンスです、とにかくベストを尽くしたいですね」
パトリック・デンプシーとの出会い
ファスベンダーのモータースポーツキャリアは、数年前、ロンドンからロサンゼルスへと向かう長距離フライトで、同じハリウッドスターのパトリック・デンプシーと出会ったことから始まった。
デンプシー・プロトン・レーシングの共同オーナーで、ル・マン24時間参戦経験を持つデンプシーは、ファスベンダーとの気軽な会話後、彼がレース参戦を夢見ていることを知り、すぐにポルシェのモータースポーツ・マーケティング担当責任者に連絡を取ったという。
そして、2018年にファスベンダーがル・マン24時間レースを訪れた際、彼のル・マンへの道(Road to Le Mans)をサポートするプランが具体化。モータースポーツ初心者のハリウッドスターに密着するYouTubeシリーズがスタートして、一連の動画シリーズのタイトルも『Road to Le Mans』が採用された。
ファスベンダーはまずモータースポーツ入門プログラムのポルシェ・ドライビング・エクスペリエンスに参加し、レース参戦に向けた本格的な第一歩を踏み出した。ポルシェ・レーシング・エクスペリエンスを経て、ポルシェ・スポーツカップ・ドイツで1シーズン、そしてポルシェ・モービル1スーパーカップに911 GT3カップで参戦を果たしている。
ヨーロピアン・ル・マンで表彰台を獲得
ル・マン24時間参戦をターゲットに、ファスベンダーは2020年シーズン、プロトン・コンペティションからヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)に挑戦。チームメイトのリチャード・リーツ、フェリペ・フェルナンデス・レーザーとともに、4レースで47ポイントを獲得し、GTEクラスで6位を得た。
2021年シーズンも同じ体制で参戦し、6レースで61ポイントを獲得して最終ランキングは5位。このシーズン、ファスベンダーは2021年10月末にポルトガル・ポルティマオで開催された最終戦で2位となり、ELMSにおいて初ポディウムを経験した。
「この表彰台は、チーム全員にとって非常に重要な経験になりました。過去3シーズン、失意や挫折を味わい、チャンスを逃してきただけに、この結果は信じられないほどの喜びになったのです」と、ファスベンダーは振り返る。
YouTubeでファスベンダーの挑戦を公開中
他のルーキードライバーと同様、ファスベンダーはル・マン24時間デビューにあたり、ある“条件”をクリアしなければならなかった。
ル・マン24時間初参加のドライバーには、シミュレーターテストをクリアすることが義務づけられている。全長13.626kmという長距離を誇るサルト・サーキットは、他のサーキットとは異なる安全対策が採用されているため、実戦を前にセーフティカーの導入やピットイン&アウトに慣れておかなければならないのである。
ELMSでチームメイトのリーツは、ファスベンダーの近くで彼の成長を見守ってきたひとりだ。
「マイケルは天性の才能に恵まれてきたわけではありません。ただ、凄まじい努力を続けてきました。だからこそ、ル・マン24時間レースへの挑戦を準備するため、彼をサポートしようと思ったのです。彼のポテンシャルは、一緒に戦った最初のシーズンですぐに分かりました」と、その努力を高く評価している。
ファスベンダーの挑戦は、ポルシェが展開するYouTubeシリーズ『Road to Le Mans』にて配信中。現在、シーズン3の第9回までが公開されており、シリーズ合計で7500万回もの再生回数を記録している。