岸田首相とイギリスのジョンソン首相が今週4日(現地時間)の首脳会談で、自衛隊とイギリス軍の防衛協力を加速する「円滑化協定」に大筋合意したことで、韓国が週明けの政権交代を前に焦りを深めているようだ。
保守系の論調で知られる朝鮮日報(日本語版)は7日、「120年前のロシアけん制再び…復活する英日同盟」と題した記事を掲載。20世紀初頭、東アジアで軍事的プレゼンスを高めていたロシアに対抗すべく、日本とイギリスが軍事同盟を結んだ歴史になぞらえつつ、「ロシア・中国けん制を目的に同盟関係を復活させようとしている」と指摘。首脳会談の模様や自衛隊・英軍が相手国に入国する際の手続きを簡素化するなどの円滑化協定の内容を詳しく紹介した。
そして朝鮮日報は、韓国側の懸念を反映するように昨年9月、米英豪3か国が設立した安全保障の新しい枠組み「オークス(AUKUS)」に「次の段階としては日本の参加が予想されている」との見方を披露。韓国が「オークス」にも、日米豪印4か国が加盟する「クアッド」にも参加できていないことから、
英日同盟の強化は韓国がアジア太平洋地域における自由民主主義諸国の軍事同盟ラインから疎外される要因になるとの懸念もある
アジア太平洋地域で韓国を外し米国、日本、オーストラリア、インド、英国の5カ国による軍事協力だけで自由民主陣営の防衛が可能という最悪のシナリオが固定化しかねないということだ。
との憂慮を示した。記事は2本立てで7日夕方に日本語版にアップされたが、瞬く間に24時間ランキングで1、2位を占める反響を呼んでいた。
韓国は週明け9日、日韓関係を壊し、中国、北朝鮮に融和的な姿勢だった文在寅政権が任期満了で退陣する。翌10日に正式に就任する尹錫悦次期大統領は、日本との関係を改善し、日米韓3か国での安全保障協力を強化したい意向を公言し、先月24日には、日本に政策協議のための代表団を派遣した。
代表団には、日本側が日韓議連の国会議員だけでなく、岸田首相や林外相らが会談に応じたことで韓国側は、やや楽観的なムードもあるようだ。しかし、岸田首相はウクライナ情勢や北朝鮮情勢を念頭に「日韓関係の改善は待ったなし」と述べつつも、「徴用」問題など「両国間の懸案の解決が必要だ」と釘を刺すのも忘れていなかった(発言はNHKニュースより)。自民党内でも外交部会・外交調査会所属の議員からは「会うのはおかしい」と疑問視する声が出るなど、日韓関係の具体的な改善見通しは立っていない。
保守系の朝鮮日報の論説は、そのまま新政権の焦り、ひいては韓国民の嫉妬を投影していると言えそうだ。しかし日本から見れば、韓国側が日英の軍事関係の緊密化に「疎外」を感じてしまうのは“自業自得”としか言いようがない。
韓国の歴代政権は保守系でも最初は親日的な姿勢を見せても、政権後半に国内の支持率が厳しくなると「反日」路線に転換してきた経緯もあることから、日本側の不信感は根強く、新政権の対日外交はマイナスからのスタートと言えそうだ。