2022年5月2日、トヨタは新型EV「bZ4X」の価格を発表。個人はサブスクリプションサービス「KINTO」、法人はリースでの契約となっている。
このたび、発表された価格は、申込金77万円、初年度月額10万7800円に決定。CEV補助金を活用すると、月額8万8220円で契約することができる。契約5年以下では解約金が発生する。5年以上乗り続けることで、リーズナブルな価格になっていく。いっぽう、トヨタと共同開発したスバルソルテラは現金一括、クレジットでの販売も行っている。
名車フィアットの新型EV「500e」も、bZ4Xと同じくリース契約での展開になっている。5年契約で行う。任意保険含む「FIAT ECO PLAN」も登場。生活に合わせたプランが選択できる。
価格、バッテリーなど電気自動車に対する不安を持つユーザーに寄り添うかたちで「サブスクリプションサービス(サブスク)」という販売方法が登場。いかに電気自動車を安心安全に長く活用していくか、が今後の焦点にあたるだろう。
そこで、本稿ではサブスクとEVの相性について考察していく。販売するよりも、サブスク、リースのほうがうまく活用できるのか、バッテリー劣化の不安はどうなっていくのか、にについても解説。
文/御堀直嗣、写真/TOYOTA、NISSAN
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EVによるサブスク活用の背景とは
トヨタのbZ4X、そしてフィアット500eは、電気自動車(EV)の販売方法として、サブスクリプションまたはリースに限定している。いっぽう、bZ4Xと共同開発したSUBARUソルテラは、現金一括やクレジットでの販売も行う。
トヨタやフィアットの動向から、EVは、サブスクリプションやリースで利用するものなのかといった印象を持つかもしれない。だが、そのようなことはない。
初年度に5000台の市場導入をはかるトヨタは、個人向けとしてトヨタ独自のサブスクリプションであるKINTO、法人向けではリースでのみで契約を行う。その理由としてトヨタは、バッテリー劣化や、それに伴う下取り価値の下落に対する不安をやわらげ、販売台数を追うより長く乗り続けてもらうことが目的であると語る。
同時にまた、EVが処分される際に残存価値のあるリチウムイオンバッテリー回収を、確実にするためでもあるという。KINTOであれば、保守のための整備代も月額料金に含まれるので、故障などへの心配も減るとしている。
フィアット500eを扱うステランティスでは、充実した保守管理を組み入れることにより、バッテリーを含めたクルマの調子を長く適正に保てることで、持続可能性に貢献できるとする。
しかし、EVは、そもそも故障が少ない。リチウムイオンバッテリーを除き消耗部品も限定的であるのが特徴だ。エンジンオイルは不要であり、ブレーキパッドの減りも少ない。
それによって、米国のテスラは整備工場を併設する販売店網を大々的に展開しなくても、ことに米国では、出張サービスによる修理を行っている。
韓国のヒョンデ(現代)自動車が、日本市場へ再上陸する際、EVと燃料電池車(FCV)に限定した背景にあるのは、導入の中心となるEVでは、テスラの取り組みを参考に販売店網を大々的に日本に設けなくても、安心して利用してもらえると考えたからだ。担当者はこう話す。「路上でエンジンオイル交換はできませんよね? EVなら、通常の整備はどこでもできます」
テスラは、所有者が気付かない兆候も通信によって事前に察知し、故障が起きる前に所有者へ知らせることさえ行っている。
エンジン車やハイブリッド車(HV)に比べ、EVは圧倒的に保守管理が楽で、なおかつ故障が少なく、安心して乗り続けられるクルマなのだ。ことにモーターに関しては、車体が廃車となっても次のクルマで使えるほど長持ちするとさえいわれてきた。
整備代込みの定額は安心だといっても、そもそもEVに多額の整備代が掛るとは思えない。万一、リコールが生じても、それは無償改修となるはずだ。
気になるEVのバッテリー劣化と再利用対策とは
リチウムイオンバッテリーの劣化は、十数年前に、三菱i‐MiEVや初代リーフが発売された当時に比べはるかに改善され、中古車価格が大きく値崩れするようなこともなくなっている。
中古車価格の下落の可能性はエンジン車も同じであり、新車時に不人気であったり、同じ車種でも車体色によって下取り価格に差が生じたりしてきた。下取り値段を気にする日本人の多くが、無難な白いクルマしか買わないといった様子が長年あった。
しかし逆にいえば、数百万円もするような高額商品を買うのであれば、自分が好きな色のクルマを買ってこそ、満足感は高まるのではないだろうか。不人気車種でも、自分が好きだと思うクルマを買う方が、暮らしを活き活きできるのではないか。
海外でも人気車種や人気の車体色はあるが、下取り値段を気にして好きな色を買わない話は聞いたことがない。海外では損得だけでなく、自分の人生をいかに充実させられるかに重点が置かれているといえる。一度買えば、数年は共にするクルマなのだから。
廃車後のバッテリー回収について、リチウムイオンバッテリーは、EVとしての役目を終えたあとも60~70%の容量を残すため、そのまま廃棄したり、素材へリサイクルしたりしたのでは、製品を使い切らず捨てることにつながる。
そこで、再生可能エネルギーによる発電の後ろ盾となる充電や、緊急時の停電防止の支援といった使い道がある。
EV後のリチウムイオンバッテリーをいかに回収できるかが、資源の有効活用や、自然環境保護を踏まえた持続可能な社会づくりに役立つ。また二次利用では、製造での二酸化炭素(CO2)排出を考慮せず設置できる。EV製造時にすでに計算済だからだ。
日産自動車は、初代リーフ発売の前にリチウムイオンバッテリーの二次利用に備えたフォー・アール・エナジー社を設立し、すでに事業をはじめている。JR東日本の踏切の警報装置の支援として、それまでの鉛酸からリチウムイオンバッテリーの二次利用品へ交換している。
数年で交換が必要だっていた鉛酸バッテリーが、二次利用のリチウムイオンバッテリーなら10年近く交換せずに済むようになる。しかも充電時間は短く、導入原価も4割ほど安くできる。このため、無線設備などへの拡大採用なども検討されている。
いっぽう、トヨタ自身、どのような二次利用の仕方があるのかまだわからないと述べている。事業化していないのだから当然だ。そして確実な回収こそがまず重要だとするが、EVはリーフの例にもあるように、どこでどのように使われているかは通信によってすべて情報を把握できている。
サブスクリプションやリースのほうが回収作業は容易だろうが、販売しても回収できないわけではない。
起業の都合で消費者の選択肢を制限するのは本末転倒だ。消費者は、常に自由な選択肢を得る権利があり、その後の対策は企業が責任を負うべきである。EVよりはるかに安いスマートフォンでも、メーカーが回収に携わっている。
そのうえで、サブスクリプションやリースは、EVに限らず、今日の暮らしに浸透した物の利用形態であるのは事実だ。
サブスク時代へ 自動車業界はいかに
過去20年以上所得が上昇しない現代にあって、手持ちの収入のなかでいかに快適で充実感のある暮らしを営むかというとき、使える金額の範囲内で利用できれば、日々喜びを引き寄せることができる。定額払いはそのための生活術だ。
スマートフォンはもとより、音楽の配信や、スポーツジムの利用など、様々に定額利用による利便性と安心がある。
これまで意識されることの少なかったクルマの利用においても、EVであるかエンジン車であるかを問わず、サブスクリプションという選択肢はあり得る。さらに広がるだろう。現金一括やクレジットと別の選択肢が、消費者に新たな機会をもたらす。
クルマの利用にサブスクリプションやリースが日本で導入されることは歓迎だ。同時に、所有する喜びを味わいたい人もあっていい。ところがサブスクリプションやリースに限定するのは、企業の都合でしかない。無駄な手間はかけたくない、余計な損はしたくないという話だ。
もちろん損をしないクルマの買い方を好む人もいていい。だが、EVだからエンジン車に比べ不安や心配が大きくなり、それを回避するには、定額料金の利用が無難だという発想は、もはや10年前の遺物といえるだろう。
逆に、もしいまもそう自動車メーカーや輸入業者が考えるのであれば、現在の技術をもってしても、よほど商品に自信がない証拠といえるのではないか。
EVの市場導入の遅れは、単に商品性の遅れだけでなく、意識の遅れともなり、将来に禍根を残すことになりかねない。選択肢が限定されるほど、顧客は離れ、他社のEVに目が行くことになるかもしれない。
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投稿 ついに価格正式発表!! なぜトヨタbZ4Xは定額制だけ? EVとサブスクは本当に相性が良いのか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。