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廃バッテリーが莫大な「富」に!!? GM子会社が無人タクシーの一般乗車試験を開始 ほか クルマ界近未来ニュース3選

 本誌『ベストカー』にて、毎号テック系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。

 今回は、EVの廃電池から資源を採取し再利用するアメリカのベンチャー企業「レッドウッド・マテリアルズ」、GM子会社による無人タクシーの一般乗車試験開始、岐路に立つ、東南アジア・タイにおける日本車の立場…などの話題をお届けします!

※本稿は2022年2月のものです
文/角田伸幸、写真/AdobeStock、ベストカー編集部 ほか(トップ画像=salita2010@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年3月26日号『近未来新聞』より

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■廃電池から資源を採取! 新興勢力の「錬金術」

トヨタbZ4Xのバッテリー。長寿命であるほか、極材や電解質、ケースなどの再利用にも配慮が

 EVが普及すれば当然電池が必要になるわけだが、その電池を「どう作ってどう処理するか」という問題が各社の頭を悩ませている。

 原料となるリチウムやコバルトの安定調達には不安があるし、使い終わった電池も厳格な処分が求められるためだ。

 そんななか注目を集めているのが、使い終わった電池から原料を取り出す技術。

 すでにトヨタなどは、プリウスの電池の一部から水酸化ニッケルやコバルトを取り出しているが、最近その作業を大規模に引き受ける新興勢力が現われているのだ。

 その代表格がアメリカのレッドウッド・マテリアルズ。

 テスラのバッテリー技術を確立した重要人物、J・B・ストローベル氏が立ち上げたベンチャー企業だ。

 まだ上場も果たしていない同社だが、すでにテスラの電池を手掛けるパナソニックや日産リーフのバッテリーを作るエンビジョンAESC、さらにはアマゾンといった企業から廃電池を受け入れ、希少な鉱物資源をリサイクルしている。

 昨年秋にはフォードとも手を組み、将来のフォード製EVにリサイクル電池を納品する仕組みづくりも始めたようだ。

 同社の強みはコスト競争力にある。レッドウッドは受け入れた廃電池に残る電力を吸い上げて、加工プロセスに用いる技術を持っており、これがコスト低減に貢献しているのだ。

 同社は数年以内に自然採掘よりも安いコストで廃電池からの資源採取を可能にすると話しているから、ライバルにとっては手ごわい存在になるだろう。

 日本には2億7000万台の使われない携帯電話があり、その資源価値は3兆円にもなるという。EVに使われる電池容量はスマホの数万倍だから、その資源価値は途方もない。

 近い将来、電池は「都市鉱山」から作られるのが当たり前になるかもしれない。

■GMの自動運転子会社が無人タクシーの一般乗車試験を開始

 2月1日、ホンダも提携するGMの自動運転子会社「クルーズ」が、米サンフランシスコで無人タクシーの一般乗車試験を開始した。

 サンフランシスコでは昨年夏、ウェイモが一足先に無人タクシーの実験を始めたが、あちらは運転席に人が座る「半無人」状態なうえ、乗車経験を他言できないといった制限があった。

 いっぽうクルーズは、運転席にドライバーがいない完全無人運転であり、乗車したことをSNSなどに公開してもよい。

 すでに同社のYouTubeには、乗車した人たちの様子がアップされており、リアシートから無人の運転席を興奮気味に撮影するなど、体験者の驚く様子をうかがい知ることができる。

 クルーズは公式サイトから乗車の申し込みを受け付けていて、今のところ料金は無料。日中の混雑はまだ処理が難しいのか、運行時間が午後11時から午前5時という深夜に限られるうえ、サービスエリアもリッチモンドやチャイナタウンなど一部地域に限定されるという不便もある。

 とはいえクルーズは乗客に料金を請求できる営業許可も申請中といわれ、ひょっとしたらウェイモより先に、サンフランシスコでの営業運転をスタートさせるかもしれない。

 無人サービス開始と同時にクルーズは、ソフトバンクから新たな1500億円の資金も得た。今後のさらなる技術開発が加速しそうだ。

■「日本車王国」が危ない! 大きな転換期に入った東南アジアのEV生産

 日本車王国として知られてきた東南アジアの国々が、「EVシフト」を機に変わろうとしている。

 インドネシアでは、豊富なニッケルから車載電池を作ろうと中韓勢が乗り出しているし、ベトナムは国産ブランドのビンファストがすでにEVを開発し、アメリカでの発表まで行った。

 しかし特に注目なのがタイだ。

 2月3日、メルセデス・ベンツが今年中に最上級EV「EQS」の生産をタイで始めると発表して話題となった。同社はすでにタイ工場でガソリン車やPHEVの生産は行っているが、それをEVへと転換していく戦略らしい。

 台湾・鴻海の動きもあなどれない。同社は昨年、タイ石油公社とEV生産で提携したのだが、ベンツの発表と同じ2月3日、2社合弁によるEV生産企業「ホライゾン・プラス」を設立した。

 プラットフォームとして使われるのは、当欄でもたびたび取り上げている鴻海の「MIH」。そこにタイに数多く存在する部品メーカーが、足回りや内外装を提供するという構想だ。

 タイではほかにも、中国の長城汽車や上海汽車が2023年からのEV生産に向けて動いている。

 いっぽう受けて立つ日本勢は、三菱がEV生産を発表しているもののイマイチ勢いがない。

 日本車ファンの多い地域だけに、なんらかの対策が急務だろう。

■そのほかの近未来系ニュースを20秒でチェック

●高速道路の脇に大きな物流施設を見かけることが多くなったが、三菱地所が高速道路に直結する次世代の物流施設の建設を発表した。

 建設場所は2024年に開通する新名神高速の宇治田原インターチェンジ脇。敷地面積11万9000平方メートルという壮大な物流拠点だが、目玉は将来のトラックの無人運転をにらんで、高速道路に直結した出入口を設けていること。

 トラックの無人運転は高速に乗る前後が面倒なだけに、ヤードに直接乗り入れできる施設は画期的だ。早く完成施設を見てみたい。

●三菱ふそうが、作ったトラックを列車で運ぶという取り組みを始める。これまでトラックは専用の積載車か自走で運んでいたが、全工程での脱炭素化を進めるうえで、輸送も問題になったらしい。パワートレーン開発だけでも難しいのに運び方まで問われるとは、商用車の道は険しい。

●自動車会社が通信会社から訴えられるケースが増えていると過去にも紹介したが、今度は通信48社の特許団体がトヨタ、ホンダ、日産に特許料の支払いを求めていることがわかった。通信会社にはノキアやクアルコムのほか、NTTやパナソニック、シャープといった日本企業も含まれているからややこしい。

 争点は車載機器が使う4G無線通信にあるようだが、通信側は1台あたり15ドルの特許使用料を求めており、トヨタなどは年間のコストが180億円にもなるという。もはや通信なしで自動車は作れないから、一度両方で腹を割った話し合いが必要かも。

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