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トヨタ衝撃のEV説明会から4カ月超 トヨタ以外の国産メーカーは何をしているのか?(マツダ ・スバル・三菱・スズキ・ダイハツ編)

 最近、自動車業界のニュースはトヨタの話題が目立つ。一般メディアでは8割以上、ベストカーのような自動車専門メディアでも話題の半分以上がトヨタ1社で占められている感覚だ。国産乗用車メーカーはほかに7社もあるのに、だ。

 トヨタの動きがダイナミックなのは確かだが、他社も鳴りを潜めているわけではなく、将来を見据えたさまざまな戦略を打ち立てている。本企画では2022年下半期以降の「トヨタ以外のメーカー」の主要ニュースを見ていく。

 後編となる今回はマツダ・スバル・三菱・スズキ・ダイハツの「今」をお伝えする。

※本稿は2022年2月のものです
文/国沢光宏、桃田健史、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY ほか
初出:『ベストカー』2022年3月26日号

【画像ギャラリー】マツダ ・スバル・三菱・スズキ・ダイハツ 2021年下半期以降の新型車と主要ラインナップをギャラリーでチェック!!(25枚)画像ギャラリー


■国産メーカーではEV色の薄いニュースが中心となったマツダ

 トヨタ、日産、ホンダとEVのニュースが多いなか、マツダは「わが道を行く」感が強い2021年下半期となった。内燃機関好きには嬉しいが、少し心配だ。桃田健史氏がマツダを斬る!!

北米専用となるCX-50。マツダらしさを残しながらもワイルドな仕上がりになっており、デザインの評判は上々だ

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■2022年以降のクロスオーバーSUV商品群の拡充計画を発表(2021/10/7)

 CX-50からCX-90まで、10刻みのナンバリングで合計5台のSUVの導入を発表したマツダ。FR、直6エンジンなどなど、クルマ好きの心をくすぐるワードが頻出した発表だったが、桃田健史氏はどう評価するのか

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「90点」

 FRプラットフォームを基本としたラージ商品群という、実にマツダらしい発想である。

 マツダ第七世代は、マツダ3を皮切りにしたスモール商品群が次々と登場するなか、「マツダは直列エンジン搭載のFRを開発中」という噂があった。

 今回、ラージ商品群でのCX-60、CX-70、CX-80、CX-90と、スモール商品群のアメリカ向けCX-50の導入全体像が判明し、ユーザーもほっとひと息といったところだろう。

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■次世代バイオディーゼル燃料でスーパー耐久に参戦。2022年のフル参戦を目指す(2021/11/13)

 マツダが次世代バイオディーゼル燃料でスーパー耐久に参戦する。使用するのはユーグレナの100%バイオ由来の軽油「サステオ」だ。

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「60点」

 スーパー耐久開催中の岡山国際サーキットで、トヨタ、マツダ、スバル、ヤマハの社長が勢揃いした。会見の趣旨は、日本でのカーボンニュートラルは、欧州のような急激なEVシフトを目指すのではなく、各メーカーの得意分野を活用したさまざまなチャンレンジを行うというもの。

 マツダは、日本でのディーゼル需要を下支えするSKYACTIV-Dと、以前にRX-8等で研究開発した水素エンジン技術を融合させる。

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■ビジネスを加速させるための重要な組織改革を断行したマツダ(2021/10/1)

 2022年以降、新型SUV商品群を大量投入するマツダ。その準備段階として、各市場がビジネス目標を達成するための支援体制を強化するための組織改革を行った。桃田健史氏はこれをどう見る?

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「50点」

 目的は、グローバルでのマツダブランドに対する『現状把握』と、『達成目標』の明確化にある。あくまでもマツダ社内組織変革の一部であり、ユーザーにとって大きな関心事ではない。

 とはいえ、マツダは商品ラインナップの第六世代が大成功の後、第七世代に入ってから、スモール商品群とラージ商品群という大規模な技術進化を実行中であり、それに伴うマーケティング戦略の深掘りが必須となっている。

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■マツダ2ハイブリッドを2022年春から欧州で販売。正体はヤリスのOEM(2021/12/6)

 マツダは、トヨタからヤリスハイブリッドをOEM提供してもらい、マツダ2ハイブリッドとして欧州で販売する。バッジ以外はヤリスまんまだ。

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「40点」

 欧州燃費規制CAFEのクリアには、マツダはBセグメントでの早期電動化が必須だ。

 しかも、欧州では急速なEVシフトが進み、この時期にトヨタから部品提供された形でのマツダオリジナルのハイブリッド開発は企業目線でコスパが悪い。

 そのため、日本市場では軽自動車でスズキとOEM供給で連携しているように、トヨタからヤリスハイブリッドのOEM供給を受けることは、致し方ないことだと思う。

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桃田氏のマツダ 今後の期待値…80ポイント(100ポイント中)

 広島地元愛が強い、クルマへのこだわり集団として、さあ次の一手をどうする。マツダらしさを貫いてほしい。

■自動車以外の事業も行うスバルはこんなこともしていた!

 自動車のほか航空宇宙事業なども手掛けるスバルは、昨年7月以降では次のようなニュースを公表していた。

新型電気自動車のソルテラはトヨタとの共同開発車。スバルのEV技術は他社より遅れ気味?

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■スバルなど5社がドローンの相対速度200km/hでの自律的衝突回避に世界初成功(2021/11/8)

 昨年11月8日、スバル、日本無線、日本アビオニクス、ACSL、マゼランシステムズジャパンの5社は、小型無人航空機と有人ヘリコプターを相対速度200km/hで接近させた試験において、小型無人航空機の自律的な衝突回避に世界で初めて成功したことを発表した。

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「100点」

 旅客機の衝突防止装置はすでに採用されているが、小型機やヘリコプター、大型のドローンなどの航空機は有視界飛行や外部からの誘導などで衝突事故を防ぐしかない。

 小型機に衝突防止装置を導入しようとしてもコスト的に高くなってしまい、なかなか実現は難しいというのが現状。今回スバルが発表した技術は、10kgという無人小型機に搭載できるという画期的なもの。

 将来的に農薬散布のドローンなどへの実装も期待される。けっこう重要なニュースです。

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■スバル車オーナー向けドライブアプリ「SUBAROAD」をリリース(2021/12/7)

 スバルは昨年12月7日、スバル車オーナーのために、走りがいのある道と新しい発見を提供するドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」をリリースした。

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「80点」

 狙いはミシュランのレストラン評価とまったく同じ。ミシュランのガイド、クルマで美味しいものを食べに行くことでタイヤを減らしてもらおうということから生まれた。スバルもクルマで移動する楽しさを提案し、クルマに乗ってほしいということです。

 新型コロナで気晴らしできる外出が減りがちなこともあり、楽しい話題だと思う。このアプリで「行ってみたい!」という場所が見つかれば、ユーザーにとっても幸せだ。

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■組織改正で「電動車両生産推進室」を新設(2021/10/1)

 スバルは、昨年10月1日付けで組織改正を行い、自動車部門の製造本部に「電動車両生産推進室」を新設したことを発表した。

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「70点」

 スバルは電動化技術の普及で大きな遅れを取ってしまったという認識を持っている。これは、そいつを早急に進めようというプロジェクトです。スバル、10年間くらいパワーユニットがまったく進化しなかった。当時の技術系役員の大きなミスです。

 結果的にハイブリッドもEVもトヨタにおんぶ&だっこ状態。ソルテラとbZ4Xはスバル主導で開発されたクルマですけど。とにかく電動化車両を生産しましょう、という意気込みです。

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国沢氏のスバル 今後の期待値 70ポイント(100ポイント中)

 市販車をベースにした 車両で競技をやってほ しい。純レーシングカ ーってスバルの持ち味と違います

■アウトランダーの発売以外で注目される三菱のニュースは?

 昨年12月に発売した新型アウトランダーの好調な売れゆきが最近の明るい話題となっている三菱は、2022年下半期の取り組みとして次の2つのニュースに注目したい。

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■「ラリーアート」復活第一弾となる特別仕様車をタイで発表(2021/11/30)

 昨年11月30日、三菱の「ラリーアート」ブランド復活の第1弾として、タイにおいてピックアップトラック「トライトン」とミッドサイズSUV「パジェロスポーツ」に特別仕様車の「ラリーアート」仕様を設定し、12月1日に発売したことを発表した。

昨年12月にタイで発売されたパジェロスポーツのラリーアート特別仕様

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「80点」

 パリ・ダカでのパジェロや、WRCでのランエボを筆頭とした三菱黄金期があった。

 時は流れて、ルノー日産三菱アライアンス時代となり、三菱としての集約すべき技術や仕向け地が明確になった。

 そのうえで、ラリーアートを復活させることになった。

 まずは、三菱ブランドに対するロイヤリティ(忠誠心)が高い東南アジアから展開し、日本ではアウトランダーPHEV導入を皮切りに電動化戦略との融合を目指す。

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■「楽天市場」で三菱自動車の新車販売を開始(2021/11/25)

 三菱と楽天グループは自動車販売におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、三菱がインターネット・ショッピングモール「楽天市場」に出店し、新車の販売を開始したと2021年11月25日に発表した。取り扱う車種は、アウトランダーやエクリプスクロス、軽自動車のeKシリーズなど計6車種で、月額定額サービス「ウルトラマイカープラン」によって販売。

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「70点」

 楽天市場との連携は新鮮であり、自動車業界内でインパクトは強い。

 三菱はアメリカで、バーチャルショールームを開設し、アメリカの経済メディアなどで大きな話題となった。

 デジタルトランスフォーメーションは自動車産業でも必須だが、メーカーとディーラーとの基本契約を今後、どのように変えていくかが大きな課題だ。三菱の事案も最終的な契約は、ユーザー自宅最寄りのディーラーで行う。

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桃田氏の三菱 今後の期待値 90ポイント(100ポイント中)

 アライアンスの奏功、PHEVを中核にラインナップが充実し舞台は整いつつある。大胆な中長期ビジョンに期待

■カリスマ経営者去りしあとに行われたスズキの取り組みとは?

 昨年6月に鈴木修会長が勇退し、名実ともに鈴木俊宏社長が経営トップに立つ新たなスズキは、次のような取り組みを行っている。

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■組織の改定により「Eモビリティ開発部」を新設(2021/10/29)

 2021年11月1日付で組織の改定や部長級の異動について発表。組織の改定では、EV事業本部に「Eモビリティ開発部」を新設した。

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「80点」

 スズキは皆さんがイメージしているより本気でEV作りを推進しようとしている。投資額は1兆円規模! 電池もスズキを販売する地域で調達すべく動き始めている。

 国内でのダイハツとのアライアンスも順調のもよう。どうやらハイブリッドはダイハツ、EVはスズキ主導で担当するようだ。EV事業本部の拡大は当然の流れ。今年の終わりくらいには次なる電動化戦略の発表があると私は予想しています。

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■スズキの残クレ「かえるプラン」に3年据置払いの新プランを設定(2021/12/7)

 スズキ子会社のスズキファイナンスが、残価設定クレジット「かえるプラン」に、月ごとの分割支払いを不要にした「かえるプラン3年据置払い」を設定し、昨年12月7日に販売開始。新プランは、車両本体価格の一部をあらかじめ残価として設定し、残りの金額を「頭金」として現金で支払う方式で、クレジット部分は初回に「手数料相当額」、3年後の2回目に「残価相当額」を支払う仕組み。

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「70点」

 残価設定クレジットは今後さらに需要が大きくなると思う。問題となるのが3年〜5年後の人気度。高く査定できる車種なら残価を高く設定できるため、毎月の支払額も安くなる。

 一方、不人気車だと(スズキの場合、高額車はほぼ不人気)残価が安くなってしまう傾向。ハスラーやジムニーなどの人気車だと残価を大きくできるため、驚くほど安い毎月の支払金設定ができるようになるだろう。今後の運営次第で面白いと思う。

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■中古サブスクの「スズキ定額マイカー」を開始(2022/1/26)

 税金や自動車保険料を含めて月額2万9000円(先代型アルトの場合。車種などによって異なる)からスズキの中古車を月定額で利用できるサブスクリプションサービス「スズキ定額マイカー」を今年1月26日に開始した。

「スズキ定額マイカー」はアルトやワゴンR、スイフトなど初度登録後3年以内の車両が対象

●国沢氏の見解と評価…このニュースの重要度は「70点」

 中古車のサブスク、ホンダが始めたところ予想をはるかに超える人気&需要があった。ホンダに続け、ということなんだと思う。

 実際、短期での滞在や、骨折などの怪我でクルマが必要になったような時は、レンタカーより少し長い期間使おうとすると中古車サブスクは便利。販売店にとっても店頭在庫より毎月利益を確保できたほうがメリット大きいんじゃなかろうか。

 割安感のある料金設定ができたら、けっこう普及するかもしれません。

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国沢氏のスズキ 今後の期待値:70ポイント(100ポイント中)

 初代アルトのように安価で買いやすい電気軽自動車を開発してほしい。何なら電気ジムニーもお願いしておく。

■目立たないがクルマを活用し、こんな取り組みもしていたダイハツ!

 昨年12月に発売した新型ハイゼット/アトレーが好評で話題のダイハツは、社会貢献にも力をいれている。

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■福祉介護MaaS「ゴイッショ」を2022年春に提供開始することを発表(2021/10/21)

 通所介護(デイサービス)施設の送迎業務の共同化をベースに、そのほかのサービスを付加して地域の高齢者の移動や暮らしを支援する「福祉介護・共同送迎サービス『ゴイッショ』」を2022年春に提供開始することを昨年10月21日に発表した。

2022年春に福祉介護・共同送迎サービス『ゴイッショ』を提供開始するダイハツ

●桃田氏の見解と評価…このニュースの重要度は「80点」

 社会貢献という分野として自動車業界内では地味な存在だが、日本のこれからを考えるうえで極めて重要な事案だ。

 軽自動車や小型車を事業の主体とするダイハツにとって、地域社会との密接なつながりは必然だ。

 2018年から導入の「らくぴた送迎」は、スマホや運行管理システムを連携させたシステム。新導入の「ゴイッショ」は介護以外にも行政機関、病院、スーパーなど生活必需な内容を盛り込んだ形だ。

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桃田氏のダイハツ 今後の期待値:70ポイント(100ポイント中)

 さまざまな領域でトヨタグループ内の立ち位置が明確になってきた。限られたリソースでの着実な成長に期待。


【番外コラム】スズキの「Dプロジェクト」ってなんだ?

 スズキが2021年12月21日に発表した組織の改定などのリリースに「Dプロジェクトを新設」という記述がある。

 この「Dプロジェクト」とは何なのか? スズキ広報に確認したところ、「グローバルな開発体制を見直すプロジェクト」とのこと。

“D”に特別な意味はないようだ…たぶん。

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