クルマで遠出をして、旅先で事故や故障…そんな経験をした方も少なくないだろう。行楽地に向かう高速道路の渋滞でバッテリーが上がったり、空気圧不足でタイヤがバーストしたりガス欠したりのトラブルも急増中だ。
旅先でのクルマ不動トラブルに遭遇した時、皆さんはどうされているだろうか。筆者はJAF会員歴30年と長い間JAFのお世話になっており、やはり最初に頭に浮かぶのはJAFを呼ぶことだ。
しかし、自宅から遠く離れた場所でクルマが不動となってしまった場合、JAF会員で無料ロードサービスが付帯された自動車保険を契約している人ならどちらを最初に呼ぶかは、双方のプランを比較して、よく考えた方がよさそう。ロードサービス(レッカーや積載車)をお願いする際に、どちらを選ぶかで、その後の運命(ちょっと大げさ)が大きく変わってしまうからだ。金額でいえば(人数にもよるが)10万円以上の差が出てくる場合もある。
横浜の自宅から500km以上離れた場所でクルマが不動となってしまった筆者の体験をもとに解説してみたい。
文/加藤久美子
写真/加藤ヒロト、AdobeStock(アイキャッチ写真@metamorworks)
■石川県の日本自動車博物館駐車場でバッテリーの不調に
昨年秋のことになるが、筆者は石川県小松市にある日本自動車博物館へ取材で訪れた。素晴らしいコレクションの取材を終えて帰ろうとしたところ…クルマのエンジンが掛からない。
ん? バッテリー上がり? バッテリー自体は交換してまだ数か月。ライトをつけっぱなしにしていたわけでもない。ひとまずJAFに電話をしたところ、到着まで1時間近くかかるとのこと。
そこで、博物館の方にお願いしてエンジンを掛けてもらうことになった。巨大なバッテリーが台車に乗って運ばれてきて(おそらく来館者のバッテリー上がりに対処することもあり、慣れているのだろう)エンジン自体はすぐにかかった。
ホッと一安心。博物館を後に食事をして帰ろうと走り始めたのだが、1キロほど走って再びバッテリーが怪しくなってきた。エンジンが止まりそう! あわてて近くにあった食堂の駐車場に停めたところでエンジンは完全に停止した(結論から言うと、数か月前に交換したオプティマバッテリーの故障(充電しない)だったわけだが、その時は原因が分からなかった)。
再びJAFを呼ぼうとしたのだが、ここは横浜の自宅から遠く離れた石川県である。
動かないクルマはどうするのか。JAFに工場まで運んでもらったとしても、修理に時間がかかればクルマを置いて帰る必要も出てきそうだ。
そこでふと思い出したのが、自動車保険付帯の無料ロードサービスである。自動車保険のロードサービスを利用すれば、自宅までの帰宅費用や宿泊費用などが人数分無料となるはず。不動のクルマを現地の工場などに入れて帰宅した場合も、修理が完了したクルマを自宅まで運ぶ費用も確か無料だったはず。
契約している保険会社のサポートに電話をしてみたところ、「最初に弊社を経由してレッカーを手配していただくことが条件になります」とのこと。
つまり、JAFを呼んで現地の修理工場までレッカー車で移動し工場に入庫してしまうと、諸々の無料サービスは適用されない。最初から保険会社にレッカーや積載車の手配をすることで、帰宅費用やホテル宿泊代、修理後の自宅までの搬送(距離無制限)などが無料で提供されることになる。
■保険会社のロードサービスは凄かった!
小松市内の整備工場にクルマを運んでもらって(これももちろん無料)、私たちはそこからどうやって横浜まで帰るべきか。その時点で20時近くになっており、小松からの飛行機も新幹線も終わっていた。選択肢は二つ。
(1)現地で宿泊して翌朝新幹線で帰る。(一人1泊15000円までのホテル代+新幹線などの費用が無料)
(2)レンタカーを運転して帰る。(レンタカーカウンターのある小松空港までのタクシー代+24時間分のレンタカー代金+乗り捨て費用が無料。免責補償、ガソリン代や高速代などは利用者負担)
筆者としては(1)がよかったのだが(目の前に粟津温泉のホテルもあり)、同行している息子が翌朝に都内で用事があることや荷物がとても多かったこともあり、仕方なく(2)を選択した。
そこからタクシーで小松空港まで移動し、空港のニッポンレンタカーでカローラアクシオを借り、一路、横浜へ。ちなみに、レンタカー代に加えて「乗り捨て料金」も補償されるのだが、その値段にびっくり。
石川県の小松空港で借りたレンタカーを長津田駅前(横浜市緑区)で乗り捨てにした場合の乗り捨て料金はなんと38,720円!
借りたレンタカーは品川ナンバーだったから石川県まで戻すわけではないだろうが、乗り捨て料金は借りた営業所~返却した営業所間の距離で決まるとのことだった。
あと意外な盲点は、免責補償代が利用者負担となること。筆者は普段、レンタカーの免責補償には入らないが、この時は保険で出るから~と思って豪勢に一番高いサービス充実の免責補償をつけたのだが、そこは自腹とのことであった。
小松空港からレンタカーのカローラに乗って、約500kmを途中のSA/PAで仮眠をとりながら運転して帰って来た。長津田駅前店でレンタカーを返却。帰りの電車代も1名分は無料とのことであった。
■修理完了後のクルマが横浜の自宅に戻るまで
帰宅後、クルマを預けた小松市内の整備工場から連絡があり、不動の原因はバッテリー自体の故障ということが分かった。息子が「どうしてもこれがいい!」と憧れていた黄色いバッテリーだったが、わずか数か月でトラブルに見舞われてしまった。なお、オプティマバッテリーは購入から3年間または80,000㎞までの保証がある。販売元に連絡したところ、故障したバッテリーと交換で小松市の整備工場に新品のバッテリーを送るとのこと。
ということで、修理は意外と簡単に終わったのだが、今度はそこからクルマをどうやって自宅まで運ぶのか…の選択をすることになる。
(1)積載車で自宅まで運んでもらう。無料だが、いろいろなところを回りながら運ぶため依頼してから最大2週間程度かかる。
(2)小松市まで新幹線などの公共交通機関で引き取りに行く。この場合新幹線代は1名分のみ。
悩んだ末、結局(1)を選んで、2週間待つことにした。(2)を選べばクルマを早く戻すことができるが、帰りの高速代やガソリン代は自己負担だ。クルマはキャリアカーに載せられ小松市を出て、きっちり2週間後に戻って来た。
というわけで、JAFか保険会社か? クルマが故障などで不動となった場合、遠方の時は帰宅費用や宿泊費用がほぼ全額補償される保険会社のロードサービスを使うのが良いという結論に至るわけだが、その際、最初から保険会社の積載車を呼ぶことが条件なので留意されたい。
なお、JAFと連携している保険会社もあるので、契約している保険会社にロードサービスの内容やアフターフォローの条件などを事前に確認することをお勧めする。ホテル代や修理完了後の搬送費用なども保険会社によって当然異なるので、利用する際にはしっかり確認して欲しい。
また、特に連携していない保険会社であっても、JAFと保険会社を併用することも可能だ。JAFは会員であればレッカーは15kmまでが無料となる。保険会社が50kmまで無料であれば、まず、保険会社で50kmまで運んでもらって残り15kmをJAFに運んでもらうという方法も可能。
以前、埼玉県草加市でクルマが不動となった際、そこから家まで保険会社50km+JAF15kmで合計65kmを無料で運んでもらったことがある。どのあたりまでなら無料で運んでもらえるのか? 保険会社やJAFに遠慮なく聞いてみることをお勧めしたい。
■JAFにしかできないロードサービスもある!
ここまで読んでいただくと、「保険会社のロードサービスがこんなに充実して色々無料になるなら、もうJAFは不要なんじゃないの。年会費4000円だし」と思われる方もいるかもしれない。
ロードサービスを使っても翌年の保険料が割増になることもないし、遠方でのトラブルなら保険会社一択だろう。しかし実際のところ、JAF会員は増え続けている。昨年10月にはなんと2000万人を超えた。
その理由はJAFにしかできないロードサービスがあるからだ。もっとも大きな違いは自然災害によるトラブルへの対応だ。近年増えている大雨による車両冠水にも対応しており、洪水でクルマが水に浸かった場合の引き上げや雪によるスタック、ぬかるみからの脱出などにも所定の時間内なら無料で作業をしてくれる。
洪水や大雪でクルマが立ち往生するなどのトラブルが多数発生したあとに、JAF会員が急増するというのも納得だ(保険会社のロードサービスでは雪によるスタックはサマータイヤNGなど条件があるか有料対応となる場合がほとんど)。
また、保険会社ではほぼ対象外となるパンクの応急修理もJAFはOK。さらに異臭や異音など不調の原因が明確ではない、故障というわけでもない状態でも会員なら無料でチェックしてくれる(30分以内の作業)。
トラブルの時だけではない。30分程度の軽作業(通販で買ったバッテリーを交換、テールライトの電球を交換など)も会員なら無料だ。昨今は通販でバッテリーを安く買って交換する人が増えている。作業自体はそんなに難しいものではないが重たいバッテリーを抱えるのは腰を痛める場合もある。JAFにやってもらえば安心だ。
そしてこのような作業が「予約」ができるのもJAFならでは。保険会社は事故や故障など突発的に起こったトラブルのみ対応するので当然、予約というシステムはない。ただし、車検切れのクルマやナンバーのないクルマは規約上運べないので注意。
ロードサービスではないがJAFの会員優待サービスも侮れない。SA/PAのコーヒーやソフトクリームが無料になったり、ホテルの宿泊費から1人500円割引されたり(同じグループなら会員以外にも適用)、グラスビールやソフトドリンクが無料になったりもする。
海外でも優待が充実しており、とくにアメリカでレンタカーを使う場合はAAA(アメリカ版JAF)の会員と同様のサービスなどが受けられる。筆者が経験した中では1時間20ドル(!)もする観光地の駐車場が無料になったり、免税店での買い物が一律20%オフになったりしたこともあった。
保険会社とJAF、それぞれの特長を知って、賢くオトクに使い分けることをお勧めしたい。
【画像ギャラリー】レッカー代だけでは比較できないが…さまざまなサービスがあるので要注意!! 故障時の連絡先(13枚)画像ギャラリー投稿 おおぉ…旅先でクルマが故障…JAFか保険会社か、最初にどちらを呼ぶかでその後の運命が大きく変わる!!?? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。